優しい時間 2
「「あの……」」
ラン君とリーン君はフリストさんの迫力にのまれてしまったようで必死に何かを言おうとしてはいたが、言葉にはならないようだった。すっかり萎縮してしまっている彼等に助け船を出そうかと考え始めた私のスカートをツンツンと引っ張る者が居た。言わずもがなのアルゴス君とマルケス君だ。
「「ママ!!」」
二人の顔には「ランとリーンを助けてあげて」と、デカデカと書かれている。確かに助けようとは思ったが、人様の教育方針を聞く前には下手なことは言えない。
どうしよう。ん〜。
おそらく、ラン君とリーン君が私が拐われる原因だろう。だが、その子供によって躾方もガラリと変わるのだ。誉められて伸びるタイプの子供に頭ごなしに叱ったりすると当然のごとく、潰れてしまう。逆に、叱られると反骨精神で伸びるタイプの子供を手放しで誉めてしまうと嫌な方向に増長して、ワガママに育ってしまう可能性もある。
そんなわけで、彼らの情報がほぼ無い状態で下手な口出しはしたくないのだ。
「ミーナ様」
ふぁ!?
なんと、実行犯の一人の彼が、私に向かって深々と頭を下げてきた。すると、それをみたフリストさんも又、深く頷いた後に静かに私に向けて頭を下げてきた。
まさか、私に一任するってこと!?フォレストといい、オーシャンといい、この世界の人々は私に丸投げが好きなん!?
「キェ〜」と奇声を発したかったが、そんなことが許されないことはわかっている。半ばパニックになりそうな自分を抑えるためにも周りを見渡せば、王様も優しい顔で頷いている。
いや。あの……。
助けてもらいたかったのだが、王様の慈愛に満ちた顔に腹をくくる。
「アルゴス君、マルケス君、お友達を紹介してくれるかな?」
「「はい!」」
私の言葉にアルゴス君とマルケス君は期待に満ちた実に輝く笑顔でお返事してくれた。
「ラン!!リーン!!俺たちのママ!!ママにちゃんと話せば大丈夫だ!な?」
アルゴス君の言葉に、鏡の中でラン君とリーン君が不安と期待が入り交じった表情をしたままだったが、しっかりと頷いた。
「ママ!ランとリーンはこどものクルクルの相手でね?オーシャンに居るの」
アルゴス君に続いたマルケス君は私にラン君とリーン君のことを教えてくれた。
「アルゴス君、マルケス君、ありがとう」
「「どういたしまして」」
お礼を言うと嬉しそうに笑って胸をはるアルゴス君とマルケス君に、ラン君とリーン君がちょっぴり羨ましそうにこちらを見ていた。その姿を見て、彼らもまた、接し方もマナーも知らないだけで、一度切っ掛けと知識を与えれば貪欲に吸収していくだろうと確信する。
ならば、彼らの性格などを今から一気に、だが慎重に見極めなければならない。
「こんにちは。私はアルゴス君とマルケス君のママのミーナだよ?よろしくね?」
「俺、ランだ。こっちはリーン」
怖がらせないように柔らかく微笑むと、黒い髪のラン君がちょっぴり照れたように、でもそれを悟られたくないと言いたそうに名前を教えてくれた。ダークグリーンの髪のリーン君はちょっとだけラン君の背中に隠れるようにして私を見ている。