優しい時間 4
「うん!スゴイね。アルゴス君もマルケス君もちゃんとお勉強して大人に近付いてるね」
「本当か?ママ!」
「わ〜。嬉しいね〜?アルゴス〜」
私の頬に自分たちの頬を擦り付けてくるアルゴス君とマルケス君をどこか羨ましそうに見つめるラン君とリーン君に向き直る。
「ごめんね?ラン君とリーン君。二人とも、アルゴス君とマルケス君みたいにとっても良い子だから、私、焦って二段飛びに聞いちゃったね」
「「え?」」
謝った私にラン君とリーン君はきょとんとした表情になった。
「俺たち、良い子?」
「本当?ぼくたちも良い子?本当に?」
「本当に驚いた」と。「本当にそう思っているのか?」と。呆然とした表情と猜疑心に揺れるそれに「知りたい」でも「嘘だったらどうしよう」と、ラン君とリーン君は思わず聞き返してしまったようだ。
悔しい!!これって、ラン君とリーン君に大人たちがあまり誉めてなかったってことでしょ!?
もう確定だ。オーシャンのこどもたちは愛情を切望しているのだ。そう確信したら、オーシャンの大人たちへの怒りがフツフツと沸き上がる。
未遂な犯人たちに「私を誘拐する前にすること、出来ることがいっぱいあるでしょう!?」と、胸ぐらを掴んで首をガクガクさせるほどに揺さぶってやりたい。脳にダメージ?そんなん知るかっ!!だ。だが、今はラン君とリーン君が優先だ。
「もっちろん!アルゴス君とマルケス君、ラン君とリーン君はとっても良い子だよ」
抱きしめたい。本当にラン君とリーン君にもギュッとしたいけれども、出来ないので、本気の全開笑顔を彼等に捧げる。
「「「「ぅわぁ〜」」」」
ほっぺたをリンゴのように真っ赤に染めた子供たちの姿は無条件に可愛い。アルゴス君とマルケス君はほにゃりと笑いあい、ラン君とリーン君は……、顔をくしゃりと歪ませた。
「お、おれ、だぢ、よ、よいご、ょい、ごっでぇ〜っ」
「ながだいでよ(泣かないでよ)〜っ。ダン(ラン)〜」
鏡の向こうで、子供たちが抱きあって声をあげて「おいおい」と泣く。「大人に良い子供と言われて嬉しい」と泣くなんて。なんて胸に迫る光景だろう。なんで、この子たちにそんな泣かせかたをしているのだろう。なぜ、オーシャンの大人たちは、この子たちを「良い子だよ」と笑って抱きしめてあげないのだろう。「なぜ、なぜ」とたくさんの疑問がわく。
「ラン君もリーン君もとっても良い子だよ。だって、わからないことをそのまんまにしないで、アルゴス君とマルケス君に聞いたじゃない。すごく大切なことだよ?それをあなたたちは自分たちで出来た。ね?良い子でしょう?」
「そうだよ!!俺たち、出来なかったもん。ランもリーンもすげーな〜」
「うん!スゴイよ。でも僕たちも、ランとリーンに負けないよ〜」
笑顔で言い切れば、アルゴス君とマルケス君もニッコリ笑ってから続いてくれた。ちょっぴり悔しそうなアルゴス君とライバルを前にしたマルケス君が闘志を燃やしている。そんなフォレストの子供たちに、泣いてしまってちょっぴり恥ずかしかったのか、ラン君が自分の顔を袖で乱暴に拭った後でリーン君の涙を指で払ってあげている。
うん。この子たちも優しい良い子達だ。お世辞なんて必要ない。
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