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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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あまいひととき 6

「楽しかった〜!!な!!マルケス!!」

「うん!!でも、ママのお料理じゃないね〜」

 石窯に入るクッキーを見ながらご機嫌なアルゴス君と、ちょっぴり残念そうなマルケス君の言葉を耳にしてハッとする。

 二人は私の世界の料理というより、ママの作った料理を欲していたはずだ。料理教室も楽しんだようだが、根本から違う。

「皆さん!!申し訳ありませんが、私だけで料理を作って良いでしょうか?」

 声をあげた私に、やりとりを静観していた料理人さん達は笑顔で頷いてくれる。

「当然。ちびたちに旨いの食わせてやってくれ」

「仕事っつーのは見て覚える物だからな。問題無い」

「後で詳しく教えてくれりゃあ、文句は無い!!」

「だから、見て覚えるもんだっつーの!!」

 私が気負わないようにだろう、おどけたように言ってくれた皆さんの好意をありがたく受け入れ、先ずはフライパン二個を弱火にかけて油をいれる。ふんわりしたホットケーキを作りたいのだが、ベーキングパウダーの有無を聞き忘れていた為、卵をふわふわに泡立てなければいけない。

「ママ、カシャカシャするのか?」

「そう。モコモコに泡立てるの」

「これくらいは良いだろ?」

 ルッツォさんは私の腕からボウルと泡立て器を取ると、そのまま一気に卵を泡立ててくれた。あっという間に泡立った卵に、アルゴス君とマルケス君は「すごい!!すごい!!」とルッツォさんを尊敬の眼差しで見つめている。

「ありがとうございます。助かりました」

 受け取ったボウルに振るった粉を入れ、へらに持ち替えて切るように混ぜる。少しの油を入れて、生地は完成だ。

「ママ!!フライパンが燃えてる!!」

「お水入れなきゃ!!」

「大丈夫!!お水は入れないでね〜」

 煙りのたっているフライパンを確認し、生地の出来上がったボウルを置く。

「危ないから絶対にお手手ださないでね」

 言って、乾いたふきんで取っ手を掴み、濡れふきんの上にフライパンを置く。じゅっと音がしたのを確認すると、レードルで生地を流す。流し終えたフライパンを再びコンロにかけて蓋をして、極々弱火に調整する。続いてもう一つのフライパンも同じ手順で生地を焼く。

「なんで二個?」

「二人で一緒に食べて欲しいから」

「順番こじゃなく?」

「そう。二人で一緒にいただきますを言って、一緒に食べて欲しいから一気に出来上がるように、二個フライパンを使ったの」

「「うわぁ〜!!」」

 アルゴス君とマルケス君は目を真ん丸くする。

「一緒だって!!」

「一緒だって〜!!」

 手を取り合って「キャー」と歓声をあげながら、本当に嬉しそうに二人は笑っている。見ているこちらまで嬉しくなる。

 蓋を開け、フンワリと膨らんでいる事を確認し、慎重にひっくり返す。ここで失敗したら泣くに泣けない。

「ミーナ!!焼けたのはこのままで良いのか?」

「いえ!!金網の上に乗せて冷まします!!熱いので、フライ返しなどを使って下さい」

「了かーい!!」

 ルッツォさんにクッキーはお任せして、フライパンの中の生地をそっと手で押してみる。二つとも押してもへこまない。

「ん!!出来た!!」

「「出来た〜?」」

「はい。召し上がれ」

 出来上がったホットケーキにバターとハチミツをかけて、二人の前に差し出す。

「お月様みたいだ!!」

「わぁ〜。真ん丸で可愛い〜ね〜」

 キャーキャーはしゃぎながら、二人揃って「いただきます」を言うと、フォークとナイフで上手に切り分けて口に運ぶ。

「「おいっしい〜っ!!」」

 アルゴス君とマルケス君は咀嚼した後、見ているこちらが幸せになる、美味しいお顔を見せてくれる。

「すごく美味しい!!」

「可愛いのに美味しい〜!!毎日、食べた〜い」

「本当?よかった〜。でもね、毎日食べたら飽きちゃうよ?」

 本当に嬉しそうに言ってくれる子供たちにホットケーキを作ってよかったと心の底から思う。

「アルゴス、俺にも一口、あーん」

「こらっ!!調子に乗りすぎんなって言ってんだろ!?石窯の中身がなくなるまでうろちょろすんな!!一つでもダメにしたら、ただじゃおかねぇぞ!!」

 ゴンとルッツォさんにゲンコツを落とした年かさの料理人さんは、自分たちも叩かれたかのように痛そうに顔をしかめたアルゴス君とマルケス君にニッコリと笑いかける。

「馬鹿に構わず、冷めない内に食べな」

「「うん!!」」

 嬉しそうに頷いてるけど!!他人を、それも年上の人を馬鹿扱いしちゃいけないんだからね!!覚えてね!!

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