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彼氏にいきなり捨てられました。でもこんな事になっていたなんて。

作者: うずらの卵。

「本当にお兄ちゃんはそれで良いの?」

「あぁ、彼女には幸せになって欲しいから」

「解った、協力する」


私は23歳のOLの並子、彼氏の祐一も同じ年で三年の付き合いなの。

そろそろ結婚しても良いかなと思っていたんだけど、最近の祐一は冷たいんだ。

明日は土曜で祐一とデートの約束してるから、

確認の電話しようかな。

プルルル、ガチャ「もしもし、祐一明日はどうする?」

「あっ、ごめん明日は用事が出来た」

「えっ、そうなんだ、じゃ次はいつ会える?」

「忙しいから又連絡する」ガチャ

電話は空しく切られてしまった。

私は急に明日の予定が無くなってしまった。

翌朝、私は暇になったので一人で買い物に出掛けた。

晴れた日で町はカップルや家族連れで賑わっていた。祐一と良くデートで来る町だった。

そこで私は見てしまったのだ。

佑一が女と肩を並べて歩いているのを。

私は最近祐一の態度が冷たかったから、

もしかしてとは思っていたけど、まさか本当に女がいたなんて。

私は怒りに任せて二人に走り寄った。

「祐一、これはどういう事?用事ってこの事だったの?」と詰め寄ると祐一は私が来るのを解っていたかのように、「なーんだ並子か、悪いが俺三香子が好きなんだ別れよう」と言うのだ。三香子と呼ばれた女は祐一より年下っぽかった。

