蛍と真夏日
「ぶわっ!!ちょ、清!!ちょっと待て!!」
私たちはしばらくの間、子供に返ったように水遊びを楽しんだ。
全身がびっしょり濡れ、少し肌寒さを感じてきた頃、私たちは我に返った。
「そ、そろそろ上がろうか。」
蛍の提案に私は素直に頷く。
「足元滑るからね。」
蛍は心配そうに私に手を差し伸べる。
私を女の子扱いしてくれる蛍に胸がキュンとなる。
蛍は友達なのにドキドキするなんて変なの・・・
「大丈夫、大丈ぶっ!!」
私は自分の気持ちを隠すように蛍の手を避け、一人で川から上がろうとした。
しかし、つるっと足元が滑り、私は体を支えきれずに水にの中へ倒れこんだ。
派手に水しぶきが上がり、思わず目を瞑る。
「いった・・・くない?」
痛みを覚悟していたが、派手な音がしただけで痛みはいっこうに訪れない。
恐る恐る目を開けると・・・
「いてて・・・」
私の代わりに痛みに顔を歪める蛍の姿。
蛍を押し倒すような体勢であることに気づく。
羞恥で顔が熱くなっていく。
「清!!怪我してない!?大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込んでくる蛍。
水も滴るいい男とはよく言ったものだ。
水が滴る蛍はより一層色気がまし、美しかった。
ちょ、直視できない。
「だ、大丈夫。蛍、巻き込んじゃってごめんね。」
慌てて蛍の上から跳びのき、謝罪した。
「清が怪我してないならよかった。」
ホッとしたような蛍の笑顔に不覚にもときめいてしまう。
ず、ずるい・・・
こんなのずるいよ・・・
私はその日、蛍の顔を直視できないまま蛍と別れた。