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根幹の火継 番外編  作者: ももんがー
6/10

晃とひな 1

今日から晃のお話です。

『根幹の火継』が終わったところからです。

五話完結です。

ジャンル:恋愛です!!

 新生活が始まった。


 おれは日村 晃。

 吉野に暮らす、高校生。になった。



 受験勉強に取り組んで入学試験を受けて、幼なじみのひなの奈良旅行(?)に付き合わされた。

 そのあと合格発表があってすぐ卒業式。

 卒業式の翌日からおれは京都の友達のところにずっといた。


 だからひなに会うのは卒業式以来。

 同じ高校に合格して、今日は入学式。

 朝。新しい制服を着て久木家が来るのを待っていた。


 車が庭に入ってきて、すぐにおじさんおばちゃんがじいちゃんばあちゃんに挨拶。

 おれも「おはよー」って挨拶して「晃。今日はおめでとう」なんて言ってもらった。


 ひなも後部座席から降りてきて――


「じいちゃんばあちゃん、おはよー」

「ひな。入学おめでとう」

「まあひな! よく似合ってるわ!」

「そう? ふふっ」



 ――固まった。



 そこには新しい制服を着たひなが立っていた。


 紺色のブレザー。胸ポケットには金色で校章が入れられている。

 暗い緑と紺色のチェックのスカートは、プリーツスカートっていうの? オシャレでかわいい。

 白いブラウスにエンジと暗い緑の斜め縞のリボンをつけて、黒いハイソックスにローファーを履いている。


 おれとお揃いの制服。

 それなのに、ひなが着ると、すごく大人っぽく見える。

 それに――かわいい。


 ひなは肩にかかるくらいのまっすぐな黒髪をひとつに束ねている。

 中学のときと同じ。

 それなのに、なんていうか……色っぽい。

 うなじが見えてるよひな。隠したほうがいいんじゃないかな?


 スラリとのびた足。

 ハイソックスだけど、素肌がちょっと見えてる。

 スカート、短いんじゃないの?

 ハイソックスじゃなくてタイツのほうがいいんじゃないの?

 むしろジャージのほうが……。


「? なに?」

 ひなに声をかけられて、ドキーッ!! とする。

 思わず飛び上がった。

 ひな、なんか、目がキラキラしてない?

 ていうか、全身キラキラしてない!?



 ドギマギしてるおれのことを気にすることなく、ひなの両親がおれ達を車に押し込み、入学式に連れて行ってくれた。


 一時間かからずについた。

「あ。こんなもんかー」と思った。


「ホントに月曜日から電車で行くの?」

 ひなの母親の真由おばちゃんが心配そうに聞いてくる。


「私か修が送り迎えするわよ?」


 京都の大学に進学していたひなの上の兄の修兄は、この春卒業して家に帰ってきた。

 代々家族で農業林業を営んでいる久木家だけど、昨年色々あって仕事にデジタルを導入し、色んなことにチャレンジしている。

 今は家族経営の形を会社の形にしようとしているらしい。

 だから兄ちゃんは一応、自分ちに『就職』した形になっている。


 兄ちゃんが増えた分、仕事はちょっと余裕ができそう。

 だからおれとひなの二人を送迎するのは問題ない。

 おばちゃんはそう言う。


 でもひなが遠慮した。


「公共交通機関のない場所ならいざ知らず。

 電車があるんだから、電車で行くわ」と。


「何回も乗り換えるの、大変じゃないの」

「そのくらい平気よ」

「チカンだって出るじゃない」

 チカン!? そんなの出るの!?

「晃がいるから大丈夫」


 絶対の信頼を込めて「ね」なんて微笑まれたら「やっぱり車で送ってもらおう」なんて言えなかった。

 ひながおれを頼りにしてくれるのがうれしくて誇らしくて「うん! 任せてよ!」なんて、つい、言ってしまった。



 中学までは一学年一クラスしかなかったのに、高校では何クラスもあってびっくりした。

 ラッキーなことにひなと同じクラス。

 ひなが一緒ならおれはどこでも大丈夫。

 近くの席の男子が声をかけてくれて、すぐに仲良くなった。

 ひなも女子と仲良く話をしてる。

 知らない人ばかりの学校生活なんて初めてでどうなることかと最初は心配だったけど、なんとかなりそうで安心した




 入学二日目。週明けの月曜日。

 駅まではおばちゃんが送ってくれることになった。

 丁度いい時間のバスがなかったから、そこはひなも甘えることに納得した。


 電車に乗るのなんて、おれ、人生二回目だ。

 中学一年生の春休みに京都に行った時以来。

 でもひながいるから大丈夫。

 ひなが「こっち」というのについていく。


 

