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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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二国会議 初日 2

「以降、お見知り置きの程を賜りたいと存じます」

 アレスさんが最上級の笑顔で締めると私たちは頭を下げた。フォレスト組の自己紹介が終わると、アレスさんの笑顔に見惚れていた使者団の方々が気を取り直してか小さく咳払いをして続く。驚いた事に、オーシャン組は全て王族で固められていた。

「では私から。私は先代王の兄に当たるフリストと申します。こんな爺の何が良いのか、中々、隠居で居させて貰えません」

 茶目っ気たっぷりに説明したサンタクロースさんはフリストさんと言い、現在の王族の中では長老に当たる方らしい。正直、そんな方を使者として外交に参加させて良いのか?とか、まさか人手が足りないのか?とか、聞かれたらマズイ失礼な想像をしてしまった。

「本来であれば、老いぼれは顔出ししない予定でありましたが、事情がありまして……」

「フリスト様!?」

 何か重大な事を言い出したのだろうフリストさんに、「爬虫類を擬人化したら、こうなります」と看板を掲げているような、銀色の瞳と髪の、切れ長のきつい視線の細身な男性が諌めた。だが、サンタクロースさんは彼をキッと睨み付けて、言葉を封じた。

 お〜。爬虫類さん、サンタクロースさんに負けた〜。凄いな〜。サンタクロースさん。

「何かあってからでは遅いだろう。何もなければそれで良い。心配し過ぎくらいで良いのだ。何事も先手先手だ」

 確かに、「備えあれば憂い無し」のことわざ通り、陰口を叩かれようとも事に備えて、「何もなくて良かったね」と笑いあえる方が良い。いざ大事が起きても「備えがある」と「ない」では大違いだ。しかし、今、こうして他国の私達を前に言い出したという事は、こちらが否応なしに巻き込まれる可能性が高いという証明でもある。チラリと王様とディーバさんを伺うと、彼等もまた気付いたらしく小さく頷いてくる。やはりというかなんというか、フォレストの騎士組は、それと気付かれないように警戒していた。対するオーシャン組は、フリストさんが言いたい事に対して戦々恐々としているように見える。

「何かとは?とお伺いしても?」

 ディーバさんの問いかけに頷いたフリストさんが口を開いた。

「いや、お恥ずかしい話しですが、我が国の尊い方が自分も行くと宣言され、こちらにお邪魔しているのです」

 ふぁ!?

 フリストさんの爆弾投下に、皆が息を飲んだ。

 王族が「尊い方」という事は神様かそれに近いような身分の方ではないだろうか?そんな方に知らず知らずの内に無礼を働いたり、不興を買ってしまったらと考えるだけで背筋が凍る。

「ご紹介いただいても?」

 聞いて聞いて!!そこ、物凄く大切だから!!

 笑顔をキープしたままのディーバさんは、物凄く緊張しているように見える。

「もちろんです。ですが、この場にはいらっしゃりません。あの方は大変自由な方で、私達の思惑は通じません」

 苦笑いと共に「は〜」とこぼした溜め息は本心からだろう。

 それにしても厄介な。言葉から推察するに、要人が一人フラフラとフォレストを歩いている可能性が高い。「何かあってからでは遅い」は、「知らずにフォレスト国民が失礼したら国際問題に発展する」にかかっているに違いない。


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