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もふもふの王国  作者: 佐乃 透子
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運命の出会い 1

 ほのぼのファンタジーを目指してます。


 ちびっこ達の会話は読み易さ重視で、漢字変換しています。

「大丈夫?」

スーツ姿のおじ様三人は異口同音に聞いて下さる。

そんなおじ様方を尻目に、同僚の佐々木さんはこちらの様子を静観している。

彼は居ないものとして、私は力無く街灯に体を預けたまま、こちらを案じてくれるおじ様達ににっこりと微笑んでみせた。

「申し訳ありません。家人に迎えを頼みましたので……」

「ああ、無理をしないで。君はお酒が飲めないと佐々木君にも言われていたのに無理を通したのはこちらなんだ。本当に申し訳ない」

「いいえ。皆様との楽しい時間に羽目を外したのは私です。どうか、頭を……」

「水無月君」

素面だと自身で確実に吹き出すだろう芝居がかった私の言葉に、酒が入っているせいか感動したそぶりを見せるおじ様達。

「どうか皆様、佐々木と続きを楽しんでいただけますか?」

「ああ、水無月君、本当に今日は本当にありがとう。君さえよければ、明後日にでも契約書を持ってきてくれるかい?」

「醜態をさらしましたのはこちらです。お気遣いさせたなら……」

視線を合わせたまま言いかけた私の言葉を遮るようにおじ様達は口々に言う。

「いや、無理を圧してくれた水無月君の心遣いに感謝している」

「今日は無理せず、休むんだよ?」

「水無月君。今度はお酒を薦めないから、また来てくれるかい?」

心配そうな声の中に、次回を望む言葉がある事に私は微笑む。

「私でよろしければ、ぜひ……」

「やぁ!!嬉しいね!!水無月君、また!!」

「皆様、ありがとうございます」

頭を下げる私に上機嫌でおじ様達は次の店へと歩を進め始めた。案内する佐々木さんがさりげなく振り向き、私に「やったな」とニヤリと悪戯が成功したように笑ってみせた。私もニヤリと微笑みかえした。

完全におじ様達の姿が見えなくなると、私は街灯から身を起こし、大きく延びをして、しっかりとした足取りで歩き出した。

そう、私は下戸では無い。それどころか、酒はいくら飲んでも美味しく頂ける、ザルを通り越したワクだ。

配属された営業課の入社歓迎会の時、宴もたけなわ、周りが潰れていく中、社内一の酒飲みと言われていた課長と同じペースで飲みまくり、尚且つ、次の日に皆が二日酔いで青ざめている中、ケロリと出社して、社員を仰天させた。

酒を飲む事事態は平気な私だが、顔色は真っ赤に変わる。そりゃもう、完熟トマト並に真っ赤っ赤だ。以前は恥ずかしくて仕方なかったそれを、営業の武器にしろと提言してくれたのは課長だ。

課長曰く、「男と言う生き物は酒の席で、水無月みたいな綺麗なお姉ちゃんに酌をしてもらうと嬉しくなってしまうと同時に、本能のままに暴走もしがちだ。

だからこそ、「最初から酒に弱いと吹聴し、それでもとスケベ心を抱いて接待の席を要求してくる男から契約をもぎ取れ!!」との言葉に、自分の美醜に関してはイマイチ理解できなかったが、他のそれには大いに納得した私は、営業課は勿論、全社員にお願いし、「水無月は下戸である」を公言してもらい、着々とお得意様を増やしている。

「あ~、お酒美味しかったな~。銘柄、聞いとけば良かった~」

悔しさに呟くと、どこからか「みゅー、みゅー」という幼い動物の鳴き声が耳に飛び込んでくる。

爬虫類も含め、動物が好きな私は声の主を探すと、雑草だらけの空き地に、二つの毛玉が居た。

真っ白な毛玉ちゃんと金色な毛玉ちゃん!!

毛皮の色がゴージャスなので、夜目にもはっきりと確認しやすい。真っ白の毛玉ちゃんはもしかすると銀色かもしれない。

長毛種らしき毛玉ちゃん達に犬かな?と当たりを付けながら、ペット可マンションで良かったとしみじみ思う。

「おいでおいで~。怖くないよ~」

毛玉ちゃんを怖がらせないようにしゃがみこみ、あちらから近づいて匂いを確認して貰う為に手をのばし、留める。

ソロソロと近づいて、フンフンと匂いを確認した毛玉ちゃん達は、私の膝に前足をかけ、ちぎれんばかりに尻尾を振っている。真っ白に思えた毛玉ちゃんはやはり銀色の被毛だった。

金銀のゴージャス毛玉ちゃんを捨てる馬鹿者は誰だ!!あぁ、でも、馬鹿者のおかげで出会えたのか。このワンコな毛玉ちゃん達と私は暮らしたい!!

はやる心のままに、毛玉ちゃん達に問いかける。

「ねぇ、私の家族になってくれる?」

きゃんきゃんとお返事しながら、ぴょんぴょん跳ね上がる毛玉ちゃん達を膝に抱え上げる。

「私と家族になってくれるの?」

もう一度問いかけた私の唇を興奮したように毛玉ちゃん達が舐めまくる。

あれ?と思った瞬間、私は立ちくらみに襲われた……。



                     

□■□■□■□■□■□




「モフモフだ~」

頬にあたる毛皮の感触に嬉しくなり、つい両手を動かした。

「は、恥ずかしいから、そんなにお手々動かさないで~」

 言葉通り、本当に恥ずかしそうなか細い子供の声が聞こえた。

「え~!?俺、ナデナデ嬉しい~」

「え!?」

新たな子供の声が聞こえた瞬間、反射的に起き上がった。が、寝ていれば良かったと後悔した。何故なら、私が居たのは、屋外の、木々が鬱蒼と茂る森の中だったからだ。 接待を終え、帰宅中に出会った毛玉ちゃん達をナンパしていたハズで、ハイキングやドライブに出かけた覚えは無い。

「どこ?ここ?」

「「ママの森~」」

えらく嬉しそうな二人の子供の声に、頭上に輝く月と星を眺めつつ聞いてみる。

「どこのママ?」

「「僕らの~」」

「ママはどこに居るの?」

「「ここ~」」

ドスッと臑に衝撃を感じ、視線を下に落とした瞬間、私は今度こそ意識を手放した。

「「わ~!?ママ~!!」」

子供達の焦る声が聞こえた気がした。



・・・・私は毛玉を産んだ覚えは無い・・・・

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