 ひなはずっとおれの幼なじみでおれの面倒みてくれてて、おれのお姉さんとかお母さんみたいな存在だった。


 そんなひなに対する気持ちが変わったのは、中学三年生の修学旅行。


 ひながクラスメイトに告白された。

 それを見て、気がついた。

 ひなはずっとおれの側にいてくれると思ってた。

 でも、いつかひながおれから離れてしまうかもしれない。


 ひながおれの側にいない。

 そう考えただけで、とてつもなくイヤな気持ちになった。

 とてつもなくかなしくなった。


 ひなの側にいたい。

 ひなに側にいてもらいたい。


 恋とか愛とかはよくわかんないけど、ただ、ひなの側にいたいと思った。


 ひなはおれの太陽だから。

 ひながいれば、おれは大丈夫だから。


 京都の友達がそんなおれを見て「『半身』じゃないか」って言った。

 元々ひとつの塊だったのが二つに分かたれた存在。

 それが『半身』。


 それならいいなって思った。

『半身』なら、ずっと側にいられる。

 ひなの側にずっといられたら。

 そう願って、男として意識してもらえるようにイロイロしてみたけれど、結果は惨敗。


 ひなにとっておれは『手のかかる弟』でしかないらしい。



『弟でもいい』って思ってた。

 側にいられるならなんでもいいって思ってた。


 なのに。



 久しぶりに会ったひなは、きれいな女の人になっていた。



 たった数週間会わなかっただけなのに。

 話をしたら、今までのひなのままだって、変わりないってわかるのに。


 ひな、きれいになった。

 ひな、かわいくなった。


 側にいるだけでなんだかドキドキする。

 手をつなぎたくて、でも恥ずかしくて、こんなこと今まで考えたことなくて、ドキドキする。


 ひなの側にいたい。それは本当。変わらない。

 でも、ひなの側にいるとドキドキでおかしくなりそう。


 おれ、どうしたんだろう?



 ひなに言われるまま改札をくぐり電車に乗る。

 最初は座れたけれど、乗り換えた電車はもう人でいっぱいだった。

『チカンが出る』とおばちゃんの言葉が頭に浮かんで、すぐさま壁際にひなを押しやり腕で囲う。


「ひな、大丈夫?」

「うん。ありがと」

 ニコッと微笑むひな。

 その表情に、ドキッ! とする。


 今までと変わりないハズなのに。

 お礼を言われることも、ニコッてされることも今まで何回もあったのに!


 なんで今日はそんなにキラキラしてるの!?

 あんまりかわいくならないで!

 他の男がどこかからそんなかわいい顔見てるのかと思うと、なんかムカつく!


 おれひとりがあわあわオタオタしてる。

 そんなおれにひなは不思議そうにちょっと首をかしげるだけ。

 そんな仕草もかわいくて、もう、おれ、どうしちゃったの!?


 乗り換えの駅に着いた。

「行こ」

 ひなにうながされて動く。

 ホームに降りてホッとした。なんかつかれた。

「ん」

 ひなが手をのばしてくる。

 いつものようにその手をとろうと手をのばし、指先に触れた。


 ビリビリビリーッ!


 触れた指先から電流が走る!

 あわててバッと手を引っ込めたおれに、ひながびっくりしたように目を丸くした。


「……どうしたの?」

「な、なんでもない!」

「……そう? なら、いいけど……」


「行こ」と再びうながされ、あわててひなについて行く。


 なに今の。

 なんでこんなにドキドキしてるの?

 なんでこんな――。


 乗り換えた電車は二本目の電車よりもさらに混んでた。

 壁際にも行けない。

 電車の揺れでゆらゆらするけど、おれは平気。

 普段の修業がこんなところで役に立つとはなぁ。


 チカン対策でひなを腕で包み、持ってるカバンでお尻をガード。

「ひな、大丈夫?」

「うん。ありがと」

 おれの腕の中からひなが上目遣いでほほえむ。


 ズキューーーン!!


 な、な、な、なにそれ!

 かわいすぎるんだけど!!

 ちょっと待って。なんでひな今日はそんなにかわいいの!?

 いや入学式もかわいかったけど!

 春休みおれがいない間に何があったの!?

 そんなかわいくてこんなに人がたくさんいる電車に乗っちゃダメだろう!


 おれもひなも人混み対策のメガネをかけてる。

 精神系の能力者であるおれ達は、人混みに行くと人の思念を受信してくたびれてしまう。

 このメガネは、そういう思念とか視線とかを感じる能力を弱めてくれるらしい。

 メガネだからかわいいの!?

 このメガネ、そんな機能もついてたの!?


 触れたくても触れられなくて、見ていたいけど目が合うとあわてて視線をそらす。

 そんな挙動不審なことを一週間繰り返していた。


 おれ、どうしちゃったんだろう。

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