波乱含みの晩餐 1
自分で蒔いた種の刈り取りに子供たちを必死で諌める王様から時折り送られる「助けろ!!」の視線を受け止めながら思う。王様は私に気を許してくれたのか、随分と感情を表してくれるようになった。王様だけでない。ディーバさんもソルゴスさんもだ。それは私という存在を受け入れてくれたからだと考えると、心が温かくなって顔がにやける。
「ねぇ、アルゴス君、マルケス君、ごめんね。私も悪かったの。次は二人に食べて良いって聞くからおしまいにしない?」
「「え〜!?」」
二人のブーイングが即座にあがる。きっと不満いっぱいなアルゴス君とマルケス君は頬っぺたを膨らませているに違いない。想像すると居ても立ってもいられなくなり、二人に天岩戸から出て来てもらうことにした。
「元気な二人の可愛いお顔が見たいな〜。アルゴスく〜ん、マルケスく〜ん」
「は〜い!!」
元気なお返事をしてぴょこんと机の脇から笑顔を見せてくれたのはマルケス君。
「アルゴス君はお顔見せてくれないのかな?」
「俺はそんなんじゃダマされないぞっ!!」
あら、手強い。
マルケス君に向けて、口元に人差し指を立てて内緒だよとジェスチャーして、そっと机に近付く。
「騙してないよ?アルゴス君のお顔も見たかったの」
「わぁ!?」
王様の膝に顔を預けて背中を見せていたアルゴス君を抱き上げた。大きな声をあげたアルゴス君は私を振り返る。
真ん丸お目々がおっこちそうだよ〜。
しゃがみ込んでアルゴス君を床に下ろし、マルケス君も腕に抱き寄せる。
「良い子たち、つっかま〜えた〜」
「だ、ダマされないんだからなっ!!」
「ママ〜」
全身で嬉しい!!と体言してるのに憎まれ口を聞くアルゴス君と、素直に嬉しい!!と言ってくれるマルケス君は本当に可愛い。その可愛い子ちゃん達は私の体に頭をぐりぐりこすりつけてくる。
やっぱり、これってマーキング?
ぐりぐりが落ち着いた頃を見計らって、アルゴス君とマルケス君と額を合わせて聞く。
「クッキーをあげたくないな〜って思うくらいに怒ってる?」
「「怒ってない」」
二人は声を合わせて応えてくれる。
「じゃぁ、もう良いんじゃない?」
笑いながら聞くと、アルゴス君とマルケス君は顔を見合わせると小さく頷く。
も〜う。可愛い〜!!以心伝心なアルゴス君とマルケス君、か〜わ〜い〜い〜!!
「もう!!じゃ、ごめんなさいしたら許す!!」
「ママにごめんなさいして?」
仕方ないな〜とぷっと頬っぺたを膨らませて言うアルゴス君と上目遣いで王様に言うマルケス君。
「すまなかった。ミーナ」
「こちらこそすみませんでした」
王様と私のやり取りを見たアルゴス君とマルケス君は満面の笑みを浮かべると、私達をビシッと指差した。
「「良い子たち、見〜つけたっ!!」」
そっか。そのフレーズがマイブームなんだね。
王様は突き付けられた二人の指先を呆然と見つめている。初めてやられたら特に男の人は驚くだろう。私はエリゴスさんにやっていた二人を見ていたし、失礼ながら、王様は彼に比べると細身で優男だ。笑いの発作はおこらない。
「アルゴス君、マルケス君、人を指差ししてはいけません!!」
締める所は締めないとと気になった点を注意した。
「「は〜い」」
元気に応えてくれる子供たちをがばりと抱きしめる。
「良い子たち、み〜つけたっ!!」
「「やった〜!!」」
やっぱり可愛いぞ〜!!