新たな官僚 1
もちろん、気絶出来るわけもなく、パニックに固まっている私に、再び天の声が響いた。
「皆、席に着け。エリゴスはミーナを降ろしてやれ。シュリはミーナから離れて座れ」
「はい」
「……はい」
納得いかないが、王様の指示だから仕方ないと言いたげにシュリさんは斜め向かいに座り、私は知らない男性に挟まれる形でエリゴスさんに椅子へと下ろして貰った。彼女から休み無く送られてくる熱い視線は痛い程だ。嫌われるよりは嬉しいが、こうもあからさまに「貴女が好きです」と成人女性から好意を寄せられた事が無かった為に混乱も一入だ。シュリさんからさりげなく視線を外し、辺りを見れば、私も含めて着席しているのは十名、女性は彼女と自分だけだった。
侍女さんにより手際良くお茶をいれてもらい、王様が口をつけたのを見てからこんがらがっている思考を落ち着ける為に自分も一口飲んだ。
あ〜。生き返った気がする。日本茶じゃなくても熱いお茶は落ち着く〜。
フォレストで出されるのはハーブティーか紅茶で、コーヒーや緑茶などはまだ飲んだ事が無い。飲んだお茶も、茶葉じたいは見た事が無いので、味で判断しているが、もしかすると私の知っているハーブティーや紅茶ではない可能性もある。続けて飲んでいると、荒れていた思考も少しづつ落ち着いていったように感じる。そんな私を見越したかのようにディーバさんが口を開いた。
「今、ここに居るのは私の直属で動いてもらっています。それでは、自己紹介をお願いします」
すっと音も無く立ち上がったのは、茶色の瞳で同じく茶色の長髪をそのまま背に垂らした細身の男性だった。
「マンティスと申します。ランティスは兄です。よろしくお願いします」
短く言って頭を下げたマンティスさんが着席する前に慌ただしく立ち上がったのは、ルッツォさんやソルゴスさんに勝るとも劣らない筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な、焦げ茶色の瞳で同じ色の髪を短く刈り上げた男性だった。
「弟のマンティスから名の上がった、兄のランティスです。弟は口下手ですが、自分は違います。兄弟共々、フォレストの為に尽くします。よろしくお願いします」
ニカッと音が聞こえてきそうなランティスさんは白い歯を煌めかせて笑った。
ヤバイ。体育会系にしか見えない。エリゴスさんもそうだけど、間違えてませんか!?
本人に聞かれたら、正座で説教されそうな失礼な事を思っていると、女性としか思えない美貌の絵本のお姫様のような人が立ち上がった。白く抜けるような肌、緩くウェーブする金髪、睫毛も長く、その下からのぞく瞳も見事な金色だった。
綺麗……。
見惚れているその人から零れる声は男性のものだったが、完璧な美貌のせいで本当に男性かと疑ってしまうほどだ。
「私はアレスと申します。若輩者ではありますが、フォレストを思う気持ちは誰にも負けないと自負しております。よろしくお願いします」
アレスさんが頭を下げると、さらりと髪も流れる。
本当に綺麗な人だな〜。ちびもふブラザーズが対面したら、照れちゃうかもしれないな〜。