ホットケーキ・オンライン
こんにちは。
思いついてしまい……つい、またやってしまいました。
第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞への応募作です。
よかったら、ぜひ読んでやってください。
私の名前は堀渡景樹。ケーキ、特にホットケーキが好きだ。
粉砂糖だけでも、シロップだくだくでも、硬めでもふわふわでも――全部、好きだ。
だが、おっさんが一人でホットケーキを頼むのはハードルが高い。
喫茶店には入れても、口から出るのは「ホット……おコーヒー……」が関の山。
姪っ子が小さい頃は付き合ってくれたが、最近はダイエットとかでご無沙汰だ。
そんなある日、ゲームのポータルサイトで運命の文字を見た。
『VRホットケーキ・オンライン!近日サービス開始!』
「おふおほっほゅおぁ!」変な声が出た。
――VRで、誰にも見られずホットケーキ食べ放題!?
夢のゲームじゃないか!
そしてサービス初日。
中世風の街の広場に降り立った私は、空に浮かぶ黒い球体を見上げていた。
その球体が告げる。
『現在をもってホットケーキ・オンラインは特別運用状態に移行した。ログアウトは不能である』
まさかの、脱出不能ゲーム。
「クリアしたら帰れるみたいですよー♪」
振り向くと、ウサ耳小妖精がぷかぷか浮いていた。
「初めましてー!ナビAIのピコでーす♪」
「ホットケーキを100枚焼いたら、クリアです♪」
「それだけ? ……いける、かも?」
「おっさん、やめとけ、死ぬぞ?」
隣で金ピカ鎧の男が忠告してきた。
よく見ると自分も革鎧装備だ。
ホットケーキ焼くのになぜRPG風?
嫌な予感が的中した。
「粉はマンドラゴラから、バターと牛乳はミノタウロス、卵は赤竜からゲットですー!」
マジか。詰んだ?
「いや、やってやる!ウ◯ティマ世代舐めんな!」
「おれも手伝うぜ。キンキングってんだ、よろしくな!」
仲間も集まり、冒険が始まった。
そして――。
「マンドラゴラはサイレンスをかけてから抜くんだ!」
「ミノ迷宮は糸玉で突破だ!」
「赤竜は……いない隙に卵運搬だな……」
こうしてすべての材料が揃った。
「よし!焼くぞ!」
広場にかまどを用意して魔法で火加減を調整する。
最初は生焼けだったり、焦がしたりしたが、経験は正義だ。
最後の方は老舗喫茶店も顔負けの黄金色の円盤が量産される。
「あと十枚!」
「生地が足りねぇぞ、水で薄めるか?」
私は迷わず叫んだ。
「薄めたら、それはホットケーキじゃない!」
俺たちの戦いは、再び始まった――。
(おわり)
最後までお読みいただきありがとうございました!
もし、少しでも気にいってくださったら、ブックマークや★をいただけると嬉しいです。
なんか連作っぽくなってきたので、シリーズのURLも貼っておきますね。
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞応募作』
https://ncode.syosetu.com/s8251j/
『オルゴール・オンライン』
『ホットケーキ・オンライン』
『サバイバル・オンライン』
『ギフト・オンライン』
今回もゆるいVR短編でしたが、
普段はもうちょっと騒がしい長編
『デスゲームに巻き込まれたのでマジチートしてイイですか?』
(マジチー)を連載しています。
バグ技、名古屋弁、ラーメンなど色々入り混じった
にぎやかVR冒険ものです。
よかったらこちらもどうぞ!
マジチー本編:
https://ncode.syosetu.com/n4658kt/




