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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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朝食の前に 3

 怒りが収まらない様子でプリプリしているシュリさんに、冷静にアレスさんが返す。

「そうは言いますがシュリ、ミーナもアルゴス様もマルケス様も居たのです。流血沙汰になったらミーナは倒れてしまうでしょう?」

 ふぁ!?倒れませんよ!?鶏をしめる事の出来る私があれくらいじゃ倒れませんよ!?まぁ、斬られた人の血を見たことは無いからわかんないけど。

「それもそうね。私の配慮が及ばなかったわ」

「分かっていただけたなら気にしません」

 私を置いて綺麗に纏めてしまった二人に聞きたい。どんだけか弱く思っているのですか?と。虫が平気な時点で図太いまでいかずともか弱い人間ではないと判断できそうなものだが、なにかおかしなフィルターでもかかっているかのようだ。そんな二人はおいといて、どうやら私の高飛車発言もうやむやになりそうなので、これ幸いとばかりに知りたい事を王様にぶつけてしまう。

「差し出がましくてすみませんが、よろしいでしょうか?」

「うん?ミーナ」

 前置きすれば、どこか面白がるような表情で王様が頷いてくれる。

「教育係りとして連れ帰りたいのなら、わざわざ危険を犯して拐うより、国を通して了解を得る方がよほど得策だと思うのですが」

 私の言葉に、王様も含む全員が頷いた。

 そう。国からの拝命であれば、大抵は個人の意志など無視されて当然なのだ。だから、「お伺い」と言う名の命令をしてしまえばスムーズに事が運ぶはずだ。なのに何故、拐おうとしたのかが分からない。

 それにここには彼等が敬愛する始祖様のリオさんが居るのだ。機嫌を損ねるようなことを、いくら暴走したとは言え、するだろうか?いや、制御できない感情を抱えるからこそ暴走なのか。

「確かにな。疑問ももっともだ。正式に抗議しよう」

「抗議より、真相を解明しない事には何も変わらないのでは?」

 考えに没頭する私のそれを無言の抗議と思ったのか渋い表情になる王様にエリゴスさんが告げた。

「そうですね。今ある情報は賊の証言しかありませんしね。しかし、陛下、もしかするとあちらからアクションがあるかもしれません」

「うん?」

 エリゴスさんの言葉を引き継ぐようにディーバさんが言うと、王様が首を傾げた。あちらから謝罪の言葉が出るのだろうかと私も内心で首を傾げた。

「アルゴス様とマルケス様が今朝、オーシャンとヴォルケーノのお子様たちにご自分たちでお採りになった甲虫をプレゼントなさったのです」

 あぁ!!被害者たる子供たちが知らぬ事とは言え、加害者関係の子供たちに贈り物をしたから、やましい人間は戦々恐々とするよねってことか。

「ほう?それはミーナが?」

「いいえ。独り占めは良くないとご自分たちで決めております。確かに初めはオーシャンの子供たちにと言っていましたが、ヴォルケーノにも子供たちは居るのでは?と示唆したらすぐに決めました」

 目を丸くして問われたので答えると、王様はふわりと微笑んだ。

「自分たちで、か」

「はい」

 独り言に近い響きだったが、あまりにも優しい笑顔だった為に返事をしてしまった。

「ふむ。ならば確かに良心の呵責に苛まれて動きを見せる可能性は高いな」

 言ってニヤリとほくそ笑む王様は先程の表情は幻だったのではないかと感じるくらい、腹黒く見えた。



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