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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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ママへの奨め 5

 キャーキャーと楽しそうな悲鳴をあげていたアルゴス君とマルケス君が私の腕の中で上目遣いで見上げてくる。

「どうしたの?」

「あのな?俺達が寝ちゃう前に、ママが美味しいのの事、しゃべってただろ?」

「ママ、作れる?食べたいな〜」

 可愛らしい二人からのおねだりに叶えてあげたいが、困ってしまう。ここはお城の中で、侍従さんや侍女さんが居るなら当然、お抱えのシェフが居ると思われるからだ。

 シェフだけに関わらず、プロフェッショナルと呼ばれる職人さんたちは素人が土足であがる事を嫌がる。まぁ、まれに聖域ともいえるそこに招きたがる方も居るが、そんな方は本当にまれだ。困惑している私を見兼ねたのか、ワクワクと期待に胸を膨らませて待つアルゴス君とマルケス君の姿を思いやったのか、王様が助け舟を出してくれる。

 あれ?ディーバさんが居ない?

「アルゴス、マルケス。今はお茶の時間だ。又の機会にしなさい。ミーナもどうだ?」

「えーっ!?今度っていつー!?」

「ママのお料理、僕達、晩に食べたいよ〜ぅ」

 王様の下へ駆け寄ったアルゴス君とマルケス君は、上質そうな上着を引っ張り抗議している。

 あぁ〜、服が伸びる伸びる!!

「御心配には及びません!!」

 王様の上着の心配をしていると、バーンという心象効果音付きで、はかったかのようにディーバさんが現れた。

 あれ?扉から入って来たって事は、やっぱり席を外してたんだ?

 ディーバさんの「心配に及ばない」という言葉は、誰の発言にかかるのだろうと考え、御遠慮願いたいまさかの案に行き着いた。

 それはつまり・・・・

「料理長には厨房利用の了承を得ていますので、ミーナ様さえよろしければ、すぐにでも調理に入って頂けます」

 やっぱりー!!なんてことしてくれたの〜!?絶対、料理長は嫌々だよーっ!!

 いっそこのまま倒れて仕舞いたい私に比例するかのように王様もまた、渋い表情を浮かべている。うきうきと浮かれているのは、空気の読めていないディーバさんと希望の聞きとげられそうな子供たち二人だけだ。

「ディーバ、お前がミーナの世界に思いを寄せるのは勝手だが、ミーナの心象も慮れ」

「はい。お言葉ですが陛下もミーナの世界の食べ物へ興味を示されたではありませんか」

「おもっぱってなにー?」

 今までは子供たちの疑問にはディーバさんが答えていたが、現在は王様と対話している。そのため、私が答える。大人の話と察したのか、ママの側に居たかったのかは不明だが、アルゴス君とマルケス君が戻ってきた。

「おもんぱかる。将来やまわりに居るみんなの状況をていねいに考えることをいうの。この場合は、私の心の中も考えなさいって陛下がディーバさんにおっしゃったの」

「俺達がおもっぱか出来ると、ママ嬉しい?」

 かっわい〜!!「おもっぱ」に「おもっぱか」だって!!

 可愛らしい言い間違えに悶えたり笑ってしまいそうになるが、アルゴス君は真剣なのだ。それに、子供は呂律が回らなかったり噛んだりするのが当然なのだ。大人は子供の可愛い仕草や口調に、ツッコミなど入れずに、ただただ癒されれば良いのだ。溢れだしそうな感情をひたすら抑える。

「そうね。王様が今してくれたみたいに、アルゴス君とマルケス君がしぜんに出来るようになると嬉しいな〜」

「ママ、嫌だな〜って思ったの?」

 不安そうに私に問い掛けてくるマルケス君に覚悟を決めた。二人に手料理を振る舞うのが嫌なのではなく、無用な軋轢を避けたいだけだからだ。

「陛下、私からもお願い申し上げます。もしよろしければ、作らせて頂けませんか?アルゴス君とマルケス君に私の料理を味わってほしいのです」

 私の申し出に驚いた表情を出した王様は、しかしすぐに柔らかい笑顔のままに頷いてくれた。

「「やった〜っ!!ママのお料理〜っ!!」」

読者様より、「慮る」は「おもんばかる」であって、「おもんぱかる」は間違いでは?とのご指摘を受けました。

辞書で調べると優先として「おもんぱかる」があげられ、「おもんぱかる」、「おもんばかる」、そのどちらでも間違いではないとのことです。私は語感の面白さから「おもんぱかる」を使っています。

意味は作中で軽く書きましたから省略しますが、「おもいはかる」から「おもんばかる」へさらに「おもんぱかる」へと変化してきた言葉だそうです。


ご指摘下さった抹茶様、ありがとうございますm(__)m

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