二国会議二日目 1
朝食会は一部のオーシャン組を除いて和やかに終わった。
「じゃ、俺たちがルー兄に聞いとくから」
「ルークス、ダメでも泣かないでね?」
「はい。よろしくお願いします」
「「任せて〜」」
「卵を吸ったパンを焼いてもらおうプロジェクト」を発足させたらしいアルゴス君とマルケス君が、ルークスさんに対して胸を叩いて請け負っている。食べ物を通じてあっという間にアツい友情を芽生えさせたらしい子供たちとルークスさんの興奮度は物凄く高い。だが、彼等のボルテージが上がれば上がるほど、フリストさんのこめかみに青筋が増えていく。恐らく、ルークスさんは子供たちに別れを告げたとたんに大目玉を食らうだろう。
「どんな味になるかな?」
「甘いのも良いかも〜」
フレンチトーストは卵液の染み込ませ具合と焼き加減によって、もふもふにもプリン風にもチュルンとした口当たりにもなります。
「ジャムを後からのせてみるのも良いかもしれません」
それはもう、完璧なフレンチトーストです。
「「それ良い〜!!」」
心の中で突っ込みを入れまくる私をよそに、ルークスさんの提案にはしゃぐ子供たちに、尚も話が続きそうだと思っていると、始祖様がアルゴス君を、リオさんがマルケス君を抱き上げた。
「こ〜ら。ちびども。そろそろ行かないとミーナちゃんが仕事から帰ってこれなくなるぞ?」
「「なんで!?」」
「そんなん、お前らがここで邪魔してるからいつまでも大人は会議出来ねぇだろ。したら終わりがおそくなんのは当然だろ?ミーナちゃんだけでなく、な」
悲鳴じみた声を上げたアルゴス君の鼻を軽く摘まんだ始祖様が言う。マルケス君はリオさんの腕の中で鼻を押さえつつも呆然としていた。思いもよらなかったのか、よほど驚いたのか、顔面蒼白になっていた子供たちはハッと我に返ると私たちに頭を下げた。
「「邪魔してごめんなさい。おしごと、頑張って下さい」」
今にも泣き出しそうに恐縮する子供たちの姿は本当に痛々しい。
「大丈夫。お邪魔じゃないよ。自分たちだけで考えて反省出来るアルゴス君とマルケス君は良い子だよ」
「「本当〜?」」
私の言葉に子供たちが不安そうに問い返してくる。頷く私が口を開くより早くリオさんが断言する。
「本当、アルゴス、マルケス、良い子、安心」
「「リオ兄〜」」
うん。二人はリオさんの言う通り、とっても良い子だよ。
「アルゴス様、マルケス様、申し訳ありません。私が調子に乗ったせいです。お許し下さい」
「「ルークス。……おしごと終わったらまたお話ししてね」」
謝るルークスさんに、ますますウルッと声も滲ませながらも、お仕事の邪魔は出来ないと思ったらしい子供たちは手短に言って、手を振ると、始祖様とリオさんは腕に子供たちを抱いたまま出ていった。
「まったく!お主の食い意地でアルゴス様とマルケス様に迷惑をかけおって」
扉が閉められ、子供たちの姿が完全に見えなくなってから、当然の如く特大の雷がフリストさんからルークスさんへと落とされたのは同情しづらい事実だった。