大きな扉、開きません
見上げた先にあったのは高さ十メートルはくだらないであろう大きな扉だった。え、ナニコレどうやってあけんの? どこのラスボス部屋?
兵士は扉の近くまで足を進めると片手をそっと触れた。
まさか片手でこんなに大きなドアが開くとは思わないが、きっと開けるというよりも開けてもらおうとしているのではないだろうか。インターホンがどこかにあるんだろう、きっと。
そんなことを考えつつ兵士の背中を見ていると、あることに気が付いてしまった。まさかとは思うが動きがだんだんとおかしくなっていく様子を見れば確信できる。
ある例えばなしをするとしよう、友人の家に遊びに行くことになったあなたは友人と二人で学校から言葉をかわしつつ友人の家に向かったとする。家の前に来た時、彼はちょっと待っててとテトテト走っていった。そんな彼の背中を見ていると、扉の前に立った途端に彼は自身のズボンの両ポケットに勢いよく手を突っ込んだ。その後しばらくの間気持ち悪いくらいに体をもじもじさせながらポケットの中を探索、一瞬停止した後今度は背負っていたカバンの中身をぶちまけ探索が始まる。
結論、友人はカギを無くしていたのだ。否、カギをもってきてなかったのだ。
で、話を戻す。
俺の経験が言うには俺がこの兵士に持つ確信とはカギを無くした、である。はあ、まったく小学生かお前は。まあさっきのたとえ話でカギ無くしてたのは俺なんだけどな。あの後本当に大変だった、親には散々怒られるし、そのせいで友人と遊んでる間へんな空気になったからな!?
やれやれと思いながらも俺は兵士に声をかけてやることにした。
「カギ無くしたんなら諦めろって、諦めも大事なことだぜ」
「やかましい、カギを無くすなどこの私がするものか!」
「じゃあさっきから何してんだよ?」
兵士の目の前をそっとのぞき込むとそこにはパソコンのキーボードが扉に埋め込まれていた。
まさかの電子系ドアですか……
「なるほどなあ」
半笑いの俺の声に気が付いた兵士は少し頬を紅潮させ、勢いよく振り返ってきた。こういったシーンはアニメのお約束的にキスをしてしまうだのとラッキーイベントが起こるわけだが、男同士ではさせない。作者にその趣味はない。
「おい貴様、さっきからグチグチと身分を分かったうえで話しているのだろうな!?」
グイっと胸倉をつかまれひよってしまう俺ではあるが、衝撃とともに心の中にあるスイッチがONになった。
「わかっているさ」
「ぐッ、なんだこの力は!?」
俺は兵士のつかむ腕をいとも簡単にとり廊下の端へと放り投げた。
兵士はなにが起こったのか理解できないようで目を見開きながら俺のことをじっと見つめてる。
「困ってるやつを助けるのが俺の役目! 任せろこの扉くらいすぐに開けてやる!! 行くぞ我究極奥義」
両手を握り天高く上げ、体をそらす。
そして体のしなりを使い、素早く両拳をキーボートめがけて落とした。
「必殺! 電子機器物理的解決<キーボードクラッシャー>!!」