使者団との昼食会 2
「「ママ、あ〜ん」」
「はい、どうぞ」
細かい疑問は後で纏めてディーバさんに聞くことにして、子供達の可愛らしいおねだりに、ロールキャベツを一口大に切り分けて二人のお口に入れる。
「「ん〜」」
咀嚼した子供達の美味しいお顔と唸りに力を得たのか、向かい合う形で座っている使者団の皆様も、恐る恐るロールキャベツを口に入れる。
「野菜なのに!!」
「ね〜。野菜でも美味しいね〜。隠れてたの、お肉だった〜。恥ずかしがらなくても美味しいのに〜」
「だな!!でも、肉だけだと美味しくないかも?わかんないけど、美味しいからいっか」
ちびもふブラザーズの言葉に、美味しいお顔のままで使者団の皆様も激しく首を縦に振った後、我にかえったのか恥ずかしそうに視線を反らしたり、咳ばらいをしたりしてごまかしていた。
「これもどうぞ」
「「なにこれ〜?」」
ロールキャベツのスープをパンに染み込ませて、ちびもふブラザーズのお口に入れると、二人はもうめろめろになっていた。
「おきゃべのスープ、パンで旨い!!」
「ね〜。ロールキャベツも美味しいけど、スープを飲んだパンも美味しい〜」
子供たちが「もっとちょうだい」と口を開けるのを見た大人たちも真似をして、パンをスープに軽く浸して食べている。
「「美味しいね〜」」
にっこり笑うちびもふブラザーズに大人たちは笑顔を返して、自分たちの皿を空にしていく。ある者はパンを、ある者はロールキャベツを、ある者は両方をお代わりしている姿をじっと見つめていたアルゴス君が私を降りあおいだ。
「俺ももっと食べたい!」
「僕も!!」
間髪入れずにマルケス君も続いたが、まだスープもサラダも食べていないのだ。
「全部食べて足りなかったらにしない?」
「「はい!!」」
ちびもふブラザーズはキラキラ笑顔で大きく頷いてくれた。ゆっくり味わいながら、「おきゃべ」と「スープを飲んだパン」を交互に食べたアルゴス君がしみじみと言う。
「は〜。食べ過ぎるとデブになるって言われたけど、俺、おきゃべとかでデブるならデブで良い」
「僕も!!」
もちろん間髪入れずにマルケス君も続いた。
「おデブになったら、お膝抱っこ出来なくなっちゃうな〜」
いたずらっぽく言って、チラッとソルゴスさんに視線を流す。
「「え!? あっ」」
子供達は小さく声を上げた後、促されるようにソルゴスさんを見て私の伝えたいことを理解したらしい。私の伝えたいこと、それは「鍛えてムキムキになったらおデブになってもお膝抱っこできるよ」。
「デブはダメだな」
真剣な眼差しで重々しくアルゴス君が言えば、マルケス君も頷く。
「何事も程々が一番だね」
誰から聞いたのか大人びた言い回しのマルケス君に、誰かが「ぶっ」と吹き出す。それが呼び水になったのか、あちらこちらからさざ波のようにこらえきれなくなったのだろう笑い声が漏れ始める。
「なんか楽しい事あったのか?」
「ね〜?楽しそうだね〜」
まさか自分たちの言動のせいとは思ってもみないアルゴス君の不思議そうな、マルケス君の楽しそうな物言いに、とうとう大人たちは大きな笑い声を発てた。「なんだか楽しそう」とばかりに釣られたちびもふブラザーズも明るい笑顔を浮かべていた。