二国会議二日目 7
昔の私怨を思考から無くすために軽く頭を上下に振ると、どうやら、私に取って都合よく解釈してくれたらしい彼らは次々と訴えてくる。
「ですが、逃げたくないのです。逃げる姿を子供たちに見せたくないのです」
鉛色の髪の中年の男性が重ねた決意をこめた言葉に感心する。「自分の不始末は、どんなに周りに言われようが己でカタをつける」という言うのは簡単で、実行するのは難しい事を知っていながら口にしているからだ。
「自分の不始末は自分でつけなければならぬと、あの子たちに見せなければならないのです」
灰色の髪の青年の言葉が、鉛色の髪の中年の男性のそれを裏付けてくれる。
「ですから、どうか、どうかミーナ様」
心の底から反省して、後悔していると簡単に見てとれる、全員が必死に言う姿に降参した。
ああ。もうダメだ。私にはムリだ。
もう怒れない。
ついさっきまではどうやってやっつけてやろうと私も思っていたが、結局は彼らは「次代への心」により、斜め上ではあるが、強く強く思うがゆえの愛情から暴走したと理解してしまった。私もアルゴス君とマルケス君を思うからこそ、おかしな方向に走るかもしれない。そう感じるからこそ怒れない。
王様に視線をずらせば小さく頷いてくれた。これは「お前に任せる」という解釈で良いのだろうか。ならば、私が広げた風呂敷は強引だが、畳ませてもらおう。
だが……。
ホント反則。
思わず浮かんだ苦笑を隠さずに、神妙に私の言葉を待つ彼等に向かう。
「貴方たちの国の子供にこの会議で自分たちのした全てを話して下さい。その上であなた方に学ぶのを良しとするなら、私は何も言うことはありません。但し、子供たちが拒否した場合は許されるまで真摯に行動して下さい」
「……、はいっ。必ず」
一息に告げた私を、目がこぼれ落ちそうに丸くして見つめた後、彼らはくしゃりと表情を歪め、嗚咽をこらえるかのように身を震わせてから応えてくれた。
これを教育に生かしてくれたらもうなにも言う事はない。 フリストさんも王様も「子供の為にと言う免罪符を振りかざすことなく、受け入れられるまで謝罪しろ。それが暴走したあんたらへの罰だかんね」という私の意図する事を読み取ってくれたようで、深く頷いてくれた。サンタクロースさんは瞳に涙を浮かべて、見ているこちらが心配になるほどに、何度も何度も力強く首を縦に振っている。
国交間の問題解決に理想論ともいえる私のこれは甘いと言われるだろうが、個人的な問題としてしまえば、そこまで眉を潜められはしないのではないだろうか?
見渡せば、フォレスト組、オーシャン組、問わず、皆がどこかほっとしたように頷いてくれている。シュリさんは顔を真っ赤にして音の出ない拍手をしてくれている。
どうやら、皆がこの騒動の巻くの引きかたに満足しているようだと、私もほっとしていると、物凄い音を発ててドアが開く。
「「ママ〜!ビッグニュース!!」」
飛び込んできたのは、当然というかなんというか、頬を紅潮させたアルゴス君とマルケス君だった。