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ざまぁされるラノベヒロイン

ざまぁされるラノベヒロインなんてハードすぎる

作者: 梅太郎

 



 わたし、リサ。リサ・ナブリューシュ、13歳。希少な聖属性魔法適性持ち、平民。

 入学式のため、高位貴族ばかり通うディストゥルー魔法学園にいる。


 と、ここまで来たら先が読めてきたかな?


 現在、びしょ濡れ。

 校門をくぐってすぐの場所にある噴水の、中に、いる。

 目の前にはキラキラした男に差し出された手。

 苦々しい表情で。


 〈第一皇子の手を取る or 取らない〉


 …

 ……

 ………。


 とにかく、言わせて。


「ハードすぎだろぉぉぉぉ」




 〜〜〜〜〜





 前世、享年16歳。

 不治の病が発覚した6歳以降病院から一歩も出られなかった。

 そんな病院生活唯一の楽しみが、叔母コレクションのラノベ達。

 小学生にラノベってどうなの?と物議を醸すかもしれないが、異世界という自由妄想に浸ることで真っ白な天井にも耐えられたんだと思う。

 タブレットをプレゼントしてもらった日には、泣いて喜んだ。

 本より軽いから腕に負担がかからず、何より自分で選べて読み放題なのだから。


 さて本題。

 ディストゥルー学園とは。

 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したアラサーが幼少期に前世を思いだし、破滅フラグ折りまくってめでたしめでたし、な物語の主要舞台。

 主人公の悪役令嬢は縦ロールのボンキュッボン侯爵令嬢。無自覚な人タラシで頭脳明晰。

 それに対するのは、ピンクのストレートヘアでぺったんこな女子高生転生者。なんでうまくいかないのよ、わたしが主人公なのに!が口癖の自分勝手なわがまま女。悲劇を自ら引き寄せたヒロインとでも呼ぼうか。

 はい、そこが私の立ち位置ですね。ぺったんこですし、はい。


 まずは現時点の物語との相違点。

 悪役令嬢…いや、悪役じゃないからご令嬢と呼ぼう。とにかくご令嬢は幼少期にゲームの世界だと認識して以降フラグ折り折り謙虚に過ごして学園に挑む。ゲームのヒロインは同じく幼少期に前世の知識で料理関係で資金を蓄え主役顔で意気揚々と学園に乗り込む、はずが、ヒロイン立ち位置のわたしは入学後の噴水で思い出したわけだ。当然、平民貧乏で。

 また、ややこしいのが、ご令嬢は恐らく"乙女ゲームのヒロインに断罪される悪役令嬢"だと思ってフラグ折りをしているのに対して、私は"乙女ゲームの破滅フラグを折りまくる悪役令嬢にざまぁされるヒロイン"というわけだ。

 タイムロスとアドバンテージって何か知ってる?神様。サッカーでもテニスでもないよ?



 仕方ない、いくらファンタジー要素があったとしても時間は巻き戻せない。覚えてる限りの内容と網羅されたラノベ知識から未来を仮定していこう。


 1 ラノベフラグ全乗り → 投獄、処刑

 2 ラノベフラグ全折り → 時すでに遅し

 破滅。


 3 ゲームフラグ全乗り → すでに折られまくり

 4 ゲームフラグ全折り → 後ろ楯なし、希少な聖属性持ち → 前線送りで電池みたいに消費 or 研究所でモルモット

 却下。


 5 なんとか攻略対象ひっかける

 →第一皇子:悪役令嬢ラヴ

 →第三皇子:反逆罪で今年中に破滅予定

 →騎士:脳筋で第一皇子ラヴ

 →令嬢弟:令嬢溺愛ラヴ

 →宰相息子:密かに令嬢ラヴ

 →大商家息子:令嬢に忠誠

 →他国皇子:継承権争い、令嬢ラヴ

 →教師:幼馴染との仲を令嬢取り持ち

 絶望的。


 6 モブ → 一番建設的。

 但し、自身の身分だとせいぜい男爵程度 → 後ろ楯ならず → 4へ

 ……。


 7 逃亡

 うん、7だ。ファイナルアンサー。

 消去法とも言う。


 エンディングは確か1年後。

 …余命1年宣告…

 嘆いてる暇はない。残り時間短し。




 何処へ行っても攻略対象が居ようが、

 絶妙なタイミングで転びまくろうが、

 モブ令嬢どもがちゃちなイジメをしてこようが、

 関係ないさ。


 …強制力どんだけよ…


 とにかく逃亡のために必要なのは財力。

 リバーシ等定番系は令嬢がすでに手付け済。

 料理関係…無理です。薄味病院食か点滴の日々で料理本避けてた前世は知識なし。

 ということでギルドで冒険者登録!

