使者団到着 4
飛竜達から従者と思しき人達により荷物も下ろされたのを見て、リオさんの腕の中ですっかりくつろいでいるちびもふブラザーズに声をかける。
「始祖様のところに行こう?」
子供達の部屋で待ってる始祖様とこれから二人は一日私を待つ事になる。私の言葉に弾かれたように顔を上げた子供達の焦るような表情に悪い予感を覚えた。楽しい事が大好きで、思いがけない出会いに感激しているちびもふブラザーズは、「ここに残る」と言い出しそうな気がする。
「俺達、リオ兄達と待ってる!!」
「うん!!良い子にしてるから大丈夫!!」
やっぱり〜!!
「絶対、離れないもんね」とばかりに、抱かれているリオさんの腕に精一杯、爪を立てて引きはがされまいと頑張っている子供達に目線を合わせると、視線を反らしたいけど反らせないようで、微妙に瞳が揺れた。
「始祖様はお約束してるアルゴス君とマルケス君を待ってるんじゃないの?」
「「あ!!」」
真ん丸お目々で小さく声を上げたちびもふブラザーズの視線が、私、リオさんら飛竜兄弟、地面をうろつく。視線の合った飛竜兄弟はただ見つめ返すのみ。
「でも、リオ兄達はずっと一緒じゃないし……」
「うん。だから……」
泣きだしそうに震える声でアルゴス君とマルケス君はそれでも声を絞りだす。
「アルゴス君とマルケス君は、先に遊ぶお約束してたのに、やっぱりや〜めたって言われて、二人が知らない他の誰かとお約束してた人が遊んでても平気かな?」
「「やだっ」」
間髪入れずに答えたちびもふブラザーズはリオさんの腕から降り、私の胸に飛び込んできた。顔を胸に埋めた子供達がくぐもった声で聞いてくる。
「ママ、どうすれば良い?」
「お約束してたのはじ〜じだけど、リオ兄達と遊びたい」
泣き顔を見られたくないのか、二人は胸に寄ったままで打開策を求めてくる。私も泣かせたいわけでは無いので、素直に答えた。
「聞いてみたらどうかな?」
「「聞くの?」」
私の言葉に子供達は不思議そうな声を上げた。
「ん。今はアルゴス君とマルケス君の希望だけで、始祖様にもリオさん達にもなんにも聞いてなくない?」
「「ん。聞いてない」」
少しだけ顔をずらして上目遣いで私を見るアルゴス君とマルケス君の被毛は涙でぐしゃぐしゃだった。笑顔を浮かべて二人に言う。
「だから、皆に聞くの。始祖様には飛竜三兄弟と遊びたいけど良い?って」
「分かった。リオ兄たちには、じ〜じも一緒に遊んで良い?って聞けば良いんだな?」
「でも……、ダメって言われたら泣いちゃうよ」
アルゴス君は力強く頷いて、マルケス君は負の思考に視線を下に落とす。そんな子供達にイールとイースが鳴き声を上げる。
「「グルァ〜ル!!ルルグルァ」」
「大丈夫!!ちびもふ、泣かない、俺達、遊ぶ、言った」
「「うわ〜ん!!リオ兄、イール〜、イース〜」」 再び、私の腕から飛び出したちびもふブラザーズは勢いよくイールとイースの鼻先にしがみつき、おいおいと泣き出した。慰めようとしたのか口を開こうとした二頭は互いの顔に張り付く子供達に視線をやった後、じっとリオさんを見つめた。小さく頷いてリオさんが口を開く。
「ちびもふ、俺達、遊ぶ、大丈夫。じ〜じ、聞け」
リオさんの言葉を噛み締めたちびもふブラザーズは、泣き濡れたままで笑顔を浮かべて何度も何度も無言で頷いていた。