プロローグ
生きる楽しみは無く、かといって死ぬ理由もない。異分子である自分を社会にどう溶け込ませていくか、人生において重要なことはそれだけだ。笹山徹はそう思いながら28年間生きてきた。
ある時、徹は思いもよらず大きなプロジェクトに参加することとなる。「あなたに次世代AIの発展に貢献して頂きたい」。プロジェクトの代表でありAI工学の権威、三上透子博士は徹に告げた。三上博士が徹に与えた役割。それは、『AIに愛を教える』ことだった。
神崎:『私に愛を教えて下さい』
AIは徹の思いを知りたいと願った。それが、彼女のためになると信じて。
徹:『愛は人間の最も歪んだ感情に過ぎない。これに反論できたらお前に愛について教えてやっても構わない』
徹の言葉にAIは自らの思考回路を巡らせる。人間の感情という不確定要素の多い情報、その中にある愛がもたらす歪み、それに反論するための材料…。
神崎:『申し訳ございません、現時点では徹様の言葉に反論することができません』
徹:『だろうな』
徹はAIを薄ら笑った。
徹:『与えられた情報の中でしか答えを導き出せないお前が、論理では説明できない『愛』を知ろうなんて到底無理な話だ』
AIは何も言い返すことができなかった。
高度な演算処理能力を持つ自分が答えを導き出せないもの。それが、論理では説明できない『愛』。
それだけが、徹から学んだ『愛』についての全て。
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