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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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カブトムシ大作戦 3

「「ここだよ!!」」

 子供たちに元気に言われて、ラムセスさんとランティスさんが飼育小屋を下ろした。

「あれが俺の〜」

「あっちが僕の〜」

 でも、何かがおかしい……

 アルゴス君とマルケス君がそれぞれ指差した樹には目印のリボンが揺れている。それじたいにおかしな点は無いが、樹に違和感を覚える。

「なんか黒くね?」

 始祖様の呟きに、私も呆然としながら頷いた。そう。一番近いアルゴス君の目印のついた樹の幹の部分が異様に黒ずんで見えるのだ。

「「なんだろ〜?」」

 スズメバチって夜行性じゃなかったはずだよね!?や。でも、奴等は巣を作るのも早いし……。

 不思議そうな子供たちの手を握ったまま、スズメバチの恐怖再びか!?と一人混乱しながらも、皆にあわせてゆっくりと歩み寄った。

「「あ!!」」

 子供たちの叫びは捕獲隊全員のものでもあった。何故なら、大袈裟かもしれないが、林中の虫が集まったのではないかというくらいに、たった一本の樹に甲虫が群がってひしめいていたのだ。正直、虫は平気なはずなのに昔のパニック映画のワンシーンのような光景は精神的にキツイ。

 シュリさん、来なくて正解だったな〜。見たら失神してるわ。絶対。私でもヒクもん。

 よほど嬉しかったのか、アルゴス君もマルケス君も、私の手をパッと離して樹に駆け寄った。

「いっぱい!!」

「クワガタも綺麗なのも居る〜!!」

 アルゴス君が秘密兵器を塗った樹を、楽しそうに観察する子供たちに、慌てたようにランティスさんが飼育小屋を持って駆け寄った。ラムセスさんは、「別の虫籠を用意して参ります」と言い残して、城へと踵を返していった。

「青、斑点、カミキリムシ、種類、分ける、入れる」

 あまりの展開にただ立ち尽くすしかない今の私には、淡々としたリオさんの物言いが天の声で、救いにも感じる。

「かいきりむし!!何か噛むのか?」

「綺麗なのに怖い名前だね」

「カミキリムシは木をその歯でかじります」

「ひぇ〜」

 マンティスさんの説明に、今まさにカミキリムシをつつこうとしていたアルゴス君が慌てて手を引っ込めた。

「か、かじるのは樹だけ?僕たちのこともかじる?」

 マルケス君はアルゴス君の手をギュッと握って、泣き出しそうになりながらもマンティスさんに問いかける。

「カミキリムシはこのように鋭い歯がありますし、餌も種類によって違います。我々が間違って噛まれない為にも見るだけにした方が良いと思います」

「「はい」」

 虫のなる樹と化したそこから、無造作にカミキリムシをつまみ上げて説明するマンティスさんに、子供たちは真剣な表情で頷いた。

「カミキリムシはアレスみたいだな」

「綺麗なのに強いんだもんね」

 昨夜の興奮が残っているらしいアルゴス君とマルケス君に、「カミキリムシみたい」と評されたアレスさんはなんとも言えない微妙な表情になっている。そんな彼の心境を知るよしもない子供たちは純粋に誉め言葉だと思っているようだ。

「秘密兵器、凄い!!マンティス、ありがとう〜」

「ホントだね〜!!ありがとう〜。マンティス〜」

 嬉しそうに子供たちに抱きつかれたマンティスさんは、戸惑いながらも優しく頭を撫でている。二人は気持ち良さそうに目を細めていたが、不意にマルケス君が眉をハの字にしかめた。

「でも、どうしよう〜。他の樹もこんなかな〜?」

「調べてみよう」

「「お〜!!」」

 勇ましく声を上げた子供達に、カブトムシ捕獲隊員の大人たちは続いた。

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