第一話 転生
僕の名前は山田 練。 テストは全て60点。体育は4の高校2年生だ。
自慢出来る事は人より少しだけ身体が柔らかい事と――彼女がいる事だ。
「練。かえろー」
花宮 楓と僕は下駄箱の所で待ち合わせをしていた。
付き合って3か月。誰かに聞いたが付き合ってから3か月間が一番楽しい時期らしい――
僕らは小学校の頃から知っていて、僕はまるで兄弟の様に思って接していたのだが。
楓の方はそうではなかったらしく、高校1年の時に告白された。
僕もそれから楓を意識し始めて、高校2年になって付き合う事になったのだ。
僕らはいつもの公園に着いていつものベンチに腰掛けた。
「ねえ、練。テスト何点だった?」
「60点だよ」
「あはっ、また60点。素敵」
楓は本当にうれしそうに笑った。
「ねえ、練。あれやってあれやって」
楓が言うと僕はいつもの様に自分の両足を首にひっかけて見せた。
「あははっ、可愛い~」
木々のざわめきや鳥の鳴き声が聞こえてくる。
夕暮れの中で世界は黄金色に輝いていた。
楓と付き合って僕の周りの世界はすごく美しいものに変わった――そんな気がした。
となりを見るとこの世で一番かわいい女の子が座っていた。黙って僕を見ている――
僕は目を反らして、楓と逆の方を向いた。
(これキスする流れじゃない?)
僕は再び、楓の方を向いた。一瞬別人が座っていると思った。
うるんだ瞳、眉間にしわを少し寄せて、唇をうるませた楓がそこにいた。
これが女の顔か、と思った瞬間、僕は彼女の肩を抱き寄せて、唇を近づけた。
その時―-
ずきんっ!
まるで脳の中をえぐられた様な痛みが走った――僕の目の前が真っ暗になっていく――
再び意識を取り戻した時、僕は真っ白な霧の中にいた。
空も地面もなく、ただ浮いている様な感覚がする――
「どこだよ…ここ。夢…?」
「ようこそ、魂の中継地へ」
声と共に一人の女性が霧の中から現れた――
銀髪の巻き髪に気品のあるロングドレス。額にエンマと書かれた札を付けていた。
「私はエリザベス、魂の案内人death。残念ながらあなたは脳梗塞で死にました。」