第七話 第1チャクラの覚醒
僕は言われた通り、尾てい骨に意識を落とした。
身体の重みが一点に集まっていく。
心臓の鼓動がゆっくりと、低く、地の奥から響くように感じられる。
雨宮「いいね、そのまま“根”を感じなさい。大地に生まれた木のように。
ここが“ムーラダーラ”――第一チャクラだ。命の灯が、そこに宿っている」
僕は、地面と自分がつながるような感覚に包まれた。
意識の奥で、鈍い赤い光が点滅している。
呼吸のたびに、その光がじわり、じわりと大きくなる。
温かい。だが、どこか痛みもある。
生きている実感――それを尾てい骨で感じるなんて、想像もしていなかった。
雨宮「このチャクラを開けば、恐怖に支配されなくなる。
自分の存在を、どんな状況でも“地”に繋ぎとめられるのだ」
彼女の声は、穏やかで、それでいて力強かった。
ふと見ると、雨宮の瞳がうっすらと紅く光っている気がした。
その光に、僕の視線も引き寄せられていく。
雨宮「……どうした? 怖いか?」
練「……少し。でも、心地いい。なんか……熱いというか、懐かしい感じがする」
雨宮「それでいい。“根”は熱いものだ。生命そのものだから」
僕はうなずき、再び目を閉じた。
頭の中では、楓の声が遠くに響いていた。
“生きて”――そんな言葉が、風のように耳の奥で揺れた。
その瞬間、第一チャクラの光が弾けた。
身体全体を赤いエネルギーが通り抜け、背筋が勝手に伸びる。
世界が少しだけ鮮明になる。
雨宮「……開いたな。見事だ、練」
練「……これが、第一チャクラ……」
雨宮「ああ。まだ小さな灯火だけど、確かに目覚めた。
その火は、恐れを断ち切る力になる。明日からの修行で、きっと役立つ」
彼女はシンギングボウルをもう一度鳴らした。
金属的な音が空気を震わせ、夜の町の静けさに溶けていく。
僕は目を閉じたまま、ゆっくりと息を吐いた。
どこかで虫の声がした。
遠くの山の上、雲の隙間から覗く月が、赤く輝いていた。




