原材料にあるその他とは一体何だ?
前作から一ヶ月以上経ちました。長いブランクの果てにこれかい。
「つまりそういう事だ」男はそう言った。
「まて」おれはそう言わざるを得なかった。
「そういう事とはどういうことだ?」
「タイトルを読め。そういう事だ」
「待てよ。タイトルとは何だ。お前何を言っている」
「メタロジックだ。文字で構成されたこの物語世界の外側にある世界の論理をこちらに導入している」
「恐るべし魔術師。別の世界の論理を使って何か企んでいるのか」
「お前のほうこそ何を言っている。我はまだ何もしていないぞ」
「おお、そうだった。だがそういう事だとはどういうことだ」おれは話の軌道修正を試みた。
「うむ。どう考えても、記入されたその他によってその食品の胡散臭さが集約されてしまい、購買意欲が著しく低下すると思わないか、刑事さん」
「ま、まあそうなんだが。原材料が記載されているエリアが狭すぎて書き切れない苦肉の策なんだろうさ」
「そう好意的に考えてくれる人間ばかりでないのがこの世の中だろう。敢えて判っていながら揚げ足を取ろうとする天邪鬼も結構いるのが世間というものだ」
「モンスタークレーマーですか、あなたは」
「人をいたぶって喜ぶ気質の人間もいる。愚かな博愛主義者にはそれがわからない。公権を特権と勘違いして威張る愚かな公僕も多いからな」
「おれは違うぞ。真面目な警官だ」
「組織は腐っていても中にはいい人間もいる、とかいう愚かなロジックがさらに組織を腐らせる。自浄できない無力な善意など何の意味がある」
痛いところだ。全くその通りだ。組織を腐らせている人間をどうにかしなければ結局組織はどうにもならない。
で、この話の落とし所は何だ?
おれはなぜこの男を追っていたんだ?何の犯罪行為を犯したんだっけ?
「つまりそういう事なのだよ、刑事さん」
「だから、そういう事とは何だ?」
「つまり、原材料記載されているその他とは何だ?ということだ」
このあと三時間この会話が続いた。
で、結局おれ達は別れた。
この話にオチはない。あるのは筆記者がこのタイトルでなにか書いてみたかったという意欲だけだ。
これで幕引き。
オチはいらない。いるのは作者の描きたいという意欲のみ。
苦しい言い訳しか出てこない自分が悲しい。スランプは嫌ですね。