廊下にて 1
私の腕の中に飛び込んで来たちびもふブラザーズを抱き留めると、「迎えに来るから、良い子で飯食えよ」と言い置いて、始祖様はきびすをかえしていた。後ろ姿に会釈をした後で自分も皆さんの方へと向きを変えた。
「うっわ〜。美じ〜ん」
「綺麗〜。凄いね〜」
真ん丸にお目々を開いてポカンと口を開いたアルゴス君とマルケス君は、感嘆と共にアレスさんを見つめている。
だよね〜。アレスさんは超絶美人だもん。
「うん。凄すぎる。本当にちん〇んついてんの?」
「ついてても綺麗なんだから良いよ〜」
興奮してマシンガンのようにまくし立てるちびもふブラザーズを遮る者は居ない。というか出来ないのだろう。かくいう私も、あまりにも嬉しそうに楽しそうにしている二人を止めるタイミングを逃しまくっている。
それにしても、これくらいの子供達は世界も身分も性別も関係なく、「う〇こ、ちん〇ん、〇っぱい」が好きなんだなと、脱力感を覚えてしまう。それと同時に、口ではしゃぐだけで初対面の人間のそれをモミモミしないだけマシなのかとも思ってしまう。
「そうだな〜。あ!!ママ!!アレスの隣りに立って?」
「「え?」」
アルゴス君のキラキラお目々のおねだり攻撃に、アレスさんと私の困惑の声が重なった。そんな私たちを救う形になったのは、マルケス君の言葉だった。
「ダメだよ。アルゴス。ママとアレスがお隣りさんになったらキラキラしすぎて、僕たちのお目々がつぶれちゃうよ〜」
ちょ!?もしかして私はアレスさんと同列の美人なの!?うそ〜!?
救われたのか、新たなる問題発言なのかはもうわからない。先ほどの会談で、私が他人から見て、「美女」と言われる部類の人間なのは理解した。そう言われてみると、初対面の人間が顔を赤らめたり、ぼうっとしていた理由も、「水無月 楓が美人だから見惚れていたから」なのだろうと考えつく。理解はしたが、納得はしていない。
や!!だって!!キラキラお姫様みたいなアレスさんと同列って!?お目々潰れちゃうって!?
「そっか。いっぱいだとすっごい綺麗になると思ったけどそれやだな。あ!!ちびもふのアルゴスです」
「ちびもふのマルケスです」
「「二人合わせて、ちびもふブラザーズです!!」」
混乱する私を置いて、アルゴス君とマルケス君は「ちびもふブラザーズ」としての自己紹介をした。
よっぽど気に入ったんだね。「ちびもふブラザーズ」って言い方。
「ふふ〜」と鼻歌まじりにどこか誇らしげに告げたちびもふブラザーズの尻尾は、ちぎれんばかりに振られている。
「ふふ。アレスです。アルゴス様、マルケス様、よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
優しく微笑んで挨拶するアレスさんに、子供達は眩しそうにしながらもきちんとご挨拶した。場の流れを読んだランティスさんがアレスさんに続いた。
「アルゴス様、マルケス様、私はランティスと申します。こちらは弟のマンティスです」
「よろしくお願いします。マンティスです」
「「わ!!兄弟?おんなじだね。よろしくお願いします」」