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本日開店営業中!

新作です。二話連続更新します。

今回は、現実世界の男子が主人公です。

料理は出てきますが、所詮は弁当のおかず程度ですので高級デリは皆無です。

楽しく読んで頂けたら幸いです。


*誤字脱字がありましたら、気楽にご報告下さい。

 高校時代からバイトを始めて、調理師専門学校卒業と同時に正社員になった弁当屋『愛彩(あいさい)』が、深夜の火事で燃えてなくなった。

 住宅地とショッピングセンターの中間地点にある、パート三人と店長夫婦と俺で回してた総菜販売もやってた小さな弁当屋。常連さんもいっぱいいて、ご近所じゃあって当たり前の老舗扱いで愛されていた。

 でもある晩、裏口にあったゴミ箱に放火されて、厨房と休憩室と販売スペースだけの小さな店だったから、あっちゅー間に燃えて、あっちゅー間に灰になった。回りは空き地と畑だったから延焼もなく、それだけは不幸中の幸いだと焼け落ちた店舗跡を片付けながら苦笑した。


 でも、店長夫婦は年齢的に再開は無理だと、ガランとした空地を見ながら俺たちに告げた。この土地と自宅を売り払った金で、田舎へ引っ込んで第二の人生始めるって去っていった。


 さーて、どうしよう。いきなり無職の俺。

 パートのおばちゃん達は、運よく近くのショッピングセンターに揃って雇用されて一安心。

 俺も誘われたけど、『愛彩』とは違う味の料理を作るのはどうも気が進まず、おばちゃん達と激励しあって別れた。


 色々考え色々悩んだ結果、デリ&弁当屋を始めた。

 土地? いやいや、車を使った移動式なんで土地は関係ないよ。いわゆるキッチンカーってやつだ。

 重要なのは、販売時間だけ駐車OKの土地を貸してくれる人。

 もちろん、保健所の営業許可や食品衛生責任者の資格もいるけど、そんなの弁当屋に勤めてたから知ってるって。後は「食品営業自動車」と「食品移動自動車」の許可。これが最大の難関だったけど、必死の努力で掴み取った。


 そして、お店の屋台は元常連さんだったおじいちゃんの愛車のキャンピング(バン)を改造したもの。

 定年後に奥さんと全国各地へ旅行してたけど、年齢的に運転はもう無理だから免許返納したって。愛車を知り合いが活用してくれるなら嬉しいって、ただ同然で譲ってくれた。

 それを、ちょびっと借金して改造し、『愛彩』の元店長から譲ってもらった中古の厨房機器や道具なんかを積み込んだ。


 そして残った販売拠点問題ですが、なんと好条件の二カ所を借りることができた。

 一カ所は、やっぱり元常連さんの旦那さんが代表取締役してる会社の駐車場。ビル街の目抜き通り沿いだから、立地ばっちり!

 もう一カ所は、元店長のご友人がオーナーの、住宅地の真ん中にあるマンションの駐車場脇。

ビル街の方は、10時半から13時半までデリ&お弁当販売。住宅地は、16時から18時までデリのみの営業時間です。


 キッチンカー《デリ・ジョイ》店長の透瀬(すくせ) (とおる)です。大変だけどがんばります!

 さあ、開店です。



◇◆◇



 営業開始3日目ですが、嬉しいことにたくさんのお客様がご来店。ありがとう!


 俺の店舗は、中型キャンピングカーを改装してあって、サイドの窓がとりわけ大き目。そこから商品の受け渡しするんだけど、店員一名(俺)じゃ左右の窓を使って販売するには無理がある。片方ばかり接客してたらもう片方のお客さんに気づかなかったじゃ失礼だし、車内では火や油を使っているから極力動線は短く安全に営業したい。だから、慣れるまではどちらか片方の窓のみを開いていた。

 ビル街駐車場の指定場所は、大通りに面していて、幅広な歩道とそばに横断歩道。だから、通り側の窓を営業口にしての接客だった。


 店の売りは、何と言ってもキッチンカーだから『揚げたて作りたて』で、家で作って詰めた弁当じゃなく、店で鍋から容器に注いでお客に渡すって具合。煮物やサラダなんかはある程度作ってくるけど、仕上げや揚げ物炒め物は車の中で完成させていた。

 手際は、長年の弁当屋歴がものを言ってます。小さい間口でちょこちょこくるくるは慣れたもんだ。


 容器を持参のお客様には、割引価格でお詰めしてます。

 駐車場のある会社の女性社員さんが、まずはぱらぱらとご来店。口コミが一日で伝わったのか、翌日からは男性社員からどかっと複数の弁当ご注文。週中の本日は、明日の予約まで入ってきた。

 通りがかりにそんな光景を目にした、他のビルのOLさん達が興味を惹かれて寄ってくる。メニューちらしを渡して、にっこり営業スマイル。デリは日替わりの1週間ローテで、弁当はワンコインで、ご飯大盛はプラス100円で漬物付き。

 さあ、いらっさ~い!


 午後からは、いったん家へ補充と休憩を挟んで、住宅街のマンション駐車場へ。

 こっちは、軽食と夕食用デリがメイン。軽食はおやつも入って、初めて扱う商品だけど自信の品々。俺が作ってるわけじゃなく、調理師専門の時の友人たちの協力だ。パン屋勤務の中井にはサンドイッチと菓子パン2種類。ケーキ屋勤務の野々宮さんには、クッキーやドーナツの日持ちする品。そして、俺の住む商店街の和菓子屋さんから大福と団子のセット。

 デリは7種類。昼と同じメニューに2品だけ足す。こっちもデリはワンコイン。追加はグラム計算。

 幼稚園お迎え帰りのお母さんたちは、軽食とデリを。17時近くからは、仕事帰りのお母さんや若い人が夕食のおかずを。まだ、ぱらぱらだけど、来てくれるだけで嬉しい。これから、これから。


 『愛彩』がお世話になってた業者さんに、今度は俺がお世話になってる。特に米屋さんには、五体投地したくなるくらい。高級米はさすがに無理だけど、美味しい米を安くしてくれてその場で精米してくれる。

 もちろん野菜は近隣農家のB級品を大箱にどさっと。品が悪いわけじゃなくて、形が悪かったり傷が入ったりで商品にならないってだけの新鮮な野菜を。肉と魚は卸しのおじさんからで、頭も骨も切り落としもどっさりおまけにつけてくれる。ありがたい!


 いい人たちが多くて、幸せだ。

 おっと、食中毒とお金のやりとりだけは、注意&慎重にだ。


誤字訂正 2/10

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今更ですが、コミカライズから来ました。すごく面白いです!
[良い点] 異世界につながる小窓。楽しそうです。 [一言] マンガUP!を見て、こちらに来ました。
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