第三話前編 魔王の幹部と遊びたい男
第三話です。
……思った以上に筆が暴れまして、前中後編となりました……。
まずは知略パートからお楽しみください。
魔族の長でありながら、魔族を含めた全ての生き物と世界を無に帰そうとした大魔王ニヒーリーム。
全世界が共闘し、お袋が討ち取って約三十年。
群雄割拠状態になっていた魔族をある程度統一し魔王を名乗ったミンネスは、英雄の不在を知り、人間の領土への侵攻を始めた。
デモンスライムを率いた幹部を送り込み、また竜の逆鱗騒動も、ミンネスの手の者が冒険者を言葉巧みに騙したものだった事が判明した。
そして今。
「これがミンネスの城につながる転移陣……」
俺はスペアル君達と共に、町外れにあった小屋の中にいた。
本当は魔王討伐なんて参加したくなかったけど、スペアル君から真剣に、ウィティアちゃんから涙目で、ヒラールのおっさんから熱く迫られたら断り切れなかった。
まぁ適当に幹部とでも遊ぶかー。
「この先に魔王ミンネスがいるのね……」
「今侵攻しているという魔王軍を止めるには、ここに乗り込んで魔王を倒すしかないわけですな!」
まぁ間違いなく罠なんだけどねー。
幹部は成果もなく討ち取られ、大暴れした竜も大した被害もなく沈静化され、その原因である三人の英雄を何としてでも消したいところだろう。
こんな廃屋の地下の転移陣が偶然見つかるなんて、子ども向けのお話じゃあるまいし、不自然すぎる。
発見者が誘導されたか、そもそもミンネスの手の者かのどちらかだろう。
「早く行こう! こうしている間にも魔族の大軍が迫っている!」
「魔王を倒しても、魔王軍が止まらなかったら意味ないもんね!」
「神よ! 我らにご加護を!」
そこで軍を動かして、深く考えたり対策を練る時間を与えない。
上手い手ではある。
これで英雄である三人を討ち取ってしまえば、士気の下がった人間の領土を切り取り放題というわけだ。
よしんば討ち取れなくても、手傷を負わせたり軍への対応が遅れたりさえすれば十分戦果を挙げられる。
「じゃあ俺がまず偵察に入る」
俺がいなければ、の話なんだけどねー。
「気をつけてくれ! 何かあったらすぐ助けに入る!」
「グレッドさんの安全を第一に考えてね!」
「回復はお任せを!」
「ありがとう。行ってくる」
こっそり音遮断魔法を使って転移陣をくぐると、無数の気配。
「げひゃひゃひゃ! 俺様は魔王軍四天王千刃のエジ! 我が百体の殺人人形に切り刻まれて」
「あ、ごめん。後でね」
「し」
痕跡を残さないように使った空間魔法は、小物っぽい喋りの魔族と百体の人形を綺麗さっぱり呑み込んだ。
魔王軍四天王っていうくらいだから、遊んだらそこそこ楽しめるとは思うけど、今は後ろにスペアル君達が待ってるからなー。
遊んでるところなんか見られたら、魔王討伐まで任されかねない。
後でこっそり遊ぼう。
あ、今のうちに罠も潰しておくかー。
目を凝らして壁を透かすと……、あるわあるわ。
刃を射出する装置が、ざっと八百かー。
百体の人形が両手に剣を持っていたから、合わせて千刃ね、成程。
って二つ名で罠のネタバレしてどうすんだよ。
魔法で発動するタイプだから解除しておいてっと。
音遮断魔法も解除して。
「敵はいなかった。罠ではないようだ。魔王は随分な粗忽者のようだな」
「魔王が転移陣を消し忘れる程度の者なら、付け入る隙はあるね! 一気に攻め込もう!」
「そんな馬鹿に私達の国を壊されてたまるもんですか!」
「愚かなる魔王よ! 正義と神の鉄槌を受けるが良い!」
ごめんね魔王。
