表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
177/184

優しい時間 3

 オーシャンの彼らは、アルゴス君とマルケス君の態度、そして私のこどもたちへの接し方から、ラン君とリーン君に必要だと判断したはずだ。先ほど感じた、「オーシャンの子供たちが大切すぎて暴走した」というのは間違っていないはずだ。ならば、あえて、ラン君とリーン君には、アルゴス君とマルケス君に接するようにしようかと決める。下手な策は要らないだろう。まぁ、彼らの性格にあわせて細やかな軌道修正は必要だろうが。

「ラン君とリーン君、だね?」

「「うん」」

 名前を君呼びすることを当人に聞かずにするが、彼らは気にする様子を見せない。オーシャンの大人たちも(しか)り、だ。

「ラン君とリーン君はなんでフリストさんに怒られたかわかるかな?」

「「……ぁ…、あの……」」

「俺たちわか……ふが!?」

 口ごもり、視線を自分たちの拳と私の顔を往復させ、やっと何かを言おうとした瞬間、「はいはーい!」と手をあげたアルゴス君は「誉めて誉めて〜」とばかりにいたが、その彼の口を怖い笑顔を浮かべたマルケス君が塞いだ。

「ダメだよ。アルゴス!これはランとリーンのお勉強!ズルしたらへなちょこなオトナだよ?」

「そっか。そだな。ラン、リーン、ごめんな?」

 まずいな〜。アルゴス君とマルケス君にも「ラン君とリーン君のお勉強だからね」といっておかなければならなかったと思った矢先のマルケス君のフォローに、ただただ感謝だ。

 子供だから分からないだろう、大人だからわからないはずがないだろう、の決めつけは良くないと改めて思い知らされた。大人だろうと子供だろうと、知識を吸収して昇華していれば答えられるし、知らなければ当然のように答えられない。知ったかぶりせずに「教えをこう」ことは恥ずかしくないし、年齢は関係ない。マルケス君に頷いてからアルゴス君は、ラン君とリーン君にペコリと頭を下げた。

 ああ。本当にアルゴス君とマルケス君はちょっとの間にグングン成長してるな。

 出産経験も無いのに、「親は子供に育てられる」という誰かの言葉を思いだし、ホロリとしそうな私を繋ぎ止めたのもまた子供たちの声だった。

「いや。ズルしてへなちょこなオトナってなんだ?」

「おっきくなれば、誰でも大人じゃないの?」

 不思議そうに質問するオーシャンの子供たちに対して、フォレストの子供たちたるアルゴス君とマルケス君は真剣な表情をして応えようと口を開いた。おそらく、仲間意識を持って、「一緒にズルしないでカッコいい大人になるんだ」と使命感に燃えているのだろう。

「あのな?俺たち子どもはへなちょこな大人にならないようにって、なんでもお勉強なんだ」

「体だけがおっきくてもね?大人じゃないの。ちゃんと自分たちでなんでもやってはじめて、お勉強になるの。聞くだけだったり、自分たちでやらなかったら、本当の大人じゃないの。へなちょこなオトナになっちゃうんだよ?」

 真剣に言うアルゴス君とマルケス君に、ラン君とリーン君もまた、真面目そのものにじっと聞いている。「ね?ママ」と確認してきた子供たちに頷いてからギュッと抱きしめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=418023835&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