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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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森の賢者 4

「それでね、お願いを二回続けて言って、二回とも良いよって言われないとダメなの。そうしないと帰れないの」

 「聞いて聞いて」とばかりにマルケス君が言う。おそらく彼は、王様の言った「説明しなさい」を守ろうとしているのだろう。

「俺達にはママが二回聞いてくれただろ?」

 アルゴス君も言うが、彼の場合はどちらかというと、「俺も居るぞ〜」とアピールしたいだけのような気がする。

「一回だけではダメなんですか?」

「「ダメ〜」」

 始祖様に聞いた私に、彼が答えてくれるより早く二人が言う。言った後に「そうだよね?」とばかりに始祖様を見つめる姿はものすごく可愛い。

 可愛い過ぎて奇声を上げたらどうしてくれるの!!

 王様達が居る中で、醜態は晒せないと必死で我慢するのだが、可愛い二人の可愛い仕種がこれ以降も連発すれば、私の努力は呆気なく水の泡と化すに違いない。

「初代の奴がモテない奴だったから、ノリと勢いだけで返事されて、相手が正気づいて罵られたら困るって事じゃねーの?」

 始祖様は「だからモテね〜んだよ」と身も蓋も無い言葉で毒づく。

 つまり、こちらに渡る事への了承を二度貰わなければ無効となるわけだ。確かに一度だけでは気の迷いという可能性も捨て切れないだろう。情熱的に愛を語られて熱にうかされた状態なら一度聞かれたくらいなら誰でも簡単に返事をしてしまいそうだ。

 術者が世界を渡り連れて来た相手に「気持ちが冷めたから帰る」と言われて果たして帰す事が可能なのか、いや、不可能だからこその二回の了承を得る必要があるのか・・・・。

「なぁなぁ、ミーナちゃんは、ちび達になんて言ったの?」

 始祖様に問われた私は、考えを中断して答える。

「家族になってくれる?だったかと・・・・」

「俺達、ちゃんと覚えてるぞ!!ママは最初に、ねぇ、私の家族になってくれる?って言ったんだ!!なっ?マルケス!!」

「うん!!そうだよ!!ママは二回目に、私と家族になってくれるの?って聞いてくれたの!!」

 あやふやだった私の記憶を嬉しそうに得意そうに二人が補足してくれる。そんなにはっきりと記憶出来るほどに嬉しかったのかと思うと温かい感情と共に照れ臭さも沸き上がる。

「へぇ〜。それ、俺にも言ってくんない?」

 感動に浸る私にニヤニヤしながら始祖様が言う。

「俺達のママだって言ってんだろっ!?もう、じーじは帰れ!!」

「そうだよ〜!!ママは言っちゃダメだよ!?」

 両手でテーブルをバンバン叩きながら始祖様を威嚇するアルゴス君と、「絶対言っちゃダメだからね」と言外に目で私に訴えてくるマルケス君。

 も〜ぅ、二人とも!!可愛い〜!!可愛い〜!!可愛いっ!!可愛い過ぎる〜っ!!

「待て待て。ちび達はどうやって答えたんだ?喋れなかったんだろ?」

「一回目は鳴いた!!」

「はーい!!って言いたかったけど、お話出来なかったから、いっぱい鳴いたの。それで、二回目はチカイのクチヅケをしたの」

 いなしながら二人に質問する始祖様に、威嚇していた事も忘れたようにケロッとして答えるアルゴス君に続き、そこまで切り替えが早くないのか上目つかいで始祖様を見遣りながら答えるマルケス君。

「か〜っ!!良いな〜っ!!ミーナちゃんみてーな綺麗なお姉ちゃんとチューなんて羨ましすぎんだろ〜!!」

 バシバシと膝を叩きながら喜ぶ始祖様を、顔を真っ赤に染めた王様が諌める。

「待てっ!!接吻は神聖な物であって、軽々しく成される物では・・・・」

「バッカ。おめー、召喚の儀式のちゅーは十分神聖だろーが!!つか、なに照れてんだよ。ガ〜キ」

 王様の顔はまるで飲酒後の私のように見事に真っ赤っ赤だ。

 王様、意外と純情なんだな〜。

「ん〜で、ちびっ子!!なんでママがそんなに欲しかったんだ?もうママが居るんだから話せんだろ?」

 王様をからかう事に飽きたのか、からかう事が気の毒な程の赤面に武士の情けをかけたのか、始祖様は子供達に話しかける。私は後者とみた。

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