絡まる思惑 3
「「ママッ!!ここだよ!!」」
考えにふけっていると、アルゴス君とマルケス君が、扉をドカドカ叩きながら教えてくれた。
あぁ〜、もうそれ、ノックじゃないよ。
「ノックは四回、それ以上は叩いちゃダメだよ?ドンドン叩いたら、中の人はびっくりしちゃうんじゃないかな?」
示唆すると、フンッと鼻息荒くアルゴス君が言い切った。
「大丈夫っ!!ディーバだから!!」
見るとマルケス君も頷いている。
大丈夫じゃない。
いつも、そんな呼び方をしているのかと脱力感を覚えながら、二人の前にしゃがんで視線を合わせる。
「誰だから良いって事は無いの。人によって態度を変えちゃいけません。誰にでも同じようにしないと大人になった時に困るのはアルゴス君とマルケス君なんだよ?」
「「どうして?」」
「ん。私が、王様やジルさんの前ではすごくニコニコしてその人達にはやさしいのに、アルゴス君やマルケス君の前ではブスッとして嫌な事ばっかり言ってたらどう?」
「ママはそんな事してしないぞ!!」
「そうだよ!!なんでそんな事言うの!?」
怒ったように叫んで即座に否定してくれたことは嬉しいが、私が伝えたいことを理解してもらわなければ、困るのはアルゴス君とマルケス君自身だ。
「ありがとう。二人がそう信じてくれる私に育ててくれたのは、私のお父さんとお母さんなの」
「ママのママ?」
「ママも子供だったの?」
不思議そうに聞いてくる子供たちの頭を軽く撫でて頷く。子供は親が生まれた時から大人だったと思っている節があると、前に言ったのは誰だったか。その言葉通り、アルゴス君もマルケス君も私が生まれた時から私だったと思っているようだ。
「そう。私も子供だったんだよ? 二人が私に対して思ってくれたような大人にアルゴス君とマルケス君にもなってほしいなと思ったの」
私の言葉に真剣に耳を傾けていたアルゴス君とマルケス君が口を開く。
「ご挨拶とか出来るとママみたいになれるのか?」
「僕たちもママみたいに優しくなれるかな?」
マルケス君に、「時々、おっかね〜けどな」と言ったアルゴス君が「イヒヒヒ」と笑う。マルケス君も頷きながら、つられたように笑っている。そんな二人を見ながら、扉をドンドンと叩いたにもかかわらずリアクションが無いのは、室内に誰も居ないからなのではと考える。
「ねぇ、お返事無いよ?ディーバさんは居ないんじゃないかな?」
私の言葉に首を傾げた子供たちは顔を見合わせた。
「じゃ、次に行こう!!」
「そうだね。陛下の所だとみんな居るんじゃないかな?」
「よし!!じゃ、しゅっぱ〜つ!!」
「「お〜っ!!」」
素早く行き先を決めた二人は勇ましく手を振り上げ、私と手を繋いで歩き始めた。突然、キュッと二人の手に力が入ったことを疑問に思い、「どうしたの?」と問い掛ける。二人はもじもじと体を揺らした後、上目遣いで問い掛けてきた。
「あの、な?ママみたいったら、俺たち、女になんのか?」
「大人になっても女の子にならない?」
そこっ!?ポイントはそこなの!?
かつて覚えた事の無いような脱力感に包まれながら答える。
「大丈夫。アルゴス君もマルケス君も大きくなっても女の子にはならないよ。男の子のままだよ」
「「良かった〜」」
言葉通りに安堵からか力を抜いた子供たちは笑っている。
子供の思考って・・・・