使者団到着 6
エリゴスさんは呆然としている私を心配してか、歩調を緩めてくれる。
「ああ。だから私は、嫌がるそぶりを見せない飛竜と戯れる、アルゴス様とマルケス様の姿に驚いた。ミーナは味見させているし」
味見。味見か〜。
エリゴスさんの表現に苦笑いを浮かべてしまう。確かに、イールとイースに、「俺達の匂いは最強のお守りになる」とベロンとなめられた。それを言っているのだろう。
「ご心配かけました」
エリゴスさんの驚きはもっともだろう。ディーバさんとの会話を聞いていたかいないかは別にして、人には心を許さない獰猛だと言われている生物の鼻先に引っ付く子供達を見たら、食べられてしまうのではないかと心配して当然だ。しかも保護者たる私も一緒になって笑っているのだ。何を暢気にしているのだと叫びだしたかったかもしれない。だが、自分が叫んで飛竜が子供達を丸呑みにしたらと考えて、迂闊な行動は取れなくて、さぞや慌てたことだろう。
「別に!!ミーナを心配したわけではない!!」
言って、ぷいっと横を向くエリゴスさんの耳は真っ赤だ。反らされた顔も林檎のようになっているに違いない。
ツンデレ大王様は健在だ〜。
それにしても、飲み比べしてからエリゴスさんの私に対する態度は随分と柔らかくなった。子供達のおまけでしかなくその他大勢としか見られていなかったのが、胡散臭い人間に変化し、今ではよく話すし、喜怒哀楽もはっきり表す。随分な変化に自分がエリゴスさんに認められた気がして、どこか擽ったい。
「それにしても、随分と懐いたようだな」
「はい。リオさんを通してお互いに自己紹介しあって、飛竜の名前はイールとイースと言うんですが、私とアルゴス君とマルケス君を乗せて飛んでくれると言ってもらいました」
どこか呆れたような感じで言うエリゴスさんに答えると、彼は目を丸くして勢いよく振り向いた。
「名前を飛竜自身から聞いたのか!?」
「はい。最初はリオさんから聞きましたが、じゃれている時にイールとイースから聞きました」
「はい。って!!飛行の確約もか!?飛竜が!?」
「はい」
興奮し、目を見開いたままに質問を重ねるエリゴスさんは正直怖い。
「参った。ミーナは本当に規格外なんだな」
何度か首を力無く左右に振って、吐き出された言葉は私に聞かせようとしていなかったのかもしれない。
「……これから、こちらの首脳陣と使者団との顔見せを兼ねた昼食に入る。もちろん、着いた今は部屋で軽く寛いでもらうのだがな」
気分を変える為か、今後について教えてくれた。エリゴスさんの言葉の中に気になる単語があった為、気を許してくれているような今なら邪険にされないだろうと口を開いた。
「質問よろしいでしょうか?」
「うん?なんだ?」 嫌がるそぶりが無い為、ホッとして口を開いた。
「ありがとうございます。顔見せと言う事ですが、こういう言い方は失礼かもしれませんが、私以外に初対面となる方々がいらっしゃるのでしょうか?」
軽く頷いてさらりと告げられた言葉は、思っても見ないものたちだった。