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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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あまいひととき 1

「はちみつ」

「「ハチミツ〜!!」」

 そうと決まればとばかりにディーバさんにこちらの世界の大まかな調理方法を聞き、アルゴス君とマルケス君に調味料や香辛料などの名前をおうむ返しにしてもらい、有る物と無い物をメモ帳に書き留めていった。

「ん。ありがとう、アルゴス君、マルケス君」

「ママ!!面白かった!!な、マルケス!!」

「うん。面白かったね〜」

 どうやら、遊びとしてとらえていたらしい子供達二人に、「またやろうね!!」と念押しされてしまった。

 こちらの料理は煮るか焼くか生かしかなく、揚げたり蒸したりする料理は無いそうだ。主食はパンで、焼き物にムニエルなどは存在せず、肉はステーキ、魚は塩焼きのみ。煮るといっても煮込み料理ではなく、コンソメベースのスープが主流でポタージュやシチューは無い。生というのも果物や野菜サラダだけ。

 そしてなんと、パンがあるのにお菓子は存在していないのだ。デザートとして出されるのは綺麗にカットされた果物だけ。

 これには本当に驚いた。

 何故なら、調味料や食材などはほぼ元の世界にある物と一致していたからだ。無い物を強いてあげるなら、味噌と醤油くらいだ。醤油がないのに魚醤があった時は奇声を発したくなった。

 こんなに食材も調味料も充実しているのに、焼くかスープだけってセツナイ。

「よろしくお願いしますっ!!」

 政務に入るという王様とソルゴスさんと別れ、「アルゴス様とマルケス様の教育係ですからお共します」と妙に上機嫌なディーバさんに案内されて厨房に入ると、この場に居る全てと思われる、細マッチョ、ゴリマッチョなどマッチョな体育会系な料理人さん達にずらりと並んでお出迎えしてもらいました。華奢な方が見受けられないのはそれだけハードな職場だと言う事なのか。

 料理人さん達の顔は興奮に上気している。疎まれるよりは良いのだが、皆様の期待に満ち満ちた表情に、私に課せられたハードルが非常に高い事を思い知る。

 ディーバさんは、私の事をなんと言って紹介してくれちゃったのー!?期待に添えなきゃシメられそうなんですけどーっ!!

 ディーバさんには後ほど聞く事にして、第一印象が大切だというのは仕事上、理解しているので、卑屈にならない程度に遜って、ユーモアも交えた自己紹介をする。

「初めまして。私、水無月楓と申します。プロフェッショナルな皆様方を前に、ディーバ様が私の事をなんとおっしゃったのか気にかかって仕方が無い小心者です。お気軽にミーナとお呼び下さい。どうぞよろしくお願いします」

 言って、微笑むと料理人さん達はぽーっと呆けたようになっている。

「あっ!!俺達のママなんだからなっ!!」

「僕たちのママなの〜!!とっちゃダメ〜!!」

 繋いでいた手を解いて、私の前に立ち塞がって叫ぶアルゴス君とマルケス君。二人が私をとられる危機を感じさせる事は誰も言ってないはずだが、初対面の方々は多かれ少なかれ料理人さん達と似たような反応を示すので、不思議で仕方がない。これも後でディーバさんに聞いてみよう。

「みんなはご挨拶してくれたよ?アルゴス君とマルケス君は忘れ物ないのかな〜?」

 面白がる表情を作って、二人の目を見つめると、「忘れてないよ!!本当だよ!!」と言いながら、きをつけする。

「「よろしくお願いしますっ!!」」

「よく出来ましたっ!!」

 言って頭を下げた二人の頭を優しく撫でる。

「なに作るんだ?」

「僕、お魚が良いな〜」

「コラ!!アルゴス、マルケス!!ミーナは俺達の先生をしてくれる為に厨房に来てくれたんだぞ?ちょっと待ってろ」

 キャッキャとはしゃぐ子供達を諌め、そのまま両肩に抱き上げたのは、ボディビルダーのようにみっしりと筋肉をつけたマッチョ代表としか言いようのない、赤毛を短く刈り込んだ男性だった。近衛騎士のソルゴスさんと遜色なく見える料理人・・・・。「呼び捨ては狡い!!」と言う料理人さん達のブーイングを無視して自己紹介してくれる。

「俺は料理長を任されてるルッツォだ。とりあえず俺にミーナが料理を教えてくれば良い。そうすりゃ、あとの奴らにゃ俺が教えるから問題無い」

「ずりー!!そりゃねーだろ!!」

「独り占め反対っ!!」

「「うるっさーい!!」」

 ルッツォさんへ盛大なブーイングをかます料理人さん達へ子供達も叫び、とんでもない騒音となる。叫びに叫びは効果はないだろうと思った私は、金属バットを手に取ると調理台上へたたき付けた。けたたましいカーンと言う音に静かになる皆様。

「静かにしますか?」

 ニッコリ微笑むと、全員、コクコクと首を縦にふっている。アルゴス君の「おっかね〜」と言う声が聞こえた気がしたが、聞かなかった事にした。

 キコエナ〜イ。

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