絡まる思惑 2
「聞いてるよ。ごめんね?二人が寝てる時にディーバさんからお話を貰ったの」
正直に言うと、アルゴス君とマルケス君が二人で顔を見合わせてから私に言う。
「ママ、ディーバに返しちゃえば良いよ!!」
「そうだよ!!いますぐ行こっ!!」
妙案だとばかりに頷く二人は私の手を取り、ぐんぐん歩きだす。「お話を貰った」と言った私の言葉を一部理解出来なかったらしい二人は、貰った話が形ある物と脳内で変換され、貰ったんなら返しちゃえ!そしたら、僕らのママは皆のママじゃなくなるもんねっ!とでも思ったらしい。先頭に立つ二人と手を引かれる私を笑ってみていたルッツォさんが子供たちに言う。
「おーい。アルゴス、マルケス。包んだクッキーは厨房の野郎どもへなのか?」
扉の前まで来ていた子供たちははっとした顔を見せると、アルゴス君が「ママはおしゃべりしちゃだめだからな!!」と言い置いて、マルケス君と二人でクッキーを取りに行く。どうやらアルゴス君は、私がおしゃべりをすると誰かと何かしらの約束をしてしまい、自分たちのママではなく、皆のママになると思っているようだ。
二人はルッツォさんに持ちやすいように袋に入れて貰ったクッキーを満面の笑顔でこちらに持ってきた。
「こっちがママのだって」
「忘れないように、先にディーバの所に行こうね?」
アルゴス君に渡された袋を「ありがとう」と受け取り、マルケス君の言葉に頷いた。
「お忙しい中、お時間を頂きまして、ありがとうございました」
「「ありがとうございました!!」」
慌ただしい暇乞いになってしまったが、気にせず、「おう!!またな〜」と笑いながら返してくれるルッツォさんを筆頭に、料理人の皆さんが笑顔で見送ってくれた。ただ一人、ジルさんが神妙な表情で「気ばかり焦り、暴走しました。申し訳ない」と頭を下げてよこすので、「こちらこそ、すぐに返事出来なくて申し訳ない」と返す。
「じーさん、あんまり申し訳ない申し訳ない、言ってると、ミーナが恐縮して来てくんなくなんじゃね?普通に見送ってやんなよ」
「お?そうか。 ミーナ様、申し訳なかった。これに懲りずに是非お越しください」
「だからさ〜・・・・」
正しく、おじいちゃんと孫といったやり取りをして、呆れたように絶句したルッツォさんに厨房内が笑いで満たされる。
「「またね〜!!」」
私と繋いでいない方の手を振った二人は、料理人さん達に手をふりかえして貰ってご機嫌だ。「ディーバになに貰ったの?後で見せてね?返す時でも良いよ?」と言ってくる二人に、やはり言い回しが難しかったかと反省する。子供たちがわかりやすい言葉を選ばなければ、今回のような誤解は生まれ続ける。
「ディーバがくれたんなら、魔法道具かな?」
「ママは大人だから、鏡かもしれないよ?」
「「お〜!!」」
二人にとって、成人しないと貰えないらしい鏡は、憧れの素敵アイテムなのだろう。興奮して何を貰ったのか想像して盛り上がる二人には、目に見えるなんらかの物を見せないと納得しなさそうだ。どうにかして事情を説明して、ディーバさんから何かを借り受けてと考え、否定する。子供たちは、ディーバさんに貰った何かを返してしまえば約束は無効になると信じているのだ。借り受けた何かを子供たちの前で返してしまえば、外交の手伝いも無かった事になりかねない。
ぅわ〜。どーしよー!!