 こっち方面ラノベ本編にさらっとしか出てこないからイケる!


 …甘かった…


 基礎体力、攻撃力、経験値何もかも不足。

 圧倒的チートがないと身を守ることすら不可能なことを実感。

 魔獣がいるこの世界、一撃死確実、聖属性治癒魔法なんて無駄。死なないよう行動してるのに、進んで足をつっこむなんてことはしたくない。

 自分で言うのも何だが、乙ゲーヒロインらしい華奢な(ぺったんこって言われても悔しくなんかないんだから)容姿に可愛らしい顔つきは、イメージ通り荒くれものばかりのギルドで絡まれる絡まれる。優しく面倒をみてくれる高ランクパーティーなんて現れやしないし。

 とにかく目立たないよう単独低ランクで受けられる依頼、薬草を摘みや掃除をこなし小銭を稼ぐ日々。


 更に、学業も疎かにはしない。知識は大事。

 常識や礼儀礼節を知らないままだとバカ女ヒロインフラグ立っちゃうし、不躾罪イコール物理的に首が飛ぶ死亡フラグ。

 時間を無駄にしないよう、勉強の時間は夜中。

 疲れ?平気。治癒魔法がある。使い方間違ってる?間違ってるか間違ってないかは自分が決めるもの。

 毎日自分にかけまくったお陰で魔力量も伸びたし、成績も上々。




 そしてあっという間の1年が過ぎた断罪会場ダンスパーティー当日。


 逃亡は無念ながら断念。

 1度徒歩で逃亡しようとしたが2日で学園に戻された経験から、最速で国外まで出ないと逃げ切れないという結論に至った。必要となる資金は前世の海外旅行どころか豪華クルーズ船世界一周くらい。


 パーティー欠席という選択肢もない。

 正当な理由がなければ、欠席するだけで退学という理不尽さ。

 憎き強制力。


 マナーは必死というより決死で覚えた。

 ドレスは、派手でも流行遅れでもなくいかに周囲に溶け込めるかを重点として安く手に入れるという難題に頭を悩ませたが、あっさりクリア。オーダーメイドドレス店の倉庫整理の仕事をした際、仕上がったがキャンセルになったとかで行き場を失くしたドレスを、材料費のみで手に入れることが出来たのだ。


 ちなみに、エスコートは無しでOK。


 結果が怖いが、足がすくむほどではない。

 楽しかった。健康な身体で自由に走り回れた。

 嬉しかった。入院生活を思い出してから毎日新鮮だった。

 たった1年でも悔いはない。




 絢爛豪華なホールに入場するや否や


「リサ・ナブリューシュ!!」

(うっそー、すぐなの?せめてケーキだけでも食べたかった……ってモーセかよ!うぇー、この人壁通るの嫌だなぁ。おっと、前向いて背中伸ばして笑顔張り付けてっと……カーテシー)

「面を上げて楽にしていいぞ。ここは学園だ」

(何いってんの、第一皇子。パーティーとは名ばかりでマナーの練習としての場でしょ)

「リサ・ナブリューシュでございます。ご機嫌麗しゅう、皆様」

(殿下にご令嬢と取り巻き全集合。無駄にキラキラしてるし流石ここだけ空気が違うね)

「何故呼ばれたかわかるか?」

「……いいえ、見当もつきません」

「ふっ、そうか。それにしてもたいした度胸だ」

「こほん、アルファート殿下、本題を」

「ステラ、そうだな。此度のこと、礼を言う」

(何?あぁ、あれか。ご令嬢ことステファーナ様誘拐事件からの取り巻き救出作戦ラスボス退治)

「たまたま居合わせただけですが、少しでもお力になれたのなら良かったです」

「リサ嬢がいなければ敵わなかっただろう、ここにいる誰が欠けていてもおかしくなかった」

「勿体なきお言葉、ありがとうございます」

(まぁ治癒魔法かけまくったからねー、そうかもねー。でも本当にたまたま薬草摘んでただけで)

「ふっ、やはり違うな」

(なんのことだよ)

「兄上、宜しいでしょうか」

(あれ、この顔駆け出し冒険者の…確かロイくん。ん?兄上?)

「リサ嬢、受け取って下さい」

(いーやー!跪かないで!この花をうけとればいいの!?)

「き、綺麗な花ですね、ありがとうございます」

(な、何なに?歓声?おめでとう?え?)




