困惑と謝罪 3
フォレスト組が笑っている理由が自分の発言だとは思ってもみないのだろうアルゴス君が首を傾げていたが、「楽しいならいっか」とニパッと笑っている。
「本当に申し訳ありませんでした」
土下座して平伏したまま声を張り上げたのはサンタクロースさんことフリストさんだった。
「オーシャンの。アルゴスとマルケスの事も思ってくれるなら、席へと着いてくれるか?」
「しかし……」
「ここで謝ればどうにかなると思ってんじゃないだろうな」と言外に匂わせたと思うのは私がひねくれているからだろうが、一国の王だ。そうやすやすと誤魔化されたり流されたりはしないだろう。ふっと雰囲気を緩めながら言った王様に頭を上げつつも戸惑うフリストさんの背中を押したのはアルゴス君とマルケス君だった。
「ごめんなさいしただろ?」
「うん。ごはん食べよ?」
にっこりと笑いながら言う子供たちに、嗚咽を堪えながら頷き、フリストさんとオーシャン組はゆっくりと席に着いた。
気をおちつけてからの方が良いだろうと食事の前にお茶にしようと王様が提案し、私たちの前にセッティングされた。子供たちには空腹を我慢させるわけにはいかないだろうとの配慮で小さなパンも置かれていた。「美味しいね〜」と笑いながら食べる子供たちの姿にいきおいよくフリストさんが頭を下げた。
「我々が情けない事をしたというのに、アルゴス様とマルケス様においては、この度、我が国の子供たちへ心よりの贈り物を頂いたと聞きました」
「あ!!届いたんだ?みんなカブトムシ見たのか?」
「なんて言ってたの?怖がってなかった?」
パンを置いていそいそと姿勢を正す子供たちは小動物のようで可愛らしい。
「申し訳ありません。言葉は預かっておりませんが、手紙は転送されましたのでこちらを」
「「お手紙!?ありがとう〜」」
「お手紙だって」と嬉しそうに私に告げてくる子供たちに遺恨は無さそうだ。わざわざこちらの席まで来てくれたフリストさんから受け取った子供たちは破かないように慎重に封を解いた。中から取り出した手紙を額を付き合わせて読んでいた子供たちがそれはそれは綺麗な満面の笑みを浮かべる。
「カッコいいの、ありがとう、だって!!」
「クワガタに指、挟まれそうで怖いんだって。僕と一緒だ〜」
子供たちは少し読むたびにパッと顔をあげて私に報告してくれる。
「皆で秘密兵器読んだんだって。御世話がんばるって」
「僕たちも負けないで、しっかりお世話しようね」
「「「お〜っ」」」
子供たちの気合いに交じると、にこりと笑い、また嬉しそうに手紙を読み進めていく。
「カブトムシがいっぱい来る秘密兵器も教えたら喜ぶよな」
「でも、すっごく臭いから、カブトムシがもっと欲しいなら僕たちに言ってって、初めのお手紙に書いたよ?」
「そうだな。凄いもんな。俺たちが頑張れば良いんだもんな。マルケス、あったま良い〜!じゃ、お手紙ありがとうって書こう」
「うんっ!!お返事書こう〜。じーじ、リオ兄、今日はお外でお返事書いても良い?」
「おう」
目先の事だけでなく、待っていてくれるだろうイールとイースの事もきちんと考えているところは子供っぽくないなと思いつつも、大人になるためのお勉強は確実に実を結んでいるのだなと感心する。でも、親のエゴみたいなものだと分かっているが、まだもう少しだけこのままでいてほしいなと願ってしまう私はママ失格なのだろう。