第8話〜アルコンスィエル〜
ルナ姫と死別した。
ルナはタイラーン城の謁見の間に安置され、お通夜が始まった。
民たちに深く愛されていたルナ姫の元には、一夜で何千人もの人が足を運び、亡骸をみて惜しんでいた。
そして、その一日だけは誰もがお店などを開けることのない静寂なタイラーン国であった。
それから10年。
カイは16歳で騎士団学校に入学し、鍛錬に励んでいた。
そこで1人の男に出会った。
名はカイル・ブラウン。
貴族ブラウン家であり、顔立ちは爽やかで、少し能天気な性格だが紳士的である。
自身に自覚はないが度々女の子に惚れられることが多く困ることがある。
恋愛は超のつく鈍感である。
「よぅ!俺の名はカイル・ブラウン、よろしくな!」
「あ、あぁーよろしく」
「名前なんと言うだい?」
「あっ、いや、あー、カイだ」
「おぅ、カイというのか!お前王子と同じ名前なんだな!」
「あ、それよく言われる」
「まぁ同期同士仲良くしようぜ」
それが始まりだった。
やはり能天気だ。
騎士団学校をまとめるのは騎士団団長であり、学長であるアルナスである。
アルナスは国王に一つの任務を与えられていた。
それは、タイラーン国の騎士団の成長である。
その命を受け、アルナスは7つの部隊を編成し、それぞれに特化した部隊として、成長させることを意気込んだ。
名はアルコンスィエルと名付けた。
戦場で最も戦いに優れなければならない
剣術部隊
守りを要とする
盾部隊
弓かつ、魔法より遠距離攻撃を要とする
弓部隊
騎馬で駆け抜ける
槍騎馬隊
スピード、奇襲を要とする部隊
隠密部隊
魔法を使い回復、援護を要とする
魔術部隊
知略を活かし、それぞれをまとめ上げる
軍師部隊
計7つの部隊構成がある。
アルナスはその7つの部隊をそれぞれ任せられる隊長を探して、しばらくタイラーン国を離れることとなった。
そして、ハイデル王の命により、騎士団学校の首席と次席を同行させることとなった。
その主席と次席はカイとカイルである。
「団長!この命は王様からなんですか?」
「そうだ、できればお前らを連れて行きたくはなかったのだが...」
「おい、カイ聞いたか?王命だぜ?」
「おい、静かにしろ」
「いくとなったからには仕方ない、しかと王命を受けいれよ」
「承知!!」
そして3人はタイラーンから旅に出た。
最初の目的地は、タイラーンより西にある、一度入れば二度と出てこれないとされている魔女の森。
森の入り口には小さな町があり、かつて魔女の一族が住んでいるとされていた。
魔女は悪い印象を持たれがちであり、人とは一段と違った力を持ち、恐れられた。
そんな一族の力を欲して、魔女狩りが現れた。
魔女狩りは、魔女の目や血を使い、魔女の力を得て、自分を覚醒していた。
そんな野蛮な連中がこの村を壊滅させたのである。
今回目的とする人物は、1人の少女だ。
かつて、アルナスの魔法を教えた師匠であり、ルナの病を和らげる薬を調合してもらっていた1人の老婆からの手紙が届いていたからである。
一度、壊滅した町は未だに薄暗く漂う悪気があった。
「あのー、ごめんください!」
「...」
この町の人々は、よそ者を警戒していた。
「一つ、お尋ね、」
「おい!」
町の人々はすぐさま窓を閉め、家の中へとこもっていった。
そして、マントを被った少し小柄の人がカイたちの方へと向かってきた。
「あのー」
「えっ!?」
「ひとつ聞いてもいいかな?」
「私から離れなさい!」
「ちょ、ちょと、まった!」
カイルに突きつけられたのは鋭く研ぎ澄まされた鎌であった。
「久しぶりだな、ミル」
「あぁ!おじさま」
「こんなに大きくなって」
アルナス団長が声をかけるとすぐさま謎のマントの子は鎌を下ろした。
「おじさま、お久しぶりです!」
「いつぶりだろ、もうずいぶんと経つな?」
「はい、ルナ様がお亡くなりになられてからおじさまったら全然顔出してくれませんでしたからね?」
「いやー、それはすまなかった。お師匠様はいらっしゃるかな?」
「...」
「体調が悪いとは伺っていたが...」
「はい、ご案内いたします」
謎の少女はミル・パティ。
魔女イルメイの孫である。
かつてイルメイはこの村の村長であったが、魔女狩りによって、家族や町の人々を殺され、森奥へと籠り、そこを誰も踏み入れないように術で結界を張って隠したのである。
そして3人は濃い霧掛かった森を案内され、小さな小屋へとたどり着いた。
「婆様、アルナス様がいらしたわー」
「あ、あ、るなす」
「お久しぶりです、イルメイ師匠」
「げん、きそうじゃな」
「おかげさまで元気でございます」
「て、がみは、とどいたじゃろ?」
「はい、お体がよくないと」
「そう、じゃ、だから、わし、の孫を...」
イルメイは咳がひどく、おそらく未知の病にかかっているに違いなかった。
先が長くないことも初対面のカイとカイルでさえわかった。
「わし、の孫を連れていっておくれ」
「私の元だと、戦いに巻き込まれます」
「それは、じゅ、ぶん承知、ミルのちからで、あれ、ばじゅ、ぶん役にたつじゃろ」
イルメイの咳は続く、そしてさらに咳は悪化していった。
「わし、はもうなごーない」
「何を仰るのです!私たちはイルメイ師匠を王都へ連れて行くためにここへ参ったのです」
「もぅ、まにあわん、それからもう十分いきた」
「...」
「だから、アルナスや、わしの孫を頼む」
「わかりました」
その話の直後である。
森が騒がしくなっていた。
イルメイの病気で結界が薄くなり、魔女狩りたちが結界を破って森に侵入したのである。
魔女族長:イルメイ
老婆
アルナス団長の師匠
現在は病気で体が弱っている。
ミル・パティ
魔女イルメイの孫。