 そのままロイに手を引かれる形となり、会場を後にした。

 何故か殿下ご令嬢一行も一緒に。

 控え室の長椅子に座らされる。両隣はロイとご令嬢。


「リサ嬢、おい、大丈夫か?」

「はっっ」

「そうなりますわよね、うふふ」

「……申し訳ございません」

「謝らないで。謝らなくてはならないのは私のほう。何処からお話しようか……そうね、"悪役令嬢、フラグ折りまくり"」

「!!」

「やっぱり?大丈夫、ここにいる者は皆知っているわ」

「……あの、ゲームの方ではなく……?」

「おおぅ、そっちだと思ってたのか!なるほど……」

「ステラ、剥がれてるぞ」

「もー、いいじゃないアル。やっと、やーっと答え合わせが出来るんだから!ね、リサさん」


 流石人タラシ。


「とにかく、おかしいなぁとは思ってたの。リサさんは攻略対象に全然ベタベタしないし、マナーもしっかりしてるし、全然仕掛けてこないんだもん。肩透かしをくらったわ。でもどうして?」

「ええと、気づいたのが入学式の日噴水の中でで、第一皇子の表情を見てざまぁされるって……」

「ほぅほぅ。あのね、その時点で気付いて」

「え?」

「そもそも乙女ゲーム自体架空設定で、ラノベの中にしかないってこと」

「!!」

「もー、可愛いんだから!もしかして前世は幼くして亡くなったの?」


 豊富な胸にリサは顔を押し当てられる。


「もっと早く協力していれば……正直、わたしも怖かったの。ひっくり返って断罪されたらどうしようって。本当にごめんなさい……独りで辛かったよね」

「ふ……ふぅぅぅ……」


 そう、リサは孤独だった。柔らかい胸の中、前世も通して、本当に久しぶりに体感する他者の温もりに涙が止まらない。


「本当にありがとう。あの、ラスボスの時はどうしようかと思った。あなたがいなければ世界が滅亡してた」

「ステファーナ様、そろそろ離してくれませんか?」

「もー、ロイってば。もうちょっと待ってよ」

「待ったのはこっちですよ」

「けちー」

「ステラ、我々にも話す機会を」

「アル。仕方ないなぁ」

「ステラから話は聞いていた。だからこそ我々もステラを守るため警戒し距離を置いていた。ステラは途中で異変を感じたというが近付かせないようにして……しかし、直接接してみれば打算的なバカ女などではなく可愛い小動物のようだ。本当に申し訳ないことをした」


 頭を下げる一同。


「や、止めてください。思い込んで強制力に振り回されたのは自分ですから」

「ふふっ。成る程な。知っているか、その謙虚さが周囲を虜にしていると。ギルド関係、冒険者も依頼者も、常に笑顔で文句ひとつ言わないリサ嬢の味方。人気がありすぎて、不可侵条約まであるそうだ」


 優しくて強い冒険者に庇護されない理由はそこにあったようだ。


「まぁ、もう僕のものだから関係ないけど」

「ロイ?」


 ぽかんと口をあけるリサに、そっと耳打ちするステラ。


「ロイはモブどころか全く出てこなかったから。正式な名前は、ロイスダール・ブィルト・シャクレ第二皇子。アルと喧嘩して家出、冒険者になったところでリサさんに一目惚れしたんだって。すぐ連れ戻されたけど、このドレスがリサさんの元に行くよう手を回したのはロイ。

 跪いて花を差し出す、これ求婚。赤と白のアネモネで"あなたへの愛は真実です"。プロポーズのシーンなんて無かったから知らなかったよね。

 あと、薬指を見て。刺青みたくなってるでしょ。花を受けとると求婚を了承したことになって、証としてここに残る、と」


 言葉も出ないリサ、にんまり笑うステラとロイと一同。


「一生離しませんからね、愛しい人」

「一生可愛がるわ、未来の義妹」

「償いを誓おう、義妹よ」

「どう甘やかしましょうか」

「全員参加でな」




「思ってたんと違う」


 そんな言葉しか出てこないのか、リサよ。


「さぁ、第一部ハッピーエンド素晴らしい!第二部の始まりね!どうなるかなぁ」


 爆弾発言だな、ステラ。






Pt評価、本当にありがとうございます!

うれしくて涙がちょちょぎれそう……

え、ちょちょぎれるって使わないですか?


2/21追記

日計総合ランク100up!

皆様のお陰です。皆様のお陰です。

続編上げました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 後半の解説が読者置いてけぼりでダッシュで進みすぎて何がなにやら 何度も読み返さないとわからなくて(多分それでも把握できているか謎) 消化不良な感じがしました
[一言] 話の内容はアクセル全開すぎてあまり把握出来ませんでしたが、とりあえずシャクレは心に強く残りました。
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