使者団との晩餐 2
イカリングは初めから穴あきなんだと納得した子供たちを見ていて、ドーナツを出したら同じように「誰が食べちゃったの!?」とびっくりするのか、「これもイカリングみたいに何かを輪切りにしたの?」と聞かれたりするのかと思い、ちょっぴり実験してみたくなってしまう。
「こおっけみたいだけど違って、イカリングはイカってわかった」
「でも、これ、ころんってしてたりペタンコだったりするよ?なんで〜?」
様々な形のフライに新たな疑問が浮かんだらしい子供たちに、ディーバさんがニッコリと微笑んだ。
「はい。色んな食べ物を使っているからですよ?まずは食べてみてはいかがでしょうか?」
「そうだぞ〜。食べてから質問に答えてやっから温かいうちに食べろ。ルー兄、大好き〜ってなるから」
「「はい」」
答えるディーバさんと茶化すルッツォさんに、笑いながら大きく頷いたアルゴス君とマルケス君はすぐさまナイフとフォークを上手に使って、それぞれ違うフライを口に入れる。モグモグごっくんしてにんまりと笑う子供たちに釣られたように大人たちもフライを口にする。
「イカリング、良いな」
「お魚だ〜。ピンクで可愛い〜。美味しい〜。僕がお魚、好きって覚えててくれたの〜?」
ほっぺたを押さえながらニコニコと笑うマルケス君は私の腕にスリスリしてきた。嬉しいが、私が料理を提案したのではと疑われるのではないかとヒヤリとする。
「なんだかんだで肉の方が多かったからな。ママに前に魚が好きってマルケスが言ったんだって?覚えてたママに、魚料理を出してくれないか?って言われたんだ。これなら、魚もいっぱい食べれるだろ?ママにもお礼を言っとけよ?」
「はい!!ママ、ありがとう〜」
ナイス!!ルッツォさん!!
さらりとフォローしてくれたルッツォさんに心の中で拍手喝采する。チラリとオーシャン組に視線を向ければ、彼等はフライに夢中で、一見してこちらに関心を示していないように感じた。まぁ、本当に夢中なのか装っているのかは分からないのだが……。
「ホントにルー兄、大好きってなったな」
「ね〜。なったね〜」
新たにフライを食べてから興奮ぎみにアルゴス君が言えば、ミネストローネを口にしていたマルケス君もほにゃりと笑って答えた。ニコニコしていたアルゴス君が、急にお目目を真ん丸にした。
「あ!!これもさんでっちしたら美味しいかも」
「そうだね。やってみよう〜」
「「お〜」」
気合いを入れた子供たちが早速、ナイフでパンに切れ目を入れていく。
「ママ、サラダのマヨ、さんでっちしたらなくなんないかな?マヨだけってお代わり出来るかな?」
「お行儀悪い?」
聞いてくる子供たちの頭を撫でてからディーバさんに視線を移せば、彼は小さく頷いてくれた。
「食べ物で遊んじゃうのはお行儀悪いこと。でもアルゴス君とマルケス君は遊んでないでしょ?だから大丈夫だよ?でも、マヨネーズだけをスプーンで食べちゃうのは、あんまり良いことじゃないかな。見て?こんなにあるんだから、お代わりしなくて大丈夫じゃないかな?」
「「はい」」
「マヨ飲まなきゃ大丈夫だって」とクフクフと笑いながら、二人は自分たちのオリジナルサンドイッチを作っている。アルゴス君は鱈フライのサンドイッチを、マルケス君はカキフライのサンドイッチを作り上げると、大きなお口を開けてかぶりついた。
「「ん〜!!」」
美味しいお顔になった子供たちが「お行儀悪くてごめんなさい」とペコリと頭を下げてから、お互いのサンドイッチを交換してかじる。
「これも良いっ」
「こっちも美味っしい〜っ。アルゴスありがとう〜。僕、サンドイッチを作るなんて考えてなかった〜」
「へへへ〜。美味しいな〜」
「ね〜」
子供たちの真似をした大人たちのほとんどが、パンとフライをお代わりしたのは当然と言えば当然の成り行きだった。