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第十話 エーテル体術

「今日の目的は一つ。エーテル体を“肉体の外で”動かすこと。

 身に纏ったエネルギーを、きっちり攻撃に変化させていく。

 エーテル拳を全身で出来る様にするんだ」


 雨宮は笑いながら言ったが、その瞳は冷たく光っていた。


 僕が構えた瞬間、彼女の姿が消える。

 顎に衝撃。世界が裏返る。

 地面に叩きつけられ、息が詰まる。


「見えた?」


「……全然見えない」


「感じるんだ。流れを掴むのだ。地と水の呼吸を――」


 呼吸に意識を向ける。

 赤と橙が蠢く。

 地の熱と水の流れが、拳に宿る。


 拳を突き出した瞬間、空気が弾けた。

 雨宮の手刀とぶつかり、赤い閃光が散る。


「ふふ……やるじゃないの」


 そう言って雨宮は笑った――そして、右手の指を額の前に構えた。


「エーテル拳の応用だ。中指の先にエーテルを集中させる」


 彼女の指先が光り、軽く弾かれた。


 ――デコピン。


 次の瞬間、視界が真っ白に染まる。

 世界が止まった。音が消えた。

 頬に衝撃が走り、意識が切れた。


 僕は地面に崩れ落ち、目の前で自分の血と――

 白く露出した脳を見た。


「……え」


 身体が動かない。心臓が止まる。

 意識の端で、楓の笑顔が浮かぶ。


 ――まだ、帰れてない。


 その瞬間、腹の底で爆発が起きた。

 エーテル体が暴走し、光が全身を包む。

 血と肉が光に吸い込まれていく。

 脳が、再生していく。


 息を吐いた瞬間、涙が溢れた。

 震えが止まらない。

 恐怖。圧倒的な、生の実感。


 雨宮がそっと近づき、膝をついた。


「第1チャクラに集中しろ……少しマシになる。

 これが“恐怖”だ。

 本当に死を見た者だけが、生を選べる。

 今の君は――本当の意味で、生きている」


 僕は地面に手をつき、震えながら笑った。


「……僕、生きたい」


「なら、立ちなさい。

 “生きたい”って言葉は、最初のマントラだ」


「マントラ?」


「まあ、呪文みたいなもんだな」


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