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東京アラート

作者: りったん
掲載日:2020/05/31

 神田律子は派遣社員。


 緊急事態宣言は解除されたが、律子は相変わらず仕事に就けないでいる。


「あまり焦らないで。りったんが働かなければならない程、俺の稼ぎは悪くないからさ」


 夫の陽太は律子を慰めるために言ったのだが、


「私は働きたいの! 陽太だけに負担させるの、嫌だから!」


 ムッとした顔で反論され、


(しまった!)


 後悔した陽太だが、謝る間もなく、律子は愛娘の雪と風呂に入ってしまった。


(出てきたら、謝ろう。ギスギスするのは嫌だから)


 陽太はテレビドラマを観て、二人が風呂を出るのを待った。


 


「はっ!」


 陽太はいつの間にか寝ており、ダイニングキッチンは明かりも消されて、リヴィングルームも真っ暗になっていた。


「うわわ!」


 陽太は慌てて寝室へ走った。しかし、そこには律子の姿はなかった。


(雪の部屋?)


 陽太は娘の部屋に行った。だが、中は真っ暗。雪が寝ているとなると、明かりを点ける訳にもいかない。


(どうすればいい?)


 答えが見つからず、陽太は廊下をウロウロした。


 仕方なく、風呂に入った。そして、浴槽の中で考えた。


(朝、謝ろう)


 そう結論づけると、サッサと風呂を出た。


 寝室で髪を乾かし、ベッドに入り、明かりを消して目を閉じた。


 案外、あっさりと眠ってしまった。


 


「はっ!」


 また飛び起きた。すでに律子は起きているようで、いい匂いが漂ってきていた。


 陽太は意を決して、ダイニングに行った。


「お、おはよう」


 恐る恐る声をかけてみる。


「おはよう。ごめんね。雪を寝かしつけてて、そのまま寝ちゃったみたい」


 テヘッと笑う律子を見て、陽太はぽかんとした。


(え? どういう事?)


 陽太は首を傾げて律子に近づいた。


「怒ってないようなので、ホッとした。昨日はごめんね、陽太が気を遣ってくれたのに、強く言い返しちゃって」


 律子は苦笑いをしながら謝罪してきた。陽太はすっかり面食らってしまい、


「ええと?」


 言葉が出てこない。律子は料理に取り掛かりながら、


「陽太が怒ってると思って、雪とお風呂に入って出てきたら、陽太、ふて寝していたから、起こすと怒り出すと思って、そのままにして雪を部屋に連れて行ったの」


「そ、そうなんだ」


 陽太は律子が怒ったと思ったのだが、律子は逆に思っていたのだ。


「そんな事で俺は怒らないよ」


 陽太は微笑んで律子に近づくと、後ろから抱きしめた。


「ちょっと、危ないよ、今包丁使ってるんだから!」


 律子に振り払われ、陽太は仕方なく離れた。


「おあついね」


 それを見ていた雪が言ったので、三人で笑った。


(アラート鳴らなくてよかった)


 お互いにホッとする似た者夫婦であった。

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