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第三話後編 魔王と遊ぶ男

こんばんは。後編です。

魔王に捕まったウィティア。

卑劣なる魔王にグレッドはどうするのか!


最終話、お楽しみください。

 四天王ルザールちゃんの部屋に現れた魔王ミンネスは、ウィティアちゃんの頭を鷲掴みにして、身体の前にぶら下げていた。


「ウィティアちゃん!」

「……わた、しは、いい、から……、逃げて……」


 女の子に何て事するんだ。

 俺は魔法を展開する。


「おっと、おかしな真似をするなよ。この女の頭を握り潰すぞ」

「……」


 俺は力を抜き、剣をだらりと下げた。


「くくく、それで良い。人間とは哀れな生き物だ。こうされただけで手も足も出なくなる」

「……成程、そうやってスペアル君やヒラールのおっさんの動きを止めたってわけか」

「その通り。部屋中に転移陣を敷いているのも知らず、土下座して命を乞う余に油断したこの女を捕らえた。後は簡単な事よ」

「ま、魔王様……?」


 え、マジか。

 振りとはいえ土下座で命乞いとか、魔王のする事じゃないだろ。

 ルザールちゃんドン引きじゃんか。

 だからこそ三人も不意を衝かれたんだろうけど。


「槍使いには自分の足を貫くように、僧侶には喉を潰すよう命じた。人質の命と自身の命なら天秤にかけるが、命と負傷なら負傷を選ぶ。それは敗北と同義なのだがな」


 確かに「死ね」と言われたら、死んだ後に人質が殺されると考えて抵抗される可能性が高い。

 だが怪我で命が助かるなら、そう思わせて戦力を削いだわけか。

 探知すると、弱ってはいるけど生命反応はある。

 とりあえず様子を見よう。


「治療に行きたいか? 行きたいだろう? 早くしないと死んでしまうかも知れんなぁ?」


 やはりミンネスは知恵が回る。

 あえて敵を生かし、選択肢を増やす事で行動を縛る術を心得ている。


「……俺に何をしろと?」

「物分かりが良いな。貴様は転移陣から国に戻り、全面降伏を命じろ。さすれば逆らわぬ限り命を保証しよう。もっとも奥の二人は、傷が元で死んでもその限りではないがな」


 成程ね。

 ある程度覇権を握ったとはいえ、未だ抵抗の残る魔界。

 そこで人間の国を落として兵力と生産力を確保し、魔界制覇に弾みをつけたいんだな。

 それで土下座からの騙し討ちまでして損耗を避け、魔界への侵攻に備える必要があるわけだ。


「悩んでいるのか? 急がねば仲間が死ぬぞ? 余が決断の一押しをくれてやろうか?」


 ミンネスが空いている手で拳を握る。

 えっ、おいまさか、やめろって。


「ふんっ!」


 止める間もなく、ミンネスの拳が腹に打ち込まれた。

 鈍い音が部屋に響いた。

 あ……。


「かはっ……!」


 崩れ落ちるミンネス。

 あー、腕折れてないといいけど。

 手加減してたみたいだし、大丈夫かな。


「な、何故人間がこれ程までに硬い……!? はっ、これは、ディアマンド・ゴーレム!?」

「え、わ、我がゴーレムが!? し、しかしそれはあそこに……!」


 はい正解。

 うろたえるミンネス君とルザールちゃんに、よくわかる解説ー。


「まず幻惑魔法で、あそこのディアマンド・ゴーレムの幻を作りまーす。次に本物のゴーレムを異空間に取り込んで、ウィティアちゃんと同じ大きさまで圧縮しまーす」

「は、え、何……? ディアマンドを、圧縮……?」


 きょとんとしてるルザールちゃん。

 幻を消したら納得するかなー。


「この通りこれは幻惑魔法で」

「はひゅん」

「あれ?」


 あ、気絶しちゃった。

