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虹の末裔  作者: $ung
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第5話 〜姫の決意〜



「ミカ!しっかりしてくれ!おい!」


「...か、い、様」



タイラーン国の西の山にある神殿の湖で目が覚めたのは、幼き王子カイと騎士団長の娘ミカである。



2人が気を失ってどれくらいの時間が経ったのだろうか。

辺りはすっかり暗くなっていて、月の光で湖が反射し、丸で湖に月が沈んだかのようだった。



「ミカ、俺がわかるか?」


「はい、ここは?」


「俺たち神殿へきたんだけど、気を失ってたみたいだ」


「すごく、長い夢を見せられていたような気がしました」



「俺もだよ」


「すごく、悲しくて涙が出て、怖くて」


まだ幼いミカは体を震わせながら泣いている。

カイはそれ宥めながら周りの様子を探っていた。



「泣かないで、もう大丈夫だ!」


「ほんとう?」


「ほら!なにもない!」


ミカはカイを見てほっとしたかのように微笑んだ。


「それより怖いのが、お城の者たちだよ」


「...」


「おそらくすごい騒ぎになってないといいけど」




遠くから声が聞こえる。



松明を持った数名の大人が2人の名前を呼びながらさがしていた。


「アルナスじっさまの声だ!」


「父上!」


「アルナスじっさまーー!」




アルナスはすぐさまと駆けつけた。



「カイ様!お怪我はありませんか?」


「アルナスじっさま、ごめんなさい」


「大丈夫です、2人が無事で何よりです」



「...」


「ミカも無事でなによりだ」


「...」



ミカはすごく反省してる様子で、頭を下げたまま、アルナスに抱きかかえられた。

そして。アルナスに連れられ無事に城へ戻ると、怒鳴り声が上がった。



「カイ!!」


「!!ち、ちちうえ」


タイラーン国の11代国王ハイデル・R・タイラーン



「お前はまた!!」



「まぁまぁハイデル様、落ち着いてください、2人は無事です」


「アルナス!お前も甘いのだ!」


「いいえ、これも試練の一つです」


「...たく」


ハイデルはアルナスに言い負かされ、お部屋へと帰っていった。


「カイ様、今日は一段と大きな声で怒鳴られましたね?」


「じっさまがいないとこんなんじゃすみませんよ」


2人は笑いながら言った。

ミカはそれを見て笑った。



「カイ様、少しよろしいですか?」


「じっさま、どうされました?」


「ミカ、先に部屋へ行っててもらえるか?」


「はい、父上」



アルナスはミカを部屋へと帰し、カイを抱きかかえて城の見晴らしの良い場所へ行った。


「カイ様、私も散々昔は怒られて育てられました」


「アルナスじっさまも?」


「そうです、私も今の姫様にひろわれて王家で育ったので辛いこともたくさんありました」


「そうだったんですね、姫様はどんな方ですか?」


「もちろん、カイ様たちに優しく接しているそのままの人で、気品のあるお方ですよ」



「タイラーン国、随一の美女ですもんね」


「そうですね、私は幸せ者です」


「アルナスじっさまの昔話聞きたいな」


「わかりました、少しお話ししましょう」



2人は月を眺めながら、男同士の話が始まった。






 28年前のことである。



月明かりが眩い満月の夜だった。

血塗れの女性1人が城前に駆け込んできた。

腕にはまだ歩くことさえできない幼い赤ちゃんを抱きかかえて。

門兵がそれをみて彼女へと寄り添っていった。



「おい!!大丈夫か!」


「おっ、とが」


「!?」


「おっとがいるはずで、す」


「そう言えば、お前は同期のアルベルトの妻!」


「おねが、い、むすこ、を、」


子供を兵に託して、女性は息を引き取った。

そこに散歩に出ていた姫が騒ぎに気づき近寄ってきた。


「何の騒ぎです?」


「これは!姫!」


「説明してください」


「先程、女性1人がまだ幼い赤子を抱えて夫を探して門の前で倒れまして、もう息はありません」


「赤子は無事ですの?」


「はい!生きています!」


「その赤子を連れ来てください」


「あっ、はい!」


タイラーン国第一王女でまだ14歳の姫ルナは赤子を抱きかかえて言った。



「その人は、我が軍人の妻でしょ?」


「さようでございます」


「では対処はお分かりかと思います」


「はい!彼女の夫は我が軍の小隊長であり、先日、戦で戦死したもうようでございます」


「なんと残酷な」


「姫様!?」


「この子は私が引き取ります、我が国のために2人が死んだというのに、その罪は私にもあります」


「姫様!それはなりません!」


「おだまりなさい!」


「...」


「国王様には私がいいます」



次の日、姫は赤子を抱えて国王の部屋を訪ねた。



「父上!この者に生きる力をお与えください」


「ルナよ、そなたはまだ結婚もしていないではないか」


「これは私の宿命であるとおもいますの」


「わかった、そなたは一度言ったものは取り消さないからな」


そして赤子に名前が付けられた。


アルナス


王家ではないため名前だけで称された。


「アルナス、立派に育つのですよ」


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