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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
142/184

廊下にて2-4

 始祖様の思惑はどうあれ、きちんと謝る事が出来たアルゴス君とマルケス君を、腕の中に入れるとキュッと抱きしめた。

「良い子たち、見〜つけた」

「「きゃ〜」」

 嬉しそうに悲鳴をあげた子供たちが再び、私のお腹にグリグリと頭を擦り付けてきた。思えば、こちらに来てから就寝を除いて、こんなにも長い時間離れた事は無かったように思う。さみしい思いをさせてしまったと、二人の好きにさせる。

「二人とも、獣還りは終わったんだね〜」

「はい!!あのな、ぐぃ〜ってなって、ムニャムニャッてなったら戻った」

「そうなの!!カブトムシの秘密兵器を作る前にね?ちびもふじゃ出来ないな〜って思ってたら、ムニ〜ッてなって、怖くて目を瞑ったらね?じーじに目を開けてみ?って言われて、でも怖くてね?アルゴスが先に開けたみたいで、マルケスって呼んでくれたの〜」

 いきなり体験したことのない感覚に襲われたのだろう二人は、それでもお互いに補いあい、労りあい、協力したようだ。これからも、いや、大人になってからもこんな関係でいてくれたらと切に思う。

「だってきょーだいだしな!!俺が出来ないのはマルケスがしてくれてるんだから、マルケスが嫌だなって思うのは俺がするんだ」

「ありがとう〜。アルゴス」

「「ふふふ」」

 ちょっぴり照れているのか早口に言うアルゴス君は、本当に嬉しそうに言うマルケス君にチラッと視線をやり、軽く頭を合わせて笑った。血が繋がっていないとはいえ、兄弟の結束は強いようだ。一人っ子だった私は、微笑ましくもなんとなく羨ましく感じてしまう。「くふくふ」と笑いあっていたアルゴス君が声を上げる。

「あ!!忘れてた。俺たち、みんなにお願いがあるんだ」

「明日ね?カブトムシ、二匹しか居なかったらね?僕たちにちょうだいって……」

「「ダメ?」」

「もちろん!アルゴス君とマルケス君にあげるよ」

「「本当!?」」

 私だけでなく、皆さんの顔をきちんと見て頭を下げた子供たちに答えると、不安そうだったのに一気に笑顔に輝いた。

「「「はい」」」

「ただし、きちんとお世話出来ないなら、我々がお預かりします。体の大きさにかかわらず、命とは尊いものなのです。決していたずらに散らせて良いものではないのですよ?カブトムシも生きているのですから、無駄に寿命を縮めさせるのは可哀想でしょう?」

「「はい」」

 しっかりと釘を刺すアレスさんに、子供たちは背筋をピンッと伸ばして真剣な表情で頷いた。

「しっかりとお世話すると約束出来るかな?」

「「はい!!頑張ります」」

 意気込み充分の子供たちに飛竜たちが鳴く。

「「グルァ〜。グルル、グルァ」」

「頑張れ。イール、イース、行かない、言った」

「「え!?行かないの!?」」

 てっきり一緒に行くと思っていた子供たちは弾かれたように顔と声を上げた。

「「グル〜、グルルルァ、グルル」」

「行く、カブトムシ、逃げる、アルゴス、マルケス、泣く、行かない、言った」

「「  」」

 気配に怯えて虫や小動物が立ち去る事を飛竜たちは懸念して、「自分たちが行ってカブトムシが逃げたら、泣いちゃうだろ?だから俺たちは行かないよ」と言ってくれたのだが、絶句したまま二人は固まっていた。

「本当は二人と行きたいけど、イールとイースは大きいから、虫なんて気付かない内にプチッてしたら嫌だなって思ってるんじゃないかな?」

「「グルァ〜。グルルルル」」

「そうだ。アルゴス、マルケス、好き、命、大切、言った」

 私の言葉を肯定した飛竜に子供たちが頭を下げた。

「わかった。ごめん。そこまで考えてなかった」

「アレスも言ってたもんね。命をいたずらに散らせてはいけないって。ごめんね?でも、これからも遊んでくれる?」

「「グルァ〜」」

「もちろん、言った」

「「ありがとう〜」」

 飛竜たちの間髪入れない返答に嬉しそうに飛び付いた子供たちに見とれていた為、私は気付かなかった。こっそりリオさんと飛竜たちの様子を見に来たオーシャン組が泡を吹いて卒倒寸前だったことなど……。

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