2話 屋台の主人の心意気と職業斡旋所
●神楽 結城視点
大聖堂を出て、大通りを進む。
スポーン地点である大聖堂は、王都の中心にあり白を基調とした建物だ。
その光景は現代社会に生きる人々には癒しと感動を与える場所だと思う。
「そこのあんた!寄ってかないか!」
屋台から声がかかる。
通りには屋台があり、NPCが商売をしている。
「いらっしゃい!うちは焼き鳥を売ってるんだがどうだい?」
確かにうまそうだ。
このゲームはきちんと味覚や嗅覚などの五感を再現していることも見どころの一つ。
「...買いたいのはやまやまなんだが、あいにく金がないんだ...」
「お、なら一本サービスだ!」
「いいのか!」
屋台の主人の計らいに咄嗟に声を上げてしまった。
「あったり前よ!
次来たときはたくさん買ってくれればいいのよ!」
その心意気に感動し、一本焼き鳥をもらう。
口に入れた途端、炭の風味と適度な塩味が広がる。
噛めば噛むほど肉汁があふれ、気づけば串はなくなっていた。
「...うますぎて感動した...」
「そうだろ!そうだろ!
ぜひまた来てくれよ!」
その言葉がこの世界に来てよかったと思わせてくれた。
「ああ!また食べにくるよ!」
主人の屋台を名残惜しみながらも、通りを進む。
スポーン地点であるこの周辺一帯はゲーム進行に必要な施設が多く存在する。
その中でも今から行くのは”職業斡旋所”だ。
職業斡旋所とは、その名の通り職業に就くために行く情報収集場所だ。
職業はこのゲームに大きな役割を持っている。
経験値や報酬を得るには、クエストを受注する必要があるが主に”職業クエスト”と”種族クエスト”の二つが存在する。
『職業クエスト』
職業ごとに発行されるクエスト。
【騎士】教会に所属する騎士。転職には改宗が必要。
【冒険者】冒険者協会に所属する。転職に必要な資格はなし。
【薬剤師】薬事協会に所属する。転職に必要な資格なし。
このように転職するとそれぞれの団体に所属し、クエストをうけて経験値や報酬をもらう。
経験値はレベルを上げ、報酬では金銭や鉱物、薬物などがもらえる。
中には、団体に所属する必要のない職業もある。
このように職業につくことは大きな意義が存在する。
『種族クエスト』
職業クエストとは違い、最初に選んだ種族によって発生するクエストである。
大きな影響を与える事象。
例えば、”国土防衛”。
これは王国政府より発行されるクエストだ。
人間の領域である国土を守るため、あらゆる手段を行使せよ。
それがこの種族クエストだ。
種族クエスト自体は、過去に複数回出されている。
”国土防衛”。”疫病の蔓延を阻止せよ”。
現在出されている種族クエストは、”中央大陸を探索せよ”
このクエストは、いまだ未踏破になっている地図を埋めること。
人間が存在するこの中央大陸には”ノグドラ王国”が存在する。
この大陸はいまだに未踏破地域が7割存在し、王国政府はその地図の空白を埋めたいと考えている。
そのため、クエストによって探索を推奨しているのだ。
『中央大陸を探索せよ』
王国南部に位置するノグドラ王国政府は大陸をわが物にしたいと考えている。
王国の民よ。あらゆる情報、素材を持ち帰れ。
さすれば栄誉と報酬を与えよう。
中央大陸は広大だ。
南部にあるこの国は大陸の内部へ何度も足を踏み入れ、そして痛いしっぺ返しを食らっている。
巨大なモンスターや未知の疫病だ。
しかし、その成果は膨大だ。
魔石の鉱床の発見。ダンジョンの発見。新種のモンスターの発見。
様々な発見は王国、ひいては人間の大きな発展をもたらした。
その発展を維持するべく、王国政府は更なる情報を求めている。
そのような背景から、種族クエストは達成するごとに膨大な報酬、栄誉、経験値が獲得可能なのだ。
しかし、達には多くの時間や労力がかかるためまずは職業に就くことを優先しようと思う。
職業斡旋所は通りの一角にある。
建物自体は木造で優雅なつくりだ。
中には多くの人がおり、皆職業探しの情報を集める者たちだ。
「いらっしゃいませ!本日はどのような要件でしょうか?」
受付の女性が声をかけてくる。
「職業につきたくて、情報をもらいに来ました。」
「わかりました。
現在転職可能な職業はいくつかございますがどれにいたしましょうか?」
ウィンドウに表示される職業は膨大な数だ。
生産系や戦闘系、聖職者や回復士、医師や調理など様々だ。
面白いのが役人や軍人もあるということ。
どれも国家所属ではあるが、昇進すれば国家権力に座ることになり国家の運営をプレイヤーが行うことも可能なのだ。
これはこのゲームの特殊な一面だと言える。
しかし、あくまで国王が存在する以上独裁的な国家運営は難しい。
推測だが”種族クエスト”をプレイヤーが任意で発令することができるのではないか?と疑っている。
まさにフロンティアオンライン。自由度は無限大だ。
「...なら冒険者の情報をお願いします!」
「わかりました。冒険者とは冒険者協会に所属する方たちを総称しているものです。
ダンジョンへの優先的挑戦権を持ち、関税や税金に対する一定の免除を持ちます。
身分はの冒険者協会が保証いたしますでのどのような場合においても身分の低い扱いはされません。
ただ、貢献度というシステムが存在し、その値を上げていく、または維持することが求められます。
貢献度によってはランクの上昇。特権の付与。クランの設立許可など、様々な恩恵にあやかることができます。
このように、未知への探求や力への欲求が冒険者という職業の本質であると言えます。」
冒険者という職業は未踏破区域に赴くには最適の職業だ。
僕はこのゲームを始める前からこの職業に憧れを抱いていた。
「冒険者になるにはどうすればよろしいでしょうか?」
「はい、この通りの一角に冒険者協会がございます。
そこで加入手続きを行ってください。」
すると、ウィンドウに矢印が表示される。
どうやらこの矢印が案内役のようだ。
「良きゲームライフを!」