 頼みの綱のゴーレムの消滅がそんなにショックだったかー。

 では続きはミンネス君に。


「次に空間魔法でウィティアちゃんとゴーレムを入れ替えると同時に、幻惑魔法でウィティアちゃんと誤認させまーす。これでできあがりー」

「う、嘘をつくな! そんな暇がいつあった!」

「そんなの君がこの部屋に入った瞬間に決まってるじゃん」

「……! あの魔法展開! あの瞬間に全てを同時に行ったというのか!?」

「そゆことー」

「……!」


 ミンネスが愕然としている間に、遠隔魔法でスペアル君とヒラールのおっさんを回復。

 動かれると困るので、追加の睡眠魔法でおやすみなさい。

 ウィティアちゃんも回復して異空間でぐっすりだし、これで何の心配もなくなった。


「さっきのゴーレムへの拳を見る限り、お前結構格闘もいけそうだな。さ、遊ぼうぜ!」

「な、舐めるな人間! 人質などなくても貴様如き捻り潰してくれるわ!」




 あー、楽しかったー!

 さてさて後始末しないとなー。


「おーい、起きろー」

「ひゃっ!? は、はれ!? ここは!?」


 気絶していたルザールちゃんを起こすと、きょろきょろと周りを見回す。

 そして壁際の魔王達を見て、悲鳴を上げた。


「きゃあ! ま、魔王様!? それにエジ! ポイゾ! 皆真っ白になって……! い、一体何が!?」

「……お、終わった、のか……? 撤退、命令、出したのに……、その後も延々……」

「もう嫌だ……、人形も、刃物も、見たくない……」

「ふへ、ふへへ……、何発矢を撃ったっけ……? 一万……? 二万……?」


 ミンネスだけじゃ物足りなかったので、捕まえてた四天王も出してみたけど、正解だったなー。

 ポイゾっていう毒使いが弓矢も得意だったのは嬉しい誤算だった。

 エジの人形がポイゾの弓矢を利用して、加速したり空中で方向転換する合体技を避けるの超楽しかった!


「さて、ルザールちゃんには、これから教える事をよーく覚えて実行してもらいまーす」

「は、はひ……」


 上機嫌な俺に、ルザールちゃんは何故か顔を引きつらせていた。




「う、うぅ……?」

「気が付いたか人間」

「!? あ、あなたはグレッドさんと戦っていた魔族!?」

「ルザールだ。この度は我らの王ミンネスが魔族にあるまじき行いをした。その事を詫びさせてもらう」

「は、え……?」


 ルザールちゃんの言葉に混乱した様子で、きょろきょろと周りを見回すウィティアちゃん。

 壁際で真っ白になっている魔王達を見てびくっとなる。


「あ、あれは……?」

「何、我が幻惑魔法で罰を与えただけだ。死んではいない」

「そ、そうですか……。どんな酷い幻を……?」


 ウィティアちゃんが身震いをする。

 ごめんね、俺がでっち上げた嘘なんだけど。


「軍にも撤退命令を出した。王は国を思うあまり今回のような愚行に出たが、魔族は本来誇りを重んじる。いずれ人間の国はもらうが、その際は正々堂々を約束しよう」

「わ、わかりました」

「それとこの男」


 浮遊魔法で軽くした俺の身体を、ルザールちゃんはウィティアちゃんの足元に投げる。


「グレッドさんっ!」

「我が幻惑魔法が効かない以外は並の剣士だったな。まぁ我が王の詫びとして回復しておいた。槍使いと僧侶も回復して連れて来る。目を覚ましたらく立ち去るが良い」

「……はい。ありがとうございます……」


 言い捨てるように告げると、つかつかと奥に向かうルザールちゃん。

 うん、上出来上出来。

 後は二人にも同じ口上を述べてもらえれば……。


「……グレッドさん。また一人で無茶したんだね……」


 あれ? ウィティアちゃん?

 思い詰めた顔してどうしたの?


