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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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朝食の前に 1

 子供たちの贈り物を終えると、始祖様がアルゴス君とマルケス君を抱き上げた。

「よっし。チビたちは飛竜に挨拶に行くぞ。朝飯までは皆とお別れだ」

「「はい」」

 前もって言われていなかった私は軽く戸惑いながらも、反論するだろうと思っていた子供たちが素直に頷いた事に目を丸くした。驚いたのか予想外だったのか、同じく目を丸くした始祖様は子供たちの顔を覗き込んでいる。

「だって、俺達のためにみんなは早起きしてくれただろ。だから、当然だ」

「そう。僕たちはお昼寝出来ても、マンティスたちは出来ないでしょ?なのに、ありがとうはあってもワガママはもうダメなの」

 続いたマルケス君と顔を見合わせたアルゴス君はニッと笑う。

「だよな」

「ね〜」

「アルゴス様!!マルケス様!!」

 ニコニコと微笑みあう 子供たちに、ディーバさんの涙腺は決壊してしまった。

「泣くなよ。ディーバ〜、な?」

「泣かないで〜」

 抱き上げられている子供たちが心配そうに声をかけると、逆効果になったようで、おいおいと声を上げて泣き出してしまった。

 いや、うん。気持ちは分かるよ?私も泣きはしないけど凄いと思うもの。

 本当に少しずつではあっても確実に成長をしている子供たちの姿は目を見はるものがある。「情緒面の成長が芳しくない」と言われていた子供たちの姿を見ているからこそ感極まってしまうのだろうディーバさんの何度かの涙腺決壊の様子から、相当なものだったのだろうと予想出来るが、逆にその頃の二人の姿を怖いものみたさのような感覚で覗いてみたい気もする。

「んじゃ、朝飯の時に又な」

「「皆、ありがとうございました。又ね〜」」

 これ以上ディーバさんに泣かれたら、以降の会談に差し支えると判断したのか、始祖様が抱っこしたまま背中を向けると、その肩口に顎を乗せた子供たちが「バイバ〜イ」手を振ってくれた。その可愛らしい仕草にやられた大人たちは、始祖様たちが扉の向こうに消えるまで笑顔で返していた。



                      □■□■□■□■□■□





 カブトムシ捕獲隊の面々は各自身なりを整えてから、報告の為に王様の執務室へ揃っていた。私が行った時にはすでにソルゴスさんもエリゴスさんも、ディーバさんも居た。メンバーが揃い、お茶が出されるとすぐに王様が口を開いた。

「先ずは礼を言わせてくれ。アルゴスとマルケスの為に早朝からの足労、感謝する」

 一息に言い、頭を下げた王様に捕獲隊は言葉もなく頭を下げる。何拍か置いてから頭を上げると皆、興奮で頬を赤く染めていた。それはそうだろう。自分達の国の尊敬してやまない王様直々に労われ、それどころか頭まで下げられたのだ。隣に座っているアレスさんとラムセスさんは目も潤み、心なしか小さく体が揺れている。

 前にも思ったが、この王様は本当に民を愛し、感謝する事を否やとしないからこそ、国民も敬愛するのだろうと痛感する。だからと言って、盲目的に庇護するわけではなく、時には厳しく突き放し、成長する姿を見守る、真の意味で優しい人だと思う。そんな王様が再び口を開く。

「特にマンティスには大変世話になったとアルゴスとマルケスに聞いた。ありがとう」

「……、この身には過分なお言葉、光栄にございます」

 名指しされたマンティスさんは目を見開き、大きく体を揺らした後、口をパクパクとさせて絞り出すように言って頭を下げた。そんな彼を宥めるランティスさんは、アルゴス君とマルケス君を連想させ、しみじみと兄弟って良いなと思った。

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