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龍の子らの饗宴  作者: 茎乃ハル
【第一章】龍鎮む華園 ――祝福の片隅で、龍の子らは眠らない――
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プロローグ

かつて要衝として栄えた海に浮かぶ古城。


血で領土を切り拓いていた時代、自らの一族が武力で奪い取った土地を守るために築いた城だ。

莫大な富を注ぎ込み、幾重もの城壁と海上要塞を備えたその威容は、かつて周辺諸侯を震え上がらせたという。


だが時代は流れた。


交易の中心は、より利便性に優れた港町へ移り、人も富も城を見捨てていった。

巨万の財を投じながら役目を失ったその城は、過ぎ去った栄華の残骸として、ひっそりと歴史の底へ沈みつつあった。


——そして今。

朽ちた城へ渡る唯一の大橋は、人の手によって崩落し、城は海の向こうに切り離されていた。


迷いはない。清々しさすらある。


それでも指先だけがわずかに震えていた。


蒼白い月光に照らされた古城を最後の砦とし、ここを動く気のない者たちは、損耗した身体をそのままに、海から迫るものを待ち受けていた。


静まり返った城壁には、沈黙だけが張り付いている。

声はない。

視線も交わらない。

ただ定められたように彼らは海の方を見つめ続けていた。


僕は、懐から二つの指輪を取り出す。

どこにでもある、何の変哲もない指輪だ。


握りしめると、腹の奥で熱が渦を巻く。

それなのに不思議なほど呼吸は静かで、意識は還るべき場所へと向かっていた。


「故郷の匂いだ」


そう呟き、人形の頭を撫でる。

額から頬へ。

指先はゆっくりとその輪郭を辿り、やがて離れた。



——青年はもう、海の彼方を見据えていた。

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