「……」


 待って待って。

 そんな顔近づけたら……。


「う、うぅ……」

「!」


 俺のうめき声に、ばっと顔を離すウィティアちゃん。

 駄目だよー。気絶してる間に、なんてさー。


「う、あれ? ここは……? あ! ウィティアちゃん! 大丈夫!? 魔王は!?」

「え、いや、あの、そ、そう、グレッドさんと戦ったルザールっていう魔族が、魔王の卑怯なやり方に反抗して、あの、あんな感じに……」


 ウィティアちゃんが真っ白になった魔王を指差す。

 驚いた振りをしておこう。


「うぇ!? そ、そうなんだ……。何があったらあんな風に……。あ! 魔王軍は!?」

「それも撤退命令を出してくれたって……。次は正々堂々やらせてもらうからって……」

「……魔族にも誇りを大事にする奴がいるんだな……」

「……うん、そのお陰で助かったけど……」


 微妙な空気。

 そりゃ結果として国は守れたけど、英雄としての立場からしたら納得はいかないよなー。


「……ウィティアちゃん。あのミンネスって魔王、確かに王としてはどうかと思うけど、勝つために、国のために、形振り構わずやってたんだよな」

「う、うん」

「その視点で言えばさ、俺達の突入がミンネスを焦らせて、それがルザールの反抗を促して、結果軍が引いたんなら、それでいいんじゃないかな」

「……そうかな」


 お、ちょっと顔色明るくなったな。


「おい、槍使いと僧侶を連れてきた。さぁ国へ帰れ」


 お、ルザールちゃんに連れられて、狐につままれたようなスペアル君とヒラールのおっさんが戻ってきた。


「あ、ウィティア! グレッド君! 無事だったか! 良かった!」

「拙僧が不甲斐ないばかりにウィティア殿を恐ろしい目に遭わせてしまった! 済まぬ!」

「ううん、皆が無事ならそれでいいよ!」


 うん、これで全部丸く収まったなー。


「さぁ、戦争は回避した。国に帰ろう」

「あぁ!」

「うん!」

「そうですな!」

「……」


 後ろから伝わる、(これで良いんですよね!? 合ってますよね!?)っていうルザールちゃんの気配に、肩越しに手で小さく丸を作り、俺は皆と国に帰った。




 こうして魔王軍の侵攻は阻止され、三人の評価は更に高まった。

 その上、魔王との戦いで起きた事(俺の捏造)を三人が正直に話したため、魔族との国交を考える流れが国の中に生まれつつある。

 これは俺が英雄になって一人で解決していたら、あり得なかった成果だ。


「グレッド、お前はまあまあ強いけど、調子に乗って英雄になんかなっちゃ駄目よ?」


 お袋の言葉は正しかった。

 俺は英雄として目立つよりも、こういう方が性に合ってるみたいだ。

 力を隠しながら遊ぶのは面倒ではあるけど、やっぱり「ここは任せろ先に行け!」ってするのは楽しすぎる!

最後までお付き合い、ありがとうございます。


チートとか最強と謳っているのに、主人公が苦戦する話を時々見ては「最強とは(哲学)」と思っていたので、グレッドはデバッグモードレベルの強キャラにしてみました。


ゴリラ顔のハンター「えげつねぇな……」

変身ヒーロー「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」


はい。


ちなみに前回シリアス風に締めたので紹介できなかった四天王最後の痴女、もとい『死の招き手』ルザールは、敗者を意味するloserから。

ほんとごめん。二秒で決めてごめん。


知略企画参加作品と言いつつ、チートありきのお話でしたが、お楽しみいただけましたら幸いです。


最後に企画主の家紋 武範様。

拙作を世に出す機会を作っていただき、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] もう、本当に、さいっこうに面白かったです!!! 始終グレッド君の最強チートモードに信頼があり、面白おかしく笑っていられて。 そして最強モード持続しっぱなしにも関わらず、中だるみするというこ…
[良い点] タイトルのまんまですけど、一つ一つを主人公のグレッドが楽しんでいるのがよく分かって、楽しい気持ちで読めました。 面白かったです。 [気になる点] ウィティアちゃん、実際のところはどうだっ…
[良い点] 遂に完結! 最強設定に違和感なく、なぜ目立ちたくないのかが明確。でも戦いたい! 根っからの戦士だというのがいいですね。 知略を持って、仲間を遠ざけるところが面白かったです。 企画参加、あ…
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