第六話 チャクラ・エーテル・格闘技②
僕と雨宮は町に着き、宿をとった。
飲食店に赴き、そこで夕食を取る事にした。
「食事もヨーガにおいては大切な事だ。生活習慣を正して、チャクラを整えておけば、バトルに優位になる。これを供物と言うんだ。」
「供物?」
「生活になんらかの制約を付ける事だ。制約の数が多ければ多いほど、難易度が高ければ高いほど、効力がある。私は大好きな肉を食べない、と言う供物をささげている――まあ、私はとっくに引退してるから特に供物をささげる必要はないのだがね」
雨宮は豆のスープを啜りながら少し寂しそうな表情を浮かべた。
供物――か。日常生活で制約を設けるとしたら、僕は何を禁止するだろうか。
僕と雨宮は宿に戻った。
「さあ、瞑想の時間だ。このマットにあぐらをかいて座りなさい」
僕は言われるままにマットに座った。
「背筋をピンと伸ばして。息を吸ったらお腹を膨らませて。吐いたら凹ませる。これを繰り返す」
僕はゆっくりと、確実に瞑想に集中し始めていた。
チーンと音が鳴った。雨宮がシンギングボウルを鳴らしたのだ。
「集中を切らさずに――」
僕は再び呼吸に意識を向けていった。
すると、瞼の裏に映像が見え出した。
楓が僕の方をじっと見ていた。泣き出しそうな顔で、続いて母と父の顔が見えた。二人とも泣きそうな顔をしている。
僕はハッとして目を開いた――
滝の様な汗が噴き出して来た。
「何が見えた?」
「父さんと母さんと、付き合ってた彼女が見えて――みんな泣きそうな顔をしていて――」
「ふむ、アストラル的な観念を受け取ったんだろうな。まあテレパシーみたいなもんだ。続けれそうかね?」
「はい」
「よし、次は第一チャクラに意識を集中するんだ。尾てい骨を意識して――お尻の穴をきゅっと締めながら――」