第四話 七宗派
「アールヤ界では七宗派と呼ばれる、七つの大きな派閥があり、各々の思想に基づいて修行に勤しんでいる。まずは動禅宗と言う宗派の門を叩くといい」
雨宮と僕はその動禅宗へと向かう為に、山を越えている最中だった。雨宮は今日は気分がいいのか、妙に饒舌だった。
香草を吹かしながら雨宮は言う。
「何故動禅宗を最初にお勧めするかと言うと、体技心と言う言葉があってだな」
「心技体でしょ」
「そうなんだよ。でもその言葉は間違っていて、その順番だと、まず心があって、そこに技が宿って体が作られるって事になるだろう? そうじゃないんだ、まずは体作りがあって、そこに技が宿り、心が作られていく。私はそう考えるんだ。そして動禅宗は体作りにはうってつけの宗派なのだよ」
雨宮は妙な哲学を披露して少し誇らしげな顔をした。
「私は動禅宗に行く前に、夢走宗と言う宗派の門を叩いた。そこでの修行はひたすら寝る事だったので後で動禅宗に行った時は大変だったよ、運動不足だったから毎日ぜえぜえ言っていた。練は体力に自信はあるかい――?」
「まあ普通かな? 普通が僕の取柄だから」
「それなら大丈夫だ、私は戦闘センスも体力も全くなかったからな、動禅宗で心が折れた様なもんだ――」
「待ちな――」
急にガタイのいい男が現れて道を阻まれた。後ろにも数人の男たちが現れて僕らは挟まれてしまった。
「金目の物を置いていけ」
そういうとリーダーっぽい男は鉈を腰から取り出した。
僕は思わず青ざめたが雨宮はくっくっ、と笑っていた。
「ここがどういう世界かわかって来ただろう? はっきり言って我々の住んでいた日本よりはるかに治安は悪い。アールヤ界では人口の70%はヨーガの修行に励んでたり真面目に働いているが、修行がきつくてドロップアウトした者は、たいていこうしたごろつきになるんだ。日本でもよく見られる光景だよな――」
雨宮の余裕の表情を見てごろつきは何かを悟った様な表情をして叫んだ――
「ちっ、お前チャクラ使いか!」
雨宮は吸っていた香草を地面に投げ捨て足で踏みつぶした。
「下がっていなさい。チャクラの使い方を教えてあげよう」