困惑と謝罪 6
ポタージュの味を確かめ満足したらしい子供たちの次のターゲットはオムレツだった。
「これも黄色いから甘いのかな?あれ?」
「どうしたの?美味しくないの?」
躊躇なくオムレツを口にしたアルゴス君が首を傾げると、不安そうにマルケス君が訪ねる。味のバロメーターにしていた子供たちの様子に大人たちも「どうしたのか」と口には出さないが彼等を見守る。
「違う。甘くないけど、美味しい。口に入れるとふわんて卵だ」
「ふわんて卵なの?」
「食べれば分かる!!みんな食べて」
「うむ、うむ」と頷きつつ真面目な表情のアルゴス君が珍しいのか、マルケス君はおっかなびっくりおずおずとオムレツを切り分けて口に入れる。大人たちはアルゴス君の表情が気になるのか促されつつも誰もオムレツに手をつけようとしない。
「!!」
目を丸くしてパッと表情を変えたマルケス君は何度も首を縦に振った。それを見てアルゴス君がイタズラが成功したとばかりにニンマリと笑う。
「な?甘くないけど、うんまいだろ?」
「うん!でもなんで真面目したの?」
びっくり顔のままに問うマルケス君にアルゴス君はますますニンマリ笑いする。
「びっくりしただろ?」
「したよ〜。もう〜。意地悪しないでよぅ」
「ゴメン。多分、もうしない」
「アルゴス」
一応、頭は下げたものの含みを持たせたアルゴス君にマルケス君は呆れたような視線を送っている。子供たちのやりとりに安心した大人たちもオムレツを頬張っていた。そのうちの一人がパンにオムレツを挟んで食べているのを見た子供たちは彼に勢い良く問いかける。
「「それ、美味しい?」」
ニンマリと笑って首を縦に振ってみせた茶目っ気ある彼の仕草に子供たちも慌てたようにパンを割り出した。
「どうせなら、この肉も入れてみっか?」
「美味しいかも〜」
半分に切ったカリカリ肉とオムレツを溢れない程度に挟んだ子供たちは大きく口を開けてかぶり付く。オムレツサンドをしていた男性にニンマリと笑い返して、何度も首を縦に振ると、すっかり目と目で通じあっているようで今度は彼が肉を挟んで食べる。
「「教えてくれてありがとう〜」」
「肉のもいーな」
「カリカリとふわんが合うね〜。今度はサラダとお肉でやってみる?」
「「お〜」」
子供たちの勇ましい声に、男性が声をかけた。
「申し遅れました。私、オーシャンのルークスと申します。蛇の獣族です。以後お見知り置きを」
そう言って頭を下げたのは、髪と瞳が金色の中々に引き締まった肉体の、オムレツサンドを作っていた彼だ。
「「よろしくお願いします」」
「美味しい食べ方、まだある?」
「教えてほしいな〜」
「私こそお二人に教えて頂きたい。卵は大好物なのですが……」
さすが蛇、好物までそのまま。たしか、卵を丸のみすんだよね?蛇。
ああでもないこうでもないと、子供たちと一緒になって真剣に議論を交わすルークスさんの姿を同じオーシャン組の皆さんは呆れたように見る方が半分、期待するように瞳を輝かせる者半分と見事に分かれていた。ちなみにフリストさんは子供たちには優しく、ルークスさんには呆れたような視線を送っている。
「よし!!それ、聞いてみよう」
「「「お〜」」」
なにやら話が纏まったらしく、子供たちが私を見上げてくる。
「ママ、パンに卵を吸わせて焼いたらどうかなってルー兄に言ったらやってくれるかな?」
「オムレツ挟んで美味しいんだから、それも美味しいんじゃないかな〜って」
「どうだろうね。ルッツォさんに聞いてみると良いかもね」
「「「はい!!」」」
「それはフレンチトーストやパンプティングです」と口走りそうになる自身を押さえつけ笑って答えれば、美味しい物追求隊の三人は嬉しそうに頷いた。