そして、三香子は祐一の腕に自分の腕を絡めて、「ごんんなさーい、そう言う事だから」と言い、二人は私に背中を向けて行ってしまったのだ。

私はショックだった。このまま結婚するのだと思っていたのに。何でよ…何でよ…。

そして、そのまま家に帰りベッドに入り泣きじゃくった。

何もする気になれず、暫く仕事も休み実家に帰ろうかと考えた。

東京に出て来て一人暮らしをし、祐一と出会い幸せだった暮らしが一気に崩れたのだ。

田舎には両親がいるし、実家に帰って暫く何も考えずに過ごしたいと思ったのだ。

そして、私は仕事を辞めて実家に帰る事にした。

その頃体調も余り良くなくて、精神的にも体力的にも辛かったのだ。

実家に帰ると両親は優しく迎えてくれた。

そして、実家で1ヶ月位ゆっくりしていた頃両親にお見合いを進められたのだ。

私はお見合いをする事にした。

相手は二十歳も年上だったが、とても紳士的で話はどんどん進んだ。

しかし、その人は東京の人で結婚したら東京に住まなくてはならなかった。

嫌な思い出のある東京だけど、私は新たな生活の為に東京で暮らす事を了承した。

数ヶ月後私は今の夫と結婚して、新生活をスタートさせた。

とても夫は優しくて、私は専業主婦をしてとても幸せだった。そしてその頃には私の体型に変化が現れていた。

そんなある日曜日夫と家でゆっくりしていると来客が合った。

チャイムが鳴ったので出てみると、そこには忘れもしない女が立っていたのだ。

祐一と一緒にいた三香子だったのだ。

私は嫌な思い出が頭に過り、「何ですか?」と冷たく言った。

三香子は以前の嫌な女の雰囲気は感じられず、

深々と頭を下げて「お久しぶりです、こちらにいらっしゃると実家のお母様に聞いて来ました」と言うのだ。

「何で母は教えたの?」と聞くと「友達だと嘘を言いました、申し訳御座いません」と言うのだ。

私は頭に来て「帰って」と怒鳴ると

夫が出て来て「大きな声を出してどうしたんだ」と聞いて来た。

私は「何でもないの」と言ったが、

三香子が「お願いです、一緒に来て下さい」と懇願して来たのだ。

夫は「何か訳があるみたいだね、私も一緒に行ってもいいかな?」と三香子に聞いた。

三香子は「有難う御座います、外に車が停めて有りますので車の中でお待ちしております」と言った。

私は渋々支度をして夫と共に三香子の車の後ろの座席に乗った。

そして車で30分位走って着いた所は総合病院の駐車場だった。

そして、三香子に連れられて三階の個室の前に着いた。

夫は「そこで待っているから」と言い廊下の椅子に腰を下ろした。

私は三香子に促され病室に入った。

そこには白衣を着た男性と、一度だけ会った事がある祐一の両親が居た。

そして、ベッドには痩せ細って精気のない祐一が寝ていたのだ。

私が呆然とその場に佇んでいると、

祐一の母親が話し掛けて来た。

「並子さんお久しぶりです、急にごめんなさいね、どうしても祐一に会って貰いたかったの」と言った。

「彼はどうしてしまったのですか?病気なのですか?、何故今更私を呼んだのですか?」と私は聞いた。

すると、今度は三香子が話し始めた。

「並子さん、実は私は祐一の妹なのです。兄は並子さんと将来結婚して幸せな家庭を作ると言っていました、でもある日体調を崩して病院に言ったのです。そこで兄は癌だと言われました。そしてもう手遅れだと」

私は頭の中が真っ白になった。

「そんな…私何も知らなくて」と呟くと

「兄は余命半年だと言われたのです、そして兄は私に言いました。このまま並子さんと付き合ったら並子さんを不幸にしてしまうと、だから私に彼女のふりをして欲しいと、自分が悪者になって別れると」

「そんな…私は祐一に振られて祐一を恨んでたのに」

「兄は並子さんを愛していたのです、だからこそ並子さんには自分の事を忘れて幸せになって欲しかったのです」

私は祐一の寝ているベッドの横に置いてある椅子に腰を下ろした。

そして、そっと祐一の痩せ細った手を握り締めた。

「祐一、祐一が苦しんでいたなんて知らなくて恨んでしまいごめんなさい」

すると、今まで目を閉じていた祐一の目が微かに震えて開いたのだ。

そして、視線をさ迷わせ私と視線が合った。

そして視線を下げて私のお腹を見ると、

微かに微笑んだのだ。

私はそっと祐一の手を自分のお腹に持って行った。すると祐一は消え入りそうな声で「あ…り…が…と…」と言い目を閉じた。

「祐一?祐一?」と私が名前を呼んでももう二度と祐一の目が開く事はなかった。

私はフラフラと立ち上がり病室を後にした。

廊下に出ると夫が私の側に来て、何も言わずそっとハンカチを差し出してくれた。


私が妊娠している事が解ったのは祐一に振られてからだった。

体調が優れないのは精神的な物だと思っていたが、実家に帰っても体調は優れず病院に行ったら妊娠している事が判明した。

最初は祐一の子供なんて産むもんかと思っていたけど、自分の中に宿った小さな命をこのまま絶つ事が出来なかった。

両親に相談したら両親はお見合いを進めて来た。

子供には父親が必要だと。

勿論お見合い相手には初めから妊娠している事を告げていた。

それでも今の夫は私とお見合いをして、

結婚してくれたのだ。

そして、東京で夫と新たな生活を始めた。

そこに三香子が訪ねて来たのだ。

まさか祐一とこんな形で再会する事になるなんて。


私はそのまま夫に支えられ廊下の椅子に腰を下ろして暫く泣いていた。

私が泣き止んだ頃、夫は「そろそろ帰ろうか」と言い私を支えて立たせてくれた。

そして、帰ろうと出口に向かって歩き始めた時、病室から三香子が出て来たのだ。

三香子は私に「今日は来てくれて有難う御座いました、もしかしてお腹の子供は…「この子は夫と私の子供です」」と私は三香子の言葉を途中で遮った。

そして、私と夫は出口に向かって歩き出した。

三香子は遠ざかって行く二人の背中を見つめ深々と頭を下げたのだった。







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