Part1
改めて・・・
文藝部寄稿二作品目です。
生まれて初めて書いた恋愛小説です。
テーマは『凛』。
ここから細かい修正を加えて行く予定なので、意見・感想があればよろしくお願いします。
「で、またお前はひとりなのか?」
「うるせぇ、バカ。黙って相手しろよ」
「黙って相手をする。・・・ふむ、随分難しいことを言うんだな」
「言葉の綾だよ」
投げやりな言葉を返して、グラスを傾ける。琥珀色の液体の中に浮かぶ氷が、涼やかな音を鳴らして転がる。
アルコールがのどの奥を滑りこみ、胃に到達し――――、俺は溜息をついた。
「だから、俺の店で溜息つくなって。他の客までげんなりするだろ」
「いいじゃねえか。どうせ俺以外誰もいないだろ?」
「たまたまだよ。普段は超満員なんだぜ。120分待ちとか」
「遊園地のアトラクションかよ」
「大体客の多いバーなんてムードが無いだろ。ひっそりとした隠れ家的な店。そういうのにあこがれて、俺はこの店を開いたんだから」
「まぁ、生計立てられてんなら何も言うことないんだけどな」
とたんに黙りこみ、グラスを磨きだした。どうやら隠れ家的な店、というのは言い訳らしい。そもそも今のご時世にバー、なんてものが流行るわけがないのだ。よっぽどのハードボイルド気取りしか利用しないだろう。
――――俺はコイツの幼馴染だから来てやってるだけだ。別にバーで酒を飲む、という一枚絵に憧れている訳じゃない。
「お前、今日は同窓会だって言ってたよな。俺は出席できなかったんだが・・・、どうだったか」
「別に、何もないよ。あんなの、昔っから仲良くて学園生活を充実してる奴と、そうじゃない奴の差を広
げる儀式みたいなもんだろ」
「ひねくれてるなぁ。さすがひねくれの世良と呼ばれただけあるな」
「呼ばれたことねぇよ」
「俺が今呼んだ」
「あぁ、そう」
「言葉の綾だ」
どうやら自分も言ってみたかったようだ。
「そういう邦近だってこなかったじゃねぇか。お前だって面倒臭かったんだろ」
「俺は仕事だ」
むっとした口調でグラスを磨く手を止める邦近。
そんなに俺と一緒にされるのが嫌なのか。友人として少しさびしい。
とはいえ、某会社で営業をやってる俺に対して、幼いころからの夢であるバーのマスターという夢をかなえた邦近とでは、自分の仕事に対する情熱がそもそも違うのだろう。