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ゴミとして捨てられた聖女、魔王と手を組み王国に復讐する  作者: ふりっぷ


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10/12

緊急作戦会議 ― 闇の女王への対策

闇の女王の帰還を受け、緊急会議へ。

浄化は通じない。ではどうするのか。

三つの対策が提示されます。

中層の回廊は、張りつめた空気に満ちていた。


ノリスの出現は、完全に想定外だった。

その存在感だけで、浄化された魔物たちは震え、

膝を折りかけている。


――古い支配の残滓。


欲望構造の奥深くに根を張った恐怖が、

まだ消えきっていない証拠だった。


ヒマリは密かに浄化の光を魔王に送ったが

光は届く前にかき消された。


(全然ダメだ)


ヒマリは歯を食いしばり、フェルマーに視線を送る。


フェルマーは即座に察し、結界石を操作した。

淡い光が広がり、小規模な遮断結界が展開される。


「撤退よ! 全員、下層へ!」


ヒマリの号令と同時に、魔物たちが一斉に後退を始めた。


ノリスは腕に膨大な魔力を込めると

力任せに結界を殴りつけた。


ドガァァン。


結界こそ破れなかったものの振動で

壁面一帯にヒビが入り、魔術師の足元が崩れた。


「ゴリラ女め、何でも力で解決できると思うな!」

ヒマリ逃げたことを確認し、フェルマーは悪態を付く。


「誰がゴリラよ。ジギスムントに怒られないよう

 これでも手加減してるんだから」


ノリスはフェルマーの引き攣った顔を見て

くすくすと楽しげに笑った。


「逃げるの? いいわよ、聖女。

 また遊びに来てあげる」


黒い霧が彼女の身体を包み、

次の瞬間には上層へと溶けるように消えていた。



最下層――仮作戦室。


扉が閉ざされ、結界が幾重にも張られる。

魔物たちは警戒態勢のまま配置につき、

フェルマーはすぐに記録水晶を展開した。


空中に、ノリスの魔力残滓データが浮かび上がる。


ヒマリは椅子に座るなり、テーブルに突っ伏した。


「……最悪。あの人、強すぎる」


しばらくして顔を上げ、ぽつりと続ける。


「私の浄化、まったく効く気配なかった」


フェルマーは水晶から目を離さず、淡々と言った。


「当然だ。ノリスは魔王だ。

 欲望構造が複雑すぎる」


投影されたデータが変化する。

絡み合ったグラフが、異様な密度で重なっていた。


「支配欲、快楽欲、承認欲、退屈回避。

 すべてが高水準で混在している。

 君の光で上書きするには、完全解析が必要だ」


ヒマリは顔をしかめる。


「……今の私じゃ無理、ってこと?」


「その通りだ」


即答だった。


「今の段階で無理に触れれば、反発を起こし

 魔王城と繋がっている君が逆に支配される」


ヒマリはフェルマーを睨んだ。


「じゃあ、あなたがやりなさいよ。

 召喚の天才なんでしょ? 弱点くらい知ってるはず」


フェルマーはぴたりと動きを止め、ゆっくり顔を上げた。


「……私を、あれと戦わせる気か?」


「え?」


あまりに真顔で言われて、ヒマリは一瞬固まる。


「見た目は妖艶だが、魔力出力は完全に物理寄りだ。

 あれは知性派ではない。高出力ゴリ押し型だ」


「あんな美女を見て、あなたの価値観どうなってるの!?」


フェルマーは腕を組み、鼻を鳴らした。


緊張が少しだけほどける。


「でも確かに、圧はすごかった」


「私は研究者だ。前線要員ではない」

フェルマーはきっぱり言い切る。


「直撃を食らったら一撃で蒸発する未来しか見えん」


ヒマリは笑いながら肩をすくめた。


「意外とビビりなのね、

 ねぇ、私のことはどう見えているの?」


ヒマリの何かを期待している視線に

咳払いをひとつして、フェルマーは話を戻す。


「本題だ。ノリス対策は三つある」


空中に、新たな図が展開される。

複雑に絡み合った欲望構造のチャート。


「第一。直接浄化は諦めろ。

 君の光は、彼女の闇に拒絶される」


ヒマリは黙って頷く。


「第二。ジギスムント王を利用する」


その名に、ヒマリの眉が動いた。


「ノリスは現在、王に接近している。

 婚姻を匂わせ、興味と退屈しのぎを満たしている段階だ」


フェルマーは淡々と続ける。


「彼女の欲望の核は退屈回避。

 王との関係を揺さぶれば、判断が鈍る」


ヒマリの目がわずかに輝く。


「……王を裏切らせる?

 それとも、ノリスに捨てさせる?」


「どちらでもいい。結果的に亀裂が入れば十分だ」


そして、フェルマーは指を一本立てた。


「第三。城の魔力循環を完全に君の光へ置換する」


ヒマリは息をのむ。


「ノリスは言っていた。この城は自分の体の一部だと。

 ならば、循環を奪えば戦力は大幅に落ちる」


一拍置いて、低く続ける。


「ただし、危険だ。

 先ほども言ったが、君の負担が大きい。


 最悪、すべての魔物の支配権は無くなり

 君は配下に食い殺される」


ヒマリの顔は一気に蒼白になり、しばらく考え込んだ。


「……一番効きそうなのは、三つ目だよね」


視線を上げる。


「フェルマー、あなたがブレーキ役でしょ?

 一緒にやって」


フェルマーは深くため息をついた。


「私が今の地位を築いたのは

 常に保険を掛けてきたからだ」


そして、指を立てる。


「条件がある。

 次にノリスが来ても、私は前線には出ない」


「えーっ」


「基本は第二案でいく。きっとノリスは君を恋敵と思って

 潰しにきたのだ」


ヒマリはくすっと笑った。


「そんな馬鹿なことないでしょ。

 憎しみしかないんだけど」


「そうだ、その調子でノリスの誤解を解いてやれ」


「ガチで?」


「私は大真面目だ」


周囲の魔物たちは、第三案が無くなり、

ほっとしたように息をつく。


フェルマーが嫌いなゴブリンたちは、

「主、がんばれ」と小声で囁いた。


こうして、緊急作戦会議は深夜まで続いた。


闇の女王ノリスへの対抗策は、まだ輪郭を得たばかりだ。


一方その頃――

ジギスムントはロンデル公国をついに手中に収めようとしていた。


白銀の髪が光を反射し、

その整いすぎた横顔になびく。


「ロンデル公国の治安維持は今後、王都が行う。

 残兵は王都第四軍として接収する」


彼の前にロンデルの王族たちが膝を付く。

女王の歯ぎしりを前に酷薄な笑みを浮かべた。


ノリスが城を離れたことも。

フェルマーが、すでに敵側にいることも眼中にない。


誰もが、自分だけは正しい場所にいると信じて。

分断の歯車は、静かに、確実に回り始めていた。

お読みいただきありがとうございます。

支配か、分断か、最適化か。

それぞれの思惑が交差していきます。

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