万全の罠を敷いたつもりだったろうに、皆の中で君の評価はうっかりさんです。
とりあえず心の中で謝っといて、俺達は先に進む。
伏兵は感知する端から、空気操作魔法で窒息させて気絶させていく。
睡眠魔法と違って耐性持ちが少ないし、声を上げられないから楽なんだよね。
隠蔽魔法のかかった部屋や通路に隠れているから、倒れてもスペアル君達には見えないし。
楽すぎてちょっとつまらないけど。
「正面に扉が……!」
「今度こそ敵がいるかな!?」
「気を引き締めてかかりましょうぞ!」
うん、いたけど今いなくなった。
毒への強い耐性を生かして部屋を毒の霧で満たし、一方的にダメージを与えようとするタイプの敵だったから、部屋の毒ごと異空間に放り込んだ。
俺も毒耐性あるから、こいつとはあんまり遊べそうにないけど、一応保管しておこう。
「我ら魔王討伐隊! 覚悟し……、ろ……?」
「誰も、いない……?」
「……ここまで伏兵どころか守備兵もいないとは、本当に全軍で攻め入っているのか……? 何と愚かな……」
そう言ってやらないでヒラールのおっさん。
悪いのは俺なんだ。
「……おかしい……」
「スペアル? どうしたの?」
「人間の街で冒険者を騙して、竜を暴れさせるという策を考える魔王が、転移陣を消し忘れたり、守備も残さず全軍投入なんてするだろうか……?」
ぎくり。
やっぱりスペアル君は優秀だなー。
俺が手柄を押し付けなくても、いずれ英雄になる器だったんだー。
良かった良かった。
なんて安心してる場合じゃない。
あと一人残ってる幹部で上手い事誤魔化そう。
「また何もない廊下……。ここは本当に魔王の城なのか……?」
「転移陣自体が罠だったって事……?」
「確かに不自然であるな……」
あーもー! それは俺のせいじゃない!
魔王が幹部のいる部屋だけに行くように、また伏兵が気付かれないように、扉や通路に隠蔽魔法をかけてるだけなんだって!
でもここで魔法解除したら、あちこち調べて時間かかるよなぁ。
魔王軍と王国軍がぶつかる前に終わらせたいし、ここは一つ……。
「ん!? 何だ!? 禍々しい気配が、二つ……!?」
「私も感じた! やっぱりここに魔王と幹部がいるのね……!」
「拙僧もである! これまでのは油断させるための罠であったか……!」
「俺にはわからなかったが、三人が感じたなら間違いないな。魔王はここにいる!」
三人の知覚能力を強化して、敵の存在を認識させる。
あんまりやると、隠蔽魔法の気配や気絶してる魔物まで探知しちゃうし、脳が容量超えて頭ぱーぷーになっちゃうから、一瞬で切るのが大事。
「よし、行こう!」
「うん!」
「心得た!」
「……あぁ!」
あぁ危なかった。
次の幹部で俺が足止めを引き受けて、魔王を三人に倒してもらうように上手い事立ち回らないとなー。
読了ありがとうございます。
まるで無人の野を行くが如く……(直球)。
さて、今回うっかりさん認定されてしまった魔王ミンネスは、卑怯を表すmeannessから。
この後どんな卑劣な罠が待ち構えているのか……!
怖いなー。恐ろしいなー(棒)。
即退場させられた千刃のエジは、刃を表すedgeから。
自己紹介すらできなかった万毒のポイゾは、まんま毒のpoisonから。
この後出てくる魔族と、デモンスライムを率いてきた頭脳派魔族ブレエインで四天王になります。
「ブレエインがやられたようだな……」
「ククク……。奴は四天王の中でも最弱……」
「人間ごときに負けるとは魔族の面汚しよ……」
はい。
中編はお昼頃投稿予定です。
よろしくお願いいたします。