第二話 審判の門
「ここは魂の中継所、別名、審判の門death」
エリザベスと言う女性はそう語った。
「人は死後、魂の波長に従って人間達が住む物質界とは別の世界に行くのdeath。あなた方が天国や地獄と呼んでる所deathね。」
「ちょっと待ってくれ」
僕は話すエリザベスを制した――
「僕が死んだって言うのか? こうして話も出来てるし、身体だってある。全然現実感がないんだが」
「あなたの魂が生前の姿を投射してるのdeath。どうしても信じれないのならこれを見ますか?」
エリザベスが指をパチンと鳴らすと、空間に映像が映し出された。
僕の葬式が行われている。家族と、楓が泣きじゃくっている。友達のシゲは必死に涙をこらえていた。
「かわいそうに。初めてのキスの直前に彼氏に脳梗塞で死なれるなんて――トラウマ物deathね。」
僕は叫んだ――。
「嘘だ!!」
「嘘じゃないdeath。ちなみにあなたは天国にも地獄にも行かないし、輪廻転生もしません。アールヤ界と言う世界へいってもらいます。そこは魂の修行の場death。あなたの身体の柔らかさと、元の世界への執着が適正となったのでしょうね」
僕は説明を求めて叫びだそうとしたが、声が出なかった。言葉を失ったからじゃない、物理的に声を出せなくなっていた。
「アールヤ界で修行を積めば、元の世界に帰る事が出来るでしょう。では幸運を祈ります」
彼女の指がはじけると周囲の霧が渦を巻き、身体が光に包まれていった。
練の姿が消え、一人霧の中にたたずむエリザベスは少し微笑を浮かべていた。
「まあ、地獄みたいな所deathけどね」
そうつぶやいた彼女は霧の中へと消えていった。
――焚火の音が聞こえる。
――草の匂いが、鼻をくすぐる。
ゆっくりと目を開けると紫がかった空があった。
「おはよう、転生者くん。死んで生き返った気分はどうだい? 頭が割れそうだろう」
声の主は金髪の女性で、全身黒のレオタードだった。
「私は雨宮カトリーヌ。君と同じで死んでここに、アールヤ界へ来た者だ。もう10年も前